小田急新ダイヤで勃発、京王との乗客争奪戦
始発駅増と値下げ、どちらの戦略に軍配?
小田急多摩センター始発の通勤急行を6本新設――。11月1日、小田急電鉄は来年3月に実施するダイヤ改正の詳細を発表した。数多い改正内容の中でとりわけ目を引いたのが、この一文だった。
今回のダイヤ改正は小田急が1989年から進めてきた代々木上原―登戸間の複々線化工事の完了に伴うものだ。ラッシュピーク時の輸送力が4割も増強され、現在192%の混雑率が150%程度まで下がる。さらに平日朝の列車のスピードアップも図られる。星野晃司社長は「小田急の電車はすごく混んでいて遅いという不名誉な状況が長く続いていたが、複々線化でようやく解消する」と、顔をほころばせる。
始発駅増で通勤の快適性向上へ
線路の数が2倍になる複々線化が実現すると運行ダイヤ編成に余裕ができるため、今まではやりたくてもできなかったさまざまな施策を打ち出すことができる。その1つが始発駅を増やすことだ。近年、追加料金を払えば座って通勤できる「通勤ライナー」を導入する鉄道会社が増えているが、始発駅からなら、運賃はそのままで座って通勤することが可能になる。「路線に始発駅を増やすことで、途中駅からでも快適通勤を実現したい」と星野社長は意気込む。
日本最大の住宅開発地域・多摩ニュータウン。その中心に位置するのが多摩センター駅だ。小田急、京王電鉄、多摩都市モノレールの3社が乗り入れるターミナル駅でもある。小田急多摩線と京王相模原線はどちらも新宿方面へ向かうライバル路線だ。しかし、1日平均乗降人員で比較すると京王が約8万7000人なのに対し、小田急は約5万人。小田急が京王に大きく水をあけられている。
その理由はいくつかある。まず、同区間の運賃(ICカード)は京王が339円、小田急が370円。京王のほうが31円安いのだ。運賃の安さでは京王に軍配が上がる。