連続テレビ小説 わろてんか(41)「風鳥亭、羽ばたく」[解][字][デ] 2017.11.17
(アサリ)離せ!うわっ!
(てん)アサリさん!?痛いやないか!
(キース)この裏切りもんが!おてんちゃんに謝れ!謝るか!あんたには悪いけどわいも食うていかなアカンねん。
あんたらの夢にいつまでもつきおうてはおれんのや!お前もさっさと見切りつけた方がええで。
ここはもう…終わりや。
終わりやありまへん。
うちが…うちがこの寄席を守ってみせます!・「出かける時の忘れ物」・「ひょいとつかむハンカチのように」・「心の中にすべり込む」・「いちばんちいさな魔法」・「泣いたり笑ったり」・「今日も歩き出す」・「ありがとうと言いたいあなたのために」・「ごめんねと言えないあなたのために」・「パレードはまわり続けてる」
(藤吉)え?えっおい!誰もおらん…。
てん!どないした?アサリさんは神戸の新開地の寄席に行かはりました。
何やて?残ったみんなももう限界です。
そやけど休んだら余計に…。
一緒にもう一度文鳥師匠のとこお願いに行きましょ。
いや何言うてんねん。
伝統派の噺家を出してもらう事ははっきり断られた。
普通の噺家さんを出してもらうんやありまへん。
え?文鳥師匠ご本人に出て頂くんです。
ああ文鳥師匠…。
はあぁ!?よしよしよし。
てん買うてきたで。
難波ネギ手に入りましたか?ああ。
お母ちゃんに教えてもうた青物市場にあったわ。
おおきに。
洗といておくれやす。
ああ。
しかしホンマにこんなカレー作ったくらいで文鳥師匠が会うてくれんのか?伊能さんがお口添えしてくれはったから大丈夫ですやろ。
それにただのカレーやありまへん。
え?ちょっとお味見を。
ん?甘っ!何やこれ?
(文鳥)う〜ん。
うん。
(うどんをすする音)こら…。
うまいなぁ。
だしもしっかりきいてるししかも…辛いわ。
わてが辛いもん好きてよう知ってたな。
フフフフはい。
そやけどこのうどんでコロッといくほどわては甘うないで。
うちの噺家を出すのは諦めたんやないんか?はい諦めました。
今日は文鳥師匠に出てもらえないかとお願いにあがったんです。
あんた何たわけた事を!こら。
わてか?はい文鳥師匠です。
こらオモロイ事言わはるわ。
俺は子どもの頃から文鳥師匠の落語が好きで特に「時うどん」が大好きで大好きで。
そらまたえらい前座噺でんな。
師匠の十八番が人情もんなのは存じてます。
そやけど俺が一番好きなんはやっぱり子どもん時の「時うどん」で。
あそこがまたたまらんのです。
「ひっぱりな!」。
子どもん頃ようまねしました。
(うどんをすする音まね)「ひっぱりな!今食い始めたとこや。
ちゃんと半分残しといたる」。
「ホンマに半分残しといてや!」。
「心配すな」。
(すする音まね)「ひっぱりな!そない引っ張ったらだしがこぼれるやないかい!」。
そやけどうちの近所の人らはほとんど誰も師匠の「ひっぱりな」を知らんのです。
今師匠が出てはる寄席は敷居が高すぎてホンマに面白い落語を聴く機会がないんです。
これはうちに来たお客さんが「金があるなら文鳥師匠見に行くわい」言うて置いていかはったビラです。
ホンマもんの落語をよっぽど見たかったんですやろな。
お願いします!一回でええんです!俺らの寄席はこのままやったら立ち行かんかもしれません。
そやから…。
たった一回でええ席主として悔いのない番組を作って天満の町を歩いてる人らに師匠の落語をその目ぇで見てもらいたいんです!うちが初めてわろた芸はお祭りで見た落語でした。
そん時おなか抱えて笑うお客さんらに驚いて笑いってええな芸人さんてすごいなぁ思て…。
(笑い声)あっすんまへん。
そやからうちは面白い落語をぎょうさんの人に見てもろてわろてもらいたいんです。
男の人だけやのうて女子はんらにもお子たちにもみんなにわろてもらいたいんです。
う〜ん…。
あんたんとこの小屋が目指す色はそういう事か?はい。
伝統派でもオチャラケでもない…。
落語のためやと言わはるんやったら…。
一回きりやで。
カレーうどんの礼や。
はい!あ…ありがとうございます!ありがとうございます!文鳥師匠が風鳥亭に!?
(万丈目)嘘や。
ホンマです!嘘や!嘘や!嘘や嘘や!俺も腰抜かしたわ。
すごいわ…天下の文鳥の落語あんな端席で…。
ありえへん。
「あんな端席」言うな。
ありがとうございました。
伊能さんから聞いたカレーの話のおかげです。
おおきに。
(栞)いやこっちこそ。
まさか本当に出てくれるとは。
しかし師匠に出てもらって客席を埋めたところで一回こっきりではしかたがない。
そのあとはどうする?さ…さあ。
どないしたら…。
ああ…。
これを利用しよう。
新聞?伝統派の大看板文鳥が名もなき小さな寄席の席主の情熱に打たれてその高座に上がる。
夢のような話じゃないか。
その夢物語を新聞で大々的に書いてもらうんだ。
どうなるか見ものだろ。
喜楽亭文鳥!寄ってってや!間もなく札止め!入ってってや!喜楽亭文鳥ですよ!喜楽亭文鳥独演会ですよ!どうぞどうぞ。
さあどうぞ。
すんまへんお子たちを前に座らしてもろてよろしおすか。
すんまへんおおきに。
どうぞ。
(太鼓)すんまへん。
うわ〜っハッハッハッ!大入り満員や。
夢やないなぁ。
いや夢や。
いや夢やないて。
はよ楽屋行こか。
アカンやろ今は。
反対側の袖から見さしてもらおう。
そうか。
それも特等席に変わりないか。
うん。
行くで。
行こ。
岩さん行くで。
(岩さん)あぅ〜分かった。
師匠ホンマにこんな端席でしかも前座噺やりはるんですか?どうか我ら伝統派150名の噺家のためにもお考え直しを!お願いします!師匠!・お願いします!・師匠!・お願いします!まだかいな師匠は。
わざわざこんな場末の小屋に足運んだったいうのに立ち見やで。
文鳥さんホンマに出るんやろな。
ちょっとすんまへんすんまへ〜ん。
ちょ…ちょっと押しないなもう!
(楓)文鳥師匠が出ても出んでもこんな端席にこんなに人が集まったいうだけでええ記事になるんとちゃいますか?お願いします。
師匠。
お時間です。
(文鳥)はい。
ほなお客さんとこ行こか。
はい。
(一同)はい。
生字幕放送でお伝えします2017/11/17(金) 08:00〜08:15
NHK総合1・神戸
連続テレビ小説 わろてんか(41)「風鳥亭、羽ばたく」[解][字][デ]
藤吉(松坂桃李)が芸人探しに奔走するも誰も見つからず、てん(葵わかな)はもう一度文鳥(笹野高史)に出演交渉しようと考え、ある秘策を思いつく。
詳細情報
番組内容
藤吉(松坂桃李)は毎日芸人探しに奔走するものの誰一人見つからず、出演者が万丈目(藤井隆)とキース(大野拓朗)ら3人だけになってしまった。てん(葵わかな)はこの状態では寄席の営業を続けるのは無理だと、藤吉に文鳥(笹野高史)ともう一度会って出演交渉して欲しいと頼み込む。てんは尻込みする藤吉に、伊能(高橋一生)から聞いたカレーの話をヒントに、文鳥を説得できる秘策を思いついたと微笑んだ。
出演者
【出演】葵わかな,松坂桃李,大野拓朗,前野朋哉,枝元萌,藤井隆,笹野高史,高橋一生
原作・脚本
【作】吉田智子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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