「流弾注意!」という物騒な看板が沖縄自動車道沿いに出ていたことがある。米軍キャンプ・ハンセンと隣り合わせの金武町伊芸区が、住宅地近くへの実弾射撃施設建設に抗議して設置した。その後、実際に流弾事件が起きた
▼最近、「落米のおそれあり」というアート作品が話題になっている。落石注意の道路標識と同じ構図。石ではなく、パラシュートの米兵や航空機が落下している
▼うるま市の伊計島で開催中のアートイベントで、美術家が描いた。意思疎通不足もあったようだが、自治会が「政治的」「活性化につながらない」と批判し、市が非公開を決めた
▼金武町の看板と違い、美術家は県外から一時的に訪れた。伊計島では1月にヘリが不時着している。描かれたのは生活の中心である共同売店のシャッター。住民の抵抗感は理解できる
▼一方、アート会場としては、やはり表現の自由を尊重する必要がある。「中立」も政治的スタンスの一種だから、「政治的」は除外の理由にならない。侮辱や差別の扇動を除いては、まず展示して議論するのが原則だと思う
▼アートの魅力は時に優しく、時には物騒に、文脈や常識を揺さぶることにある。向き合う者にも覚悟がいる。飼いならすことはできない。現にこの作品も、ベニヤ板で目隠しされながら議論を巻き起こしている。(阿部岳)