国道でスピード違反の取り締まりをしている警察官が、時速15キロでのろのろと走っているクルマを見つけた。
後続車が後ろに列をなして渋滞し、次々車線変更して追い越してゆく。
中にはイライラしてクラクションを鳴らす後続車もあった。
これは事情を確認した方がよいと判断した警察官はパトカーで追いかけ、その遅い車を道路わきに停車させた。
パトカーを降りた警官は、停車したクルマに近づいた。
クルマの中には中年の女性の運転手一人と、後部座席に2人の老人が乗っていた。
後部座席の2人の老人は、ともに目を見開いて幽霊のように青ざめた表情をしていた。
運転席に座っていた中年の女性は、警官が近づいてくるのを見て窓を開けた。
運転手:「おまわりさん、何か用ですか?」
警官:「ずいぶんゆっくり走っていましたね。渋滞の原因になっていたので、何か事情があるのかと思って止めました」
運転手:「私は、制限速度の時速15キロちょうどで走っていましたよ。ほら、あの標識に15って大きく書いてあるでしょう?」
警官:「あの標識の15という数字は、制限速度ではなく、ここは国道15号線、という意味ですよ」
運転手:「え?そうなんですか?なにしろ、免許を取り立てなもので。以後、気をつけます」
警官:「ところで、後部座席のお2人はご両親ですか。ずいぶん具合が悪そうに見えますが、大丈夫ですか?」
運転手:「さっき、260という標識の国道を走っているときに、気絶してしまったんです」