メルケル独首相の連立交渉失敗-4期目続投に向けた選択肢狭まる

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メルケル氏

Photographer: JOHN MACDOUGALL/AFP
  • 自由民主党が連立協議から離脱-ユーロ下落
  • 想定される今後のシナリオは少数与党政権や再選挙

ドイツのメルケル首相は、新たな連立政権樹立に向けた取り組みが失敗したことを認めた。これを受け、ドイツは再選挙に向かう可能性があり、欧州の指導者で最も在職期間が長いメルケル氏が政権を維持できるかどうか不透明になっている。アジア時間20日の外国為替市場ではユーロが下落した。

  首相率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)、緑の党による連立に向けた1カ月に及ぶ予備的協議は、FDPの交渉担当者が退席したことで20日へと日付が変わる直前に決裂した。

  メルケル氏は暫定首相として職務を続け、今後について20日に大統領と協議すると説明した。在職12年のメルケル氏は、欧州の危機時にも安定の要としての役割を果たしてきたが、連立協議の決裂は、特定のイデオロギーに偏らない同氏の現実的な統治手法の限界を示し、4期目続投に向けた選択肢は大きく狭まった。

  メルケル首相(63)は協議決裂後に記者団に対し、「暫定首相として、この国が今後の厳しい数週間に引き続きよく統治されるよう、あらゆることをする」と語った。

移民制限巡り対立

  今後の可能性としては、CDU・CSUによる少数与党政権や、シュタインマイヤー大統領に総選挙を命じるよう求めることが考えられる。いずれのシナリオもドイツが未知の領域に踏み込むことを意味する。第2次世界大戦後に同国(旧西ドイツを含む)の首相を務めたのはわずか8人。

  協議の決裂を受け、アジアの外為市場でユーロは一時0.6%下落した。

  FDPのリントナー党首は記者団に対し、正式な連立交渉に入るための合意草案は「数え切れないほどの矛盾」に満ちていたため、協議から離脱したと説明した。

  移民制限を巡る意見の相違が予備的協議の開始時点から合意を困難にしていた。9月の総選挙でメルケル氏率いる勢力の得票率は1949年以降で最低となり、反移民を掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」が12.6%の票を獲得し、議席を得た。かつてCDU・CSUに投票した有権者の票の多くがAfDに流れた。

原題:Merkel’s Attempt to Form a New German Government Collapses (3)(抜粋)

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ユーロほぼ全面安、ドイツ連立協議決裂-対円で約2カ月ぶり安値更新

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Euro Rises to Fresh High After Catalan Speech; Dollar Drops

A stack of twenty euro banknotes

Photographer: Simon Dawson/Bloomberg
  • ドル・円は一時111円89銭と10月16日以来のドル安・円高
  • ドイツの連立政権協議決裂を受けてユーロが売られた-BBH

東京外国為替市場では、ユーロが主要通貨に対してほぼ全面安の展開。ドイツのメルケル首相が推し進めていた連立協議が決裂したとの報道を受けて、対円では約2カ月ぶりのユーロ安・円高水準を付けた。

  ユーロ・ドル相場は20日午前11時43分現在、前週末比0.5%安の1ユーロ=1.1731ドル。朝方に一時1.1722ドルと14日以来の水準までユーロ安・ドル高が進行した。ユーロ・円は同時刻現在、0.6%安の1ユーロ=131円41銭。一時131円17銭と9月15日以来のユーロ安・円高水準を付けた。

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)外国為替部の村田雅志通貨ストラテジストは、「ドイツの連立政権協議が決裂したことを受けてユーロが売られた。以前から協議の不透明感が言われていたが、ユーロ・ドルの1.18ドル台は高いと思う」と説明。「好景気や欧州中央銀行(ECB)テーパリング視野で先週上昇し上値が重い中、報道を受けて売られたが、ひと相場終わって下げ止まりつつある」とも語った。

  メルケル独首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)、緑の党による12時間に及ぶ協議は、FDPの交渉担当者が退席したことで20日に日付が変わる直前に終了。FDPは緑の党との意見の隔たりがあまりにも大き過ぎるとした。ドイツが再選挙に向かう可能性があり、欧州の指導者で最も在職期間が長いメルケル氏の将来が不透明になっている。
  
  ソシエテ・ジェネラル銀行の鈴木恭輔為替資金営業部長は、「欧州はドイツの連立協議の決裂に伴う不透明感が嫌気されている。ただ、ある程度連立協議が苦労するのは当初から言われていたことで、そこまで大ごとにはならないと思う」との見方を示した。

  ドル・円相場は同時刻現在、0.1%安の1ドル=112円02銭。早朝の112円22銭から一時111円89銭まで水準を切り下げ、10月16日以来の水準を付けた。その後は112円前後で推移している。

  BBHの村田氏は、「ドル・円は、ユーロが下げたことや世界的に株価の上値が重いことを材料に下げた後、日本株が下げ渋り、やや戻した。米税制改革による米国期待が後退し、日本の貿易黒字も季節調整後で市場予想より若干大きく、円売りしにくい状況。ただ五・十日の実需もあり、下げ渋っている」と説明。「今週は感謝祭の祝日を控え、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)前でもあり、ポジション(持ち高)は膨らみにくい」と語り、下値めどは111円台半ば、上値めどは113円台半ばとの見方を示した。

  日経平均株価はこの日、前週末比116円安で始まった後、一時13円高の2万2410円と上昇に転じる場面があった。その後は再び下落している。米10年債利回りは時間外取引で一時2ベーシスポイント(bp)低下の2.32%前後まで低下した。

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