10月の総選挙で与党が3分の2の議席を維持したことを受けて、改憲論議が再び活発になる。果たして、どのように改憲すべきなのか。議論は百家争鳴の様相を呈す。「9条は一言一句変えてはならない」と主張する福島瑞穂・社民党副党首に聞いた。
(聞き手 森 永輔)
福島さんは、9条をどのようにすべきと考えますか。
福島:私は、原文のまま決していじってはいけないと考えます。
憲法には理想を掲げる場という役割があります。9条は、世界から戦争がなくなるように、日本が戦争にコミットしないように、という理想を述べています。この理想を降ろしてはなりません。
「法の下の平等」について述べた憲法14条と比べると分かりやすいでしょう。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
○2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
○3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
法の下の平等は実現していません。いまだに女性、障害者、性的弱者、外国人、部落出身者、アイヌなどへの差別が続いています。しかし、たとえ困難ではあっても、たとえ時間がかかろうと、これらを撤廃しなければならない。14条はこの理想を語っています。
9条が掲げる理想もこれと一緒です。それに、戦争をなくすことは、差別をなくすことに比べれば容易でしょう。あらゆる差別を根絶することは必要ですが、すべての差別をなくすことは本当に容易ではありません。これに対して戦争は、政府が決定して始めるもの。なので、政府が決めなければよい。お金もかかりますし。
確かに戦争はお金がかかりますね。
福島:加えて、特に今だからこそ、9条をいじってはいけないと考える理由があります。安倍政権が2015年9月に安全保障法制を成立させたからです。安倍政権は9条の解釈をねじ曲げて、ダリの絵に描かれた時計のように歪めた。憲法を「たたき壊した」と言っても過言ではないでしょう。そして、この新たな解釈に則って、安保法制を作った。
一連の流れの中で、9条の下で何ができて、何ができないか、が分からなくなってしまいました。この状態を放置したまま9条の条文を改めれば、さらなる混乱が避けられません。
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