フィボナッチとは、フィボナッチ比率に基づいて、価格の「支持帯」と「抵抗帯」を予測するテクニカル分析ツールの一つです。相場は、トレンドが発生しても一直線に進み続けることは無く、必ず上下動しながら、上昇トレンド中の「押し目」と、下降トレンド中の「戻し」を形成します。フィボナッチを使うことで、これがどこで発生するのか予測をするというものです。
フィボナッチ比率は、世界的に有名なフィボナッチ数列から計算され、自然界や歴史的建造物・芸術作品にも存在しています。チャートは、投資家の集団心理が入り込んで形成されているため、このような自然の摂理が働くと考えられます。それゆえ、フィボナッチは世界中の大多数の投資家がみているテクニカルツールです。
私も毎日使っていて、自然と押し目や戻しポイントを判断する習慣がつくようになりました。
もしあなたが、フィボナッチがなぜ機能するのかを含め、上手な使い方を覚えれば、今よりも確度の高いトレードを行なうことが可能になるでしょう。特に、投資家心理を読んで的確なトレード戦略を立てられるようになること、それは、トレードで勝ち続けていると言われる、上位5%の勝ち組トレーダーのさらに少数である、億という単位で利益を上げるトレーダーになることを意味します。
ここでは、フィボナッチの引き方や基本的な役割を説明させていただき、その後、基本をもとにどのような使い方で利益を出すのか、トレード戦略まで詳しく説明していますので、是非参考にしていただき、勝ち組トレーダーを目指してください。
1. フィボナッチとは
フィボナッチは、フィボナッチ比率と言われる数式があります。
最初に、このフィボナッチ比率のもとになっている、フィボナッチ数列について説明させていただきます。これを理解していただいた上で、実際のチャートをみていただくと、なぜそうなるのか、より理解が深まります。そのあとに、フィボナッチの引き方と役割を順番に説明いたします。
1.1. フィボナッチ比率はフィボナッチ数列から計算されている
フィボナッチとは、人の名前で、12世紀~13世紀の中世時代に有名だったイタリアの数学者レオナルド=フィボナッチに由来しています。
次の数字の並びを見てください。
「 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233,377・・・」
永遠と繰り返されるこの数列を、フィボナッチ数列といいます。
この数列には特徴があり、ある数字と次に続く数字を見てみると、面白い関係にあります。
たとえば、次の2つの法則です。
まず一つ目は、連続する2つの数字の合計が、次の数字になります。
1 + 2 = 3
3 + 5 = 8
5 + 8 = 13
これが、永遠と続いているのです。
そして、二つ目の法則は、限りなく次のような数字になります。
・その数字を1つあとの数字で割ると、0.618になる。
・その数字を2つあとの数字で割ると、0.382になる。
・その数字を3つあとの数字で割ると、0.236になる。
この法則を計算すると、次にようになります。
144 ÷ 233 = 0.618
8 ÷ 21 = 0.382
55 ÷ 233 =0.236
これは、どの数字を取っても同じようになります。
そして、0.236、0.382、0.618という倍率を、「フィボナッチ比率」もしくは「黄金比率」と呼びます。
1.2. フィボナッチ比率は人間の心地よい心理状態を表したもの
このフィボナッチ比率は、木の枝分かれ・ひまわりの種の配列など、自然界にも見られます。また、ピラミッドやモナリザなど、多くの歴史的建造物・芸術作品にも見いだすことができます。
大多数の人が見て、美しいと感じるものですね。理由として、人間が心理的に「心地が良い」とされる数字で成り立っているからと言われています。
これを、投資の世界に当てはめてみると、次にように考えることができるのではないでしょうか。
為替の値動きは、世界中の投資家の思惑が入り混じっています。そして、集団心理を織り込んだチャートを、一種の芸術作品と考えると、自然の摂理やフィボナッチ比率が働きやすいといえます。「心理的」もしくは「テクニカル的」に支持帯や抵抗帯になっているだけで、決して、フィボナッチ比率の見えない力が働いているわけではありません。
しかし、押し目や戻りポイントを図る、ポジションを持つ、手仕舞いするなど、トレードで利益を上げるための売買根拠を求めているのは、他でもない人間です。そこに、フィボナッチ比率が働くのは、ごく自然なことであるといえます。
1.3. トレンドが発生したときこそフィボナッチ比率が働きやすい
上述した考えに基づいて為替の値動きを予想するのが、フィボナッチを使った分析方法です。
これだけ聞いても信じられないかもしれませんが、大多数の投資家が注目するポイントでは、同じような心理状態になるため、フィボナッチ比率がとても機能しやすくなります。その注目するポイントとは、「トレンドが発生したとき」です。詳しくは順番に後述しますが、トレンドが発生するということは、皆が注目し売買注文が急増しますので、投資家心理が反映するのも自然な流れです。
1.4. なんといってもフィボナッチ・リトレースメントがおススメ
フィボナッチ比率は様々な使い方があり、一つのテクニカルツールしか無いわけではありません。例えば、つぎのようなツール(インジケータ)があります。
・フィボナッチ・ファン
・フィボナッチ・エクスパンション
・フィボナッチ・チャネル
・フィボナッチ・アーク
・フィボナッチ・グリッド
・フィボナッチ・タイムゾーン
・フィボナッチ・リトレースメント
この中でも、特におススメで絶対に覚えておきたいのが、「フィボナッチ・リトレースメント」です。
なぜかというと、最も投資家に利用されている代表的なツールだからです。そのため、フィボナッチ・リトレースメントのサポートやレジスタンスになるポイントは、より多くの投資家が見ていて、売買注文が急増して節目となることが多いのです。つまり、このポイントをおさえれば、トレード戦略が立てやすくなることを意味します。
フィボナッチ・リトレースメントを詳しく見ていく前に、他のツールがそれぞれどのようなものか簡単に紹介いたします。
しかし、フィボナッチ・リトレースメント以外はそれほど重要ではなく、詳しく知る必要はないので、次項まで読み飛ばしていただいて構いません。次項より説明させていただく、フィボナッチ・リトレースメントをしっかりと理解してください。
・フィボナッチ・ファン
ある価格からトレンドラインを引き、そのラインを割った後、次に反転するポイントをフィボナッチ数列で予想するラインです。同じ起点から、角度の違うトレンドラインを数本引くイメージです。斜めに引くラインですので、時間が経過と共にラインに当たる価格帯も変わっていきます。
・フィボナッチ・エクスパンション
トレンドの初動から反転し、トレンドが再開したときに、どこまで到達するかをフィボナッチ比率で予想するものです。トレンドは「Nの字」で動く習性があるので、最終的に到達する価格帯を図ることができます。
・フィボナッチ・チャネル
チャネルラインをブレイクしたとき、価格がどこまで到達するかをフィボナッチ数列で計算します。トレンドの推進波は、チャネルラインを一時的に抜ける傾向があり、予測に役立てることができます。
・フィボナッチ・アーク
アークは時間的要素を取り入れたもので、「円弧」を用います。高値と安値を形成した時間に対して、この先どのあたりが時間的に支持帯・抵抗帯なるかを予測します。
・フィボナッチ・グリッド
価格的要素と時間的要素を組み合わせたもので、フィボナッチ比率をグリッド状に表示します。価格的要素が横線、時間的要素が縦線で、それぞれの線が支持帯と抵抗帯になります。
・フィボナッチ・タイムゾーン
相場が動いたり止まったりするポイントを、時間軸で計算するもの。前回の上昇トレンドはこれ位続いたので、次はこのあたりで再度トレンドが発生する、という時間的な可能性をフィボナッチ数列で計算します。
そして、これから詳しく説明させていただくのが「フィボナッチ・リトレースメント」です。
上述したように、フィボナッチ・リトレースメントは、高値と安値の値幅にフィボナッチ比率を掛け合わせ、どこがサポートやレジスタンスになるか導き出すものです。相場は一方向へ進む事は無く、必ず「押し目」や「戻り」を作る習性があるため、予めフィボナッチ・リトレースメントを引くことで、反転する可能性がある価格帯を予測します。リトレースメントは「引き返す」「後戻りする」という意味です。
なお、「フィボナッチ・リトレースメント」は長い単語のため、このあとは全て「フィボナッチ」と書かせていただきます。フィボナッチ=フィボナッチ・リトレースメントと読み替えてください。
2. フィボナッチの引き方と役割
少し説明が長くなりましたが、実践で使うフィボナッチの引き方とその役割について説明させていただきます。フィボナッチは、人間の心地よい心理状態を表したもの、という点を頭に入れながら読み進めると、より理解を深めていただけると思います。
2.1. フィボナッチを引いてみよう
トレンドが発生したときこそ、フィボナッチが機能しやすいという点は上述しました。そのため、フィボナッチは、トレンドが発生する前ではなく、トレンドが発生した後に引きます。
下図を見てください。上昇トレンドの場合の引き方です。
最初に、そのトレンドの安値と高値を見つけます。Aが安値、Bが高値です。
そして、AからBを結ぶとフィボナッチ比率が自然に表示されます。AからBの値幅に対して、23.6%、38.2%、50.0%、61.8%、76.4%の価格帯に水平ラインが引けました。
このように、フィボナッチはあるトレンドの高値と安値を結ぶように引きます。とてもシンプルですね。このシンプルな点も、大多数の投資家に利用されるきっかけの一つでしょう。
2.1.1. 「23.6%、38.2%、50.0%、61.8%、76.4%」の比率がサポート/レジスタンスになる
マーケットでは、トレンドが発生したあと「半値押し」「3分の1戻し」といった言葉がよく使われますが、フィボナッチでは、「23.6%」「38.2%」「50.0%」「61.8%」「76.4%」の比率がとても重要視されます。フィボナッチを使う投資家は、この5つの比率を特に意識するため、価格がこれらの比率に近づくと、サポートやレジスタンスになることが多くなります。
トレードの世界で使うフィボナッチ比率は、この5つが重要ですので覚えましょう。逆をいうと、この5つ以外の比率は使われないため、覚えなくても良いといえます。
なお、ほとんどのFX業者でフィボナッチはテクニカルツール(インジケータ)として標準装備されています。また、上図のように、安値から高値を結んでラインを引くと、5つの比率も自然に表示されるようになっているものがほとんどです。
別の場面を見てみます。
Aからトレンドが開始し、Bが高値となって反落していますので、ABを結ぶとフィボナッチが引けます。Cでは、支持帯になっていて、反発していますね。ここはフィボナッチ比率50.0%ですので、ABの値幅のちょうど半分下落した価格帯で反応したことが分かります。
次に、同じチャートで、下降トレンドに対してフィボナッチを引いてみます。下降トレンドの場合は、高値から安値を結ぶように引きます。下図を見てください。
ABを結ぶと、フィボナッチ比率が表示されますが、上昇トレンドの場合と数字の順番が逆になります。Cは、ABの下落幅に対して38.2%戻したということです。
この、38.2%の戻し幅でピッタリと反発が止められ、下降トレンドが再開していますね。偶然だと思われるかもしれませんが、トレンドが発生したあとは、このようにフィボナッチが機能することは多々あります。
2.1.2. フィボナッチは同じトレンドで何度も意識される
フィボナッチは、ある比率が支持帯や抵抗帯として一度機能すると、トレンドが継続する限り、その比率が何度も機能するようになります。下図を見てください。
このチャートも、上図と同じものです。
Aの高値は同じですが、Bの安値が変わっています。下降トレンドですので、最高値は変わりなく、安値は何度も更新していきます。そのため、起点であるAは同じですが、安値圏の終点は、そのときのローソク足の安値によりますので、変動していくことになります。今回は、Bが安値となります。
AとBを結ぶと、同じ38.2%が機能しています。今回の方がABの値幅は大きくなっていますので、38.2%までの値幅も必然的に大きくなります。
このように、最初に機能したフィボナッチ比率は、そのトレンドで何度も意識されるようになります。
先に述べましたが、偶然でフィボナッチが機能することはありません。これが人間の投資心理であり、これからも人の心理は変わらないといえます。つまり、過去と同様に、これからもフィボナッチは機能することを意味します。
2.2. ヒゲか実体か正確に引こうとしない
フィボナッチを引くとき、起点をローソク足のヒゲに合わせるのか、それとも実体に合わせるか、最初は迷うと思います。これは、どちらが正しいという正解はありません。あなたが迷うということは、他の投資家も迷っていることを意味します。そのため、最初から正確なフィボナッチを引こうと考えず、ためらわずに引いてみることを意識してください。
他の投資家も、ヒゲも実体も両方引いていますので、どちらも反応すると考えると良いでしょう。
たとえば、安値の起点をヒゲにし、高値を実体に合わせ、ヒゲ→実体でフィボナッチを引いたとします。しかし、23.6%で反応がないとき、フィボナッチが全く機能していないと決めつけ、チャート上から削除するのではなく、ヒゲ→ヒゲや実体→ヒゲなど、引き直してみてください。
ここでおススメなのが、引く順番のルールを自分で決めることです。
前日はヒゲ→実体を結んで引いたけど、今日は実体→実体にしてみるなど、ルールがないまま毎回引くのでは、本当にフィボナッチが機能するかどうか自信が持てません。そこで、必ずヒゲを起点とする、などのルールを作ると良いです。なぜなら、毎回統一していると、あなたが引いたフィボナッチが機能するのか、それとも違っているのかの判断がしやすいからです。
私の場合、ローソク足のヒゲ→ヒゲを最初に結ぶようにしています。
こうすることで、最安値と最高値の最大値幅を基準とし、この値幅からどれだけ押したのか、戻したのか判断するというルーティンができます。ただし、ヒゲ→ヒゲが毎回機能するわけではありません。長い下ヒゲや上ヒゲが出ると、実体の場合に比べ、値幅は大きく異なりますので、ヒゲ→ヒゲを引いてからヒゲ→実体などを試すようにしています。
このように、自分なりの基準を設けることにより、混乱せずに次々に考え直すことができます。フィボナッチを引くたびに時間を浪費しているのでは、いずれ引くことがおっくうになり、分析も正確性を欠いてくるようになります。
そのため、あなた自身で、フィボナッチを引く順番を決めてしまうことがおススメです。
2.3. フィボナッチ比率で必ず反転するものではなく抜けることも想定しておく
大多数の投資家がフィボナッチを見ているというと、毎回いずれかのフィボナッチ比率で反転するものだと考えるかもしれません。しかし、一つのテクニカルツールだけがいつも機能することはありません。そのため、想定していたフィボナッチ比率で反転せず、抜けることもあります。
あなたが、フィボナッチ23.6%で絶対に反転する!と、思い込んで相場を見てしまうと、そうならなかったときにかなりの自信を喪失しますね。相場環境をうまく把握できず、それがトレードにも影響し、良くない結果になりかねません。
そのため、反転するだけでなく、抜けることも想定しておきましょう。
下図を見てください。
ABを結んでフィボナッチを引きましたが、23.6%では反発せずに下抜けています。
もし、23.6%に当たったときに買いポジションを持つと、すぐに含み損になっていますね。
このように、フィボナッチはどんな相場でも機能するわけではありませんので、注意してください。
2.4. フィボナッチはトレンド相場で「押し目」と「戻り」を図るもの
上述してきましたように、フィボナッチは、トレンドが発生したときの高値と安値の値幅に対して、どれくらいの割合逆行したか(押し/戻しが発生したか)、という分析方法です。使う場面をトレンド発生時に絞ることにより、効果的に利用できるようになります。いつ使っていいのか分からないのでは、フィボナッチで戦略を立てることが難しくなります。
相場は、トレンド相場→レンジ相場→トレンド相場→レンジ相場のサイクルを繰り返していて、トレンド相場でもジグザグを描きながら進んでいきます。役割を知っていても、使う場面が間違っていれば、利益を出す事はできません。トレンドが発生したときに、効率よく使う事で、確度の高い戦略を立てることができます。
下図を見てください。
これは、ドル円の日足です。
ABで強いトレンドが発生し、Cが押し目になりました。ここで一時的な下落がピッタリと止まり、反発してトレンドが再開しているのがお分かりいただけると思います。大多数の投資家がフィボナッチを意識しているからこそ、買い注文が集中するわけです。
その後は、Bの高値をブレイクしていますね。最終的にNの字で価格が進みました。相場は、必ずNの字で進むことも思い出してください。
トレンドが発生したときにフィボナッチで反発すると、相場はNの字で進みますので、必ず直近の高値を上抜けてきます。つまり、押し目を予測するだけでなく、実際に予測通りに反発したときは、その後に高値ブレイクする確率が非常に高いところまで戦略に入れることができるのです。
これには、先に説明したように、心理的に「心地の良い」数字であることも、反発している理由かもしれませんね。
大多数の投資家がフィボナッチを見ているといっても、全ての投資家がみているわけではありません。フィボナッチ・リトレースメントをたとえ利用していなくても、今は一時的な下落であり、押し目をつくるはずだからまた上昇トレンドが再開するはずだ、と考えているトレーダーもいるでしょう。そして、そろそろ上昇し始めるだろう、と考えた始めたとき、その価格帯が「心地の良い」フィボナッチ比率になっていることも想定できます。
つまり、人間の心理的に、そろそろ相場が上昇するのではないか、と思い始める価格帯がフィボナッチに合いやすい、ということです。
3. フィボナッチの効果的な使い方
これまでは、フィボナッチとはどのようなものか、基本的な事項を紹介しました。これから、実際に利益を上げるための使い方と、それを用いた確度の高い戦略を紹介させていただきます。
3.1. 強いトレンドは23.6%と38.2%にのっていく
再度、上図を見てください。
押し目となったフィボナッチは、23.6%ですね。このあと高値を更新して、チャートの形はNの字になりました。
このように、相場はNの字で動くことは述べましたが、トレンドが強いと23.6%と38.2%が押し目となってさらにトレンドが継続することが多いので、覚えておくと便利です。
これは、一時的に下落しても早い段階で再度買い注文が入り始めるので、買いそびれたくないトレーダーが多いことを意味します。もっと下げるだろうと待っていると、買うことができずに上昇し始めてしまうので、そうなりたくないという投資心理が働き、早い段階から押し目買いが入ります。
大多数のトレーダーが同じ上昇トレンド目線だと、50.0%まで下落せずに浅い押し目で、ぐんぐん伸びていきます。
3.2. 長い時間軸ほど多くのトレーダーが見ている
チャートは、日足のような時間軸が長いチャートほど、チャート形成にかかる時間も長くなります。昨日までの日足チャートと、今日の日足チャートを比べても、ローソク足が1本追加されただけですね。そのため、チャートの形はあまり変化しません。
これが、1分足の場合だと、1日でローソク足の数は60本×24時間=1440本になります。
たとえば、同じ100本分のローソク足を見るとします。日足の場合は100日分ですが、1分足だとたったの1時間半分になりますね。同じチャートの場面を、どちらがより多くのトレーダーが見ているかというと、日足の方ですね。これは、1分足でフィボナッチが意識されるトレンドより、日足でトレンドが出ている箇所をフィボナッチで見ようとする方が多いことを意味します。
そのため、時間軸が長くなるほど、同じトレンドが見られる回数が増え、また、チャート形成にも時間がかかるので、フィボナッチを引いて押し目や戻りを待っているトレーダーも多くなることは容易に想像できますね。
改めて、下図ドル円の日足チャートを見て下さい。
もし、このチャートが1分足だとしたら、見ていないトレーダーも多いですし、フィボナッチが意識される割合はとても少ないです。しかし、日足の場合は、何ヶ月もかけてトレンドを形成していますので、一時的な反落があったときに、より多くの投資家がこのトレンドを知ることになります。
そのため、フィボナッチが意識されるレベルは時間軸が長くなると増えるのです。1分足だと、トレンドが発生しても1時間後には過去の相場となっているので、時間の経過がとても早く、さらにトレンドが発生する回数も日足に比べて多いです。
また、フィボナッチは同じトレンドで何度も意識される、という点は上述した通りです。そして、これも日足のように時間軸が長くなるほど、比例して、より意識されることになります。ABの値幅に対して23.6%が押し目となり、上昇トレンドを形成していますね。
下図を見てください。
Aの起点は同じです。先ほどは青い丸の箇所が終点でしたが、今回はさらに高値を更新した箇所がBです。このABに対してのフィボナッチ23.6%がCです。ピッタリ機能しているのが分かりますね。フィボナッチを引くとき、起点は同じでも、高値を更新するたびに、その最高値を終点にし、さらに長い時間軸だと、より機能しやすくなります。
では、その後どうなったのか見てみます。同じチャートです。
高値を更新しましたので、Aの起点はそのままにして、今度は終点をBまで伸ばしました。38.2%で反発していますね。
23.6%で反発し続けることは無いにしても、フィボナッチがピッタリと機能しています。
3.3. 他のテクニカルツールと組み合わせるとより深い分析ができる
あるトレンドで、フィボナッチを何度も引き直すことができるということは、トレンドが継続していて高値(安値)を更新しているということです。これは、目立った高値(安値)がいくつもできることを意味し、トレンドラインやチャネルラインも引けるようになります。
そこで、より確度の高いトレードを行なうためのテクニカル的な根拠を見つけるために、フィボナッチ以外にもラインを引いてみる事がおススメです。
下図は、さきほどと同じチャートです。
今回は、ABCDの高値更新の波が分かりやすく、チャネルラインを引くことができます。支持帯であるEを下抜けたあと、トレンドラインがFで抵抗帯になっています。
フィボナッチだけではなく、チャネルラインやトレンドラインなどの他の根拠も組み合わせて分析すると、相場の流れが把握しやすくなり、それが良いトレード戦略へ結びつくことになります。
3.4. 50.0%と61.8%まで反転したらトレンド転換の可能性が高くなる
トレンドが強いと、23.6%や38.2%が、押し目や戻りになりやすいことは上述しました。これが、50.0%の半値まで一時的に反転する(=安値と高値の中間地点までくる)と、どうでしょうか。
ここからトレンドが継続すると考えるトレーダーがいる一方、半分まで反転したのだから、いよいよトレンドが転換するのでないだろうか、と考えるトレーダーも増えることは容易に想像できますね。
また、61.8%まで下落すると、そこからトレンドを再開させて高値(安値)をブレイクするには、そう簡単にはいかなくなります。
そのため、フィボナッチ50.0%と61.8%まできたときは、トレンド転換の可能性があります。
下図を見てください。
高値から安値を結んでフィボナッチを引きました。
それぞれ、
A→23.6%
B→38.2%
C→50.0%
D→61.8%
となります。
Aで反落しましたが上抜け、Bが戻しポイントとなり、下降トレンド再開で安値更新を目指しますが、安値更新は失敗しました。
その後、Cの50.0%とDの61.8%では短時間で上抜けました。ここまで上昇すると、トレンド転換しやすくなります。ABの時点では、下降トレンドを狙ったトレーダーが売り注文を出しますので、まだ下降トレンドになる可能性はあり、価格も反応して反落しています。
しかし、CDを上抜けたあとは上下どちらにも価格が動く可能性があります。
たとえ、下降トレンドになったとしても、時間をかけて上下動を繰り返しながら下落していくでしょう。このような場面では、どちらに進み始めるか、見極める必要があります。もし分からなければ、様子見をするのが良いでしょう。
3.5. 短時間でトレンドが明確な経済指標や要人発言時の使い方
1分足などの短い時間軸よりも、4時間足や日足などの長い時間軸ほどフィボナッチが意識されやすいことは上述しました。
これは、より多くのトレーダーに見られるため、機能しやすいことを意味します。
多くのトレーダーに見られるという意味で、経済指標や要人発言のように、時間が決まっていて、かつ大きな値動きが出るイベントがあるときは、誰もがその時間帯に注目します。日本時間で21:30などのように、指標や発言は時間が決まっているので、みな息をのんで待ちますね。そして、指標発表後に大きく値が動くと、待っていたトレーダーがポジションを取り始めます。このとき、多くのトレーダーが同じチャートを見ているということになります。
そのため、指標発表後にトレンド方向が決まると、短時間で値が大きく動くので、たとえ1分足でもフィボナッチが強く意識されることがよくあります。
下図をご覧ください。これは、ポンドドルの1分足です。
Aで指標発表があり、それまでもみ合いだった相場が上昇トレンドになっていますね。上げる力が強く、明確な上昇トレンドです。Bから一時的に下落し、Cの23.6%が押し目となりました。
このように、たとえ1分足のように短い時間でも、多くのトレーダーが注目し、トレンドが明確だと、反落しても早めに買い注文が入るため押し目が浅くなります。よって、23.6%や38.2%が機能することが多くなるのです。
経済指標のように誰もが注目し、短時間でトレンドが発生したとき、スキャルピングが好きな方なら1分足でも使ってみるのがおススメです。
3.6. フィボナッチはサポートライン/レジスタンスラインになる
フィボナッチ比率のいずれかで価格が反転すると、その価格帯がサポートラインやレジスタンスラインになることがあります。そのため、再び価格がその付近にくると、反発や反落が起こりやすくなります。
下図をご覧ください。
高値Aと安値Bを結ぶと、Cの23.6%とDの38.2%が出てきます。
Cで価格が反応し、反落しています。その後、Cを上抜けました。このとき、抵抗帯(レジスタンス)となっていたCの価格帯が、上抜けた事により支持帯(サポート)になります。そのため、Dで反落したローソク足がCにきたとき、支持する力が働きます。矢印の箇所では、全てサポートラインになっていますね。
このように、フィボナッチはサポートラインやレジスタンスラインになることも覚えておいてください。
3.7. フィボナッチとラインが交差するとより強い抵抗帯や支持帯になる
上述してきたように、トレンドが発生したときにフィボナッチを引くだけでも、押し目や戻りを図ることができます。これに加え、トレンドラインなどの他のテクニカルツールを使うと、さらに確度の高い予測が可能となります。
なぜかというと、フィボナッチとラインが交差するポイントでは、より強い抵抗帯や支持帯になるからです。
下図をご覧ください。
Aの高値とBの安値を結び、Cのフィボナッチ38.2%が計算できました。Cが戻しポイントとなり、ここから反落して下降トレンドが再開しています。Cで反落するという根拠は、フィボナッチ38.2%のみですね。反落する根拠が他に無いか、ラインを引いて探してみます。
Cは、下降トレンドラインと水平ラインが引けました。つまり、Cでは次の3つの下落する根拠があります。
・下降トレンドラインにあたっている
・水平ライン(今回はレジスタンスライン)にあたっている
・フィボナッチ38.2%にあたっている
このように、Cでは下落する根拠が3つもありますので、高確率で下落ことが予測できます。
フィボナッチ以外にも、その方向へ進む可能性がある根拠を見つけると、勝率の高いトレードを行なうことができるようになります。根拠の数は多ければ多いほど、確率は高くなります。
実際のトレードでは、23.6%や38.2%が押し目や戻りポイントになるのか、それとも50.0%まで反転してトレンド転換するのかは、いつもフィボナッチだけで判断しようとすると確率が低くなり、何度も外れてしまうと混乱してしまいます。迷ったときは、他の根拠と交差するポイントを探してみることがおススメです。
3.8. 前日の高値と安値にフィボナッチを引いてみる
一度トレンドが発生すると、上下動を繰り返しながら、何日も高値や安値を更新しながら継続します。たとえば、上昇トレンドが発生して1日が終わると、その翌日は、上昇するにしても高い確率で押し目を作ってきます。そこで、トレンドが発生したら、その日の安値から高値の値幅に対してフィボナッチを引き、翌日、どの比率が押し目になるのか準備することができます。
こうすることで、より的確なトレード戦略を立てることができるようになります。
どのようなことか、チャートで説明します。下図をご覧ください。
これは、15分足です。ABCそれぞれが、1日分になります。
1日の中で、どのようなトレンドが発生したのかに焦点を当てて見てみます。
まずAですが、前半でこの日の最高値ができましたが、後半で安値更新をし、上昇→下落→上昇という流れで、トレンドは発生していません。
続いて、Bです。1日の初めが最安値となり、1日かけて上昇しています。後半にかけては高値付近でとどまっていますので、上昇トレンドが継続したまま終了したことになります。
これを頭にいれて、Cを見てください。Cだけ見ると、前半が高値で、後半にかけて下落していますので、下げ基調に見えるかもしれません。しかし、前日のBで上昇トレンドが発生していますので、Cは1日のどこかで、Bの上昇に対して押し目になる可能性があることが想定できます。そこで、Bの安値から高値を結んでフィボナッチを引いてみます。
翌日のCがどうなったのかも含め、下図を見てください。
Aが安値、Bは翌日の午前でつけた最高値ですので、ここを終点として結びました。そうすると、Cがフィボナッチ50.0%で押し目となり、上昇トレンドが再開しました。
このように、チャート分析をするときは1日だけを区切って見るのではなく、毎日、連続性をもって見ることが重要です。前日や前々日からトレンドが継続していないか、もし継続していれば、あなたがトレードするその日は、押し目となってさらに上昇していく可能性があります。下落相場なのか、それとも一時的に押し目として下げているのか、判断を誤るとトレードでは勝てません。まずは、大局を見るようにしてください。
トレンドが出ていれば、フィボナッチを引いて準備することができます。また、フィボナッチを引く癖をつけていれば、トレンドが出ているかどうか、敏感に気付くことができるようになりますので、やはりおススメです。
まとめ
これまで、フィボナッチ・リトレースメントのことをフィボナッチとお伝えしてきました。
フィボナッチ・リトレースメントを理解すること、それは、投資家の集団心理を読む事に他ならず、ひとたび使い方のコツをつかむと、確度の高いトレードが継続できるようになることを意味します。
チャートは、投資家心理が作り上げたもので、自然の摂理が働いているといえます。自然界や芸術作品にも使われているこのフィボナッチ比率で、価格が反発する・反落することは、ごく自然なことでこの先の相場でも機能し続けるでしょう。
まずは、トレンドが発生したらフィボナッチ・リトレースメントを引く、という作業からスタートすることがおススメです。この機会に、フィボナッチ・リトレースメントを是非トレードに取り入れ、活用してください。何度も引いては、価格がどのように進むのかを観察していると、必ずパターンが分かってきて、トレードに自信が持てるようになるでしょう。