なろう読み専のメモ帳

小説家になろうのオススメやレビューを書きます

個人的なろう作品フルコース

 自分の中でのなろうフルコース作品を列挙しつつ概要など軽く紹介。
 他人へのオススメというよりは、自分はこういうのが好み、という表明の成分が強いのですが、なんだかんだで紹介記事っぽくもしました(多少のネタバレみたいなものもあったりします)。
 気になった人はぜひとも読んでみてください。

 フルコースと言いつつ並べてる順番はそれほど関係ないというか、おおむね上に行くほどつよいと思ってるだけです。


 目次


本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~

「わたしが心安らかにたくさんの本を読むために全力を尽くす。それがわたしの生き方です」
「……孤児を救う時も似たようなことを言っていたな」
「そうです。わたしが楽しく本を読むためには周囲に心配事があっちゃダメなんです。

  • スタンダードな異世界転生ファンタジーのなろう作品最強格(ただし主人公は戦闘しない系)と思っています。
    作品キーワードは「R15 異世界転生 ファンタジー 異世界 転生 女主人公」
  • 識字率が低く本が少ない世界に転生した主人公、その目標は(最序盤の時点では)、「司書になって読書三昧の日々を送ること」。
    物語が進み、前世の自分を省みたりもする中で、「自分と、大切な人たちが幸せな状態で」という条件も追加されていきます。
  • やってること自体はオーソドックスと言えばオーソドックスな異世界転生ですが、設定の詳細さやその繋がりの管理、後述する常識の違いも含めたキャラクターそれぞれの造形と思考の管理など、基礎的な部分のレベルが非常に高く、細かな部分に面白さを感じさせます。
    なろう作品っぽいクセの強さのようなものもあまり無く、おそらくなろう初心者向け。
    あらすじに「最初の主人公の性格が最悪です」云々とあるが、気にしなくていいです。
  • 身分や階級、職業、領地、そしてもちろん世界間の常識の違いというものが異世界転生要素によるエッセンスの一つになっているけど、異世界転生というよりは純粋にファンタジーやってると言う方が近いかも。
  • タイトルにあるとおり下剋上というか身分的にステップアップしていくのだけど、単純に上位者になって何でもできるようになってヒャッハーみたいな形にはそれほどなりません。
    もちろん主人公にできることは増えていきますが、同時にできないことも増え、いろいろなものを失ってゆくことにもなるため、とりあえず成り上がっていけばいいよねみたいな感はほぼほぼ無いと思います。
  • 本編は五部構成、超ざっくり言うと
    • 第一部はわりと素朴なほのぼの気味物作り(自分で紙や本を作る)。
    • 第二部は第一部の物作り継続、および階級社会に片足踏み込み始め。
    • 第三部は貴族社会突入、自分で本を作るよりも、他の人が本をどんどん作っていくための環境作りとしての領内政治など。魔術も本格的に出てくる。
    • 第四部は領内政治も持続しつつ、学園もの開始。魔術関連のあれこれなど学びつつ、他領の学生との競争、外交的要素も出てくる(ハリポタっぽいとちょくちょく言われる)。
      本作りという観点では、第三部でやっていた領内での本生産を発展させつつ、他領にも広めていくための下地作り。
    • 第五部は学園ものを続けつつ、領外とのかかわり、やり取りがより増える。と同時に、第四部終盤のとある出来事からの流れでストーリーが進んでいく。
      特に第五部中盤以降は、本作りと言うよりも、幸せに本を読んで過ごすために必要なすべてのものを取り戻し、そして手に入れるためのお話が展開される。
  • 基本的には女性主人公の一人称で、雰囲気というかノリは若干少女漫画的かも。その辺まったく癖がないわけではないけど、基本的にはするする読めるタイプの読みやすい文章で、癖というより味といえるくらいに昇華されていると思います。
  • 本編完結済み(約570万字)。現在は本編の少し未来の番外編を連載中。作者が多忙なようで、番外編の更新速度は本編に比べるとまったり。(2017/11/19現在)

異世界でカボチャプリン

「うん、人の手に余るようなものをたくさん作っちゃった。その管理はやっぱり私に責任があるから」
「アンタが全部負うべきことなの、それ?」
「作った本人だからね。後世の人たちを信用したいけれど、信用に足る要素があまりにも少ないの」
「それは……人間は信用できない、ってこと?」
「一緒くたに人間、人類、と言うのもどうかと思うけど、そうだね。私が作った魔道具を手放しでは任せられない」
「そっか……。人間はまだ、アンタのお眼鏡に適う存在じゃないってことなのね」

  • 最強主人公を描いた作品の最高峰の一つと考えています。
    作品キーワードは「R15 ガールズラブ 残酷な描写あり 異世界転生 暗殺者 異世界 少女/幼女 魔法使い/魔女 ものづくり/物作り チート 迷宮 料理 女主人公 隔日更新 建築 冒険者 主人公最強 日常系」
    • キーワードからもわかるとおり、主人公の手を出す範囲がちょっと広範囲すぎて、「バトルが読みたい」「料理ものが読みたい」「物作り系のが読みたい」というような、読者側の単一の要求に素直に応えるタイプではない(バトルを望む人にとっては物作りパートは退屈かもしれないし、政治関連のあれこれなんかもめんどくさく感じるだけかもしれない)。
    • 何が言いたいかというと、日常系長編web小説を読むことにある程度慣れている人向けかもしれません。
    • あるいは、先入観の無い初心者も逆に行けるのではないかという気もしないでもないけど。
  • 相手のスキルをコピーする能力という、いかにも最強系っぽい能力を持つ主人公。強大な魔力や広範囲に渡る前世知識等々も持ち、頭も回る、能力的にはぶっちぎり最強の個体。
  • その主人公の目的というかストーリー上の目標についてだけど、少なくとも序盤の内はこれといって無し。
    普通に表と裏のお仕事があって、普通に生活しているためです。
  • まず裏の仕事は、「使徒」という上位存在(とりあえずは神のようなものと思っておいていいかも)のパシリとして、下される指令に従って、異世界召喚される勇者とか、世界にとって有害と判断された人とかを暗殺したりとか。
    • ところでこの「世界」というか作品の舞台、なんだかとてもグレートブリテン島っぽい、グリテンという島がメインになります。
    • 適当にブリテンをモデルにしたというわけではなく、他にも現実の地球を想起させる大陸等々があったり──また、先述した使徒が世界にとって有害と指定するのが、科学の進歩を促しそうな者であったり──というあたりは、作品の背景設定を推し量ってゆく一助になるかも。
    • ちなみにグリテン島の地図はこちら。この作品では、主人公の物作りの成果物等々の様々な挿絵が、(正確に数えてはないけど)おそらく二百くらいはあり、この地図もその一つ。
  • 表の仕事としては、魔術とスキルと知識をふんだんに使った物作りなんかをしています(暗殺者としては短剣使いをやっているので、そのカモフラージュという面もあり)。

  • 以上を前提として序盤の話、すなわち主人公の送る日常の話──暗殺、物作り、なんてことない日常、敵対勢力との軽いドンパチ、迷宮潜り、若干の戦争等々が展開されます。
  • そしておそらく、この作品に序盤と中盤の区切りをつけるなら、主人公に初潮が来たあたりからを中盤としてよいと思われます。というのも、それをきっかけに、主人公は自分の残りの寿命が非常に短い、あと五年から十五年ほどしか生きられない可能性が高いと知るためです。
  • その後の物作りは、主人公にとって、この世界に生きた証を残すという意味合いも持ち始めます。
  • また、話が進むにつれて、主人公は使徒の一部に命を狙われるようにもなってゆきます。
    それらの企みや罠を回避しつつ、やられっぱなしは面白くないとばかりに、少しずつ反撃の下準備を進めてゆく──すなわち、上位存在への反逆という方向性も物語に組み込まれてゆくことになります。
  • その後もとある少女を王にしたり、国の素敵な統治のためにあれこれやったり、敵国に殴り込んで無双したり、傘下に組み入れた他国を素敵に統治するべく悪い顔でいろいろやったり等々、最近では宇宙にも行ったりと、とにかく色々なことをやりまくる作品。
  • 色々やりまくりすぎてあんまりしっかり紹介していくと長くなりすぎる上に、現時点でも結構やっちゃってるネタバレがさらに酷くなるのでひとまずこのくらいで。
    色々なことをやりまくっているのがこの作品の見所、と思えるような紹介だったかもしれないけど、個人的には正確にはちょっと違う読み方をしていて、しかしそれを書くとさらに長くなりそうなのでたぶん個別記事作ってもう少し書きます。
  • 女性主人公の一人称だけど、女性的な感じはあまりしないかな……。
    文章は良い意味で癖が無いというか、隙が無いという感覚。かといって面白みがないわけでもないというかむしろふんだんにある、過少でも過多でもない、端正な、作者の実力を感じさせる、安定した文章です。
  • 本編連載中(約490万字)。更新ペースはド安定。基本的に二日に一回更新で、各話のクオリティも十分です。(2017/11/19現在)

幻想再帰のアリュージョニスト

「『再演』――それは繰り返される過去。つまりは時空の操作だ」
 類推のような言葉だが、この世界においてはただの類推が、ただの言葉が力を持つのだ。舞台上で過去の場面を演じたならば、そこには本当に過去が立ち現れる。そんなことがあっても、何も不思議な事は無いのだろう。
「再演され続ける演目はね、『過去』であり『今』でもある。そして再演可能性がある限り『未来』でもあるんだ。演劇には時間の全てがある。時間とは演劇だ」
「つまり、過去を演じるという儀式を行うことで、過去に干渉する?」
「そういうことだ。同じ事をなぞれば、それは時空を超えて影響を及ぼす。似ている者は等しい――それが呪術というものだよ。演劇とは呪術的儀式に他ならない」
 まさかこの世界、舞台公演のたびに過去が書き換わってたりしないだろうな。
 とはいえ、俺は無数の神話や物語が直接当人に影響を与えるという前例を見てしまっている。神話の魔女コルセスカが過去から影響を受けるのなら、現代の物語が過去に影響を及ぼすことだって無いとは言えない。

  • 作品キーワードは「R15 残酷な描写あり 異世界転生 異世界転移 異世界 転生 ソフトSF ファンタジー オカルトパンク ゆらぎの神話 現代神話」
  • まずどんな話なのか凄まじくざっくり言うと、
    • 主人公は二人います。それぞれ男と女で、ダブル主人公みたいな感じです。
    • 四人の魔女がいます。いろいろあって魔女たちは戦っています。
    • 主人公たちはそれぞれ魔女のパートナー的なものになります。そして自分の魔女を勝たせるべく戦いに関わってゆくのでした。……こんな感じ。
  • そしてこの作品の魅力についてですが、ちゃんと紹介するのは難しい(作品名でググれば紹介記事がちょくちょく出てくるはずなので興味ある人はそちらをオススメ)ので、超雑にまとめてしまうと、
    • 根っこのストーリーは王道というかそこまで捻くれてない気もする。
    • 強いて言うならバトルものと言えなくもない(おおむね戦ってるといえば戦ってるので)。
    • ではこの作品の何が強いのかというと、これらを物語る手段の闇鍋っぷり、鍋にぶち込む素材の量と質の高さとその惜しみなさ、それらをまとめる作者の文章パワー含む腕力、そうしていざ出てきた料理は、材料ぶっこみの闇鍋っぷりとは裏腹に鮮やかで美味しくて量もある謎料理に仕上がっている……みたいなかんじ(抽象的)。
  • 主人公が異世界転生しているため、なろうのジャンル分類では「異世界転移/転生」となっているが、作品のあらすじからもわかる通り、この作品では異世界転生は既に制度として確立されていて、ジャンルというよりもいち要素、具材の一つという形。
  • キーワードにあるソフトSFやファンタジー、呪術やオカルトとサイバーパンクを接合したオカルトパンクなる事柄もそれぞれが具材。
  • そして実は、それらをぶち込む鍋(器具)からしてわりと怪しい代物で、↑の引用はそれを端的に表した部分の一つ。
  • ↑の引用部分は、ちょっと敵方にしてやられてヤバいので、過去に干渉して、現在の自分たちが逆転するための伏線を仕込んでおこうみたいな場面なのですが、ここで着目してほしいのは、舞台となる世界自体が、こういった改変を──演劇に限るわけでもなく、その他さまざまな呪術によって、過去なり事象なりの改変、改竄を受け入れてしまう、根本的に胡乱な舞台だということ。
    そんな場で、先に挙げたキーワードの、ソフトSF、ファンタジー、オカルトパンク等々が、それぞれの世界観によるせめぎ合いを繰り広げている、という感じ。

     今、ミルーニャは世界の在り方を杖(しぜんかがく)的な視点で説明しようとした。
     そして、ラーゼフはきっと同じ事を呪文(じんぶんかがく)的な視点に基づいて説明しようとしていたのだ。
     おそらくは、同様に邪視(にんげんのほんしょう)や使い魔(しゃかいかがく)にもそれぞれ独自の世界の捉え方があるのだろう。
     この世界には色々な視座、視野、視点が存在する。
     邪視者は己の意思を世界に押しつけて事象を改変するし、呪文使いは過去の事象を解体して異なる解釈を汲み上げ、新たな物語として再構成する。使い魔を支配する者は己と他者の関係性から世界を規定し、杖使いはあるがままの世界で生きようとする。そうした様々な『世界観』が相互に影響を及ぼし合ってゆらぎ続ける。
    ゆらぎの神話――ハルたちはこのゆらぎを持った世界観をそう呼んでいる」

  • ちなみにこの過去改変には敵方も介入してきて、『現在での勝利を得るために、過去の出来事を自分たちの都合の良い文脈に引き寄せる』という形でのバトルが描かれたりもします。バトルものです。
  • ついでに、過去の出来事を演じることによって過去への干渉をしていたら、演じられている過去の偉人が「これは自分の行動としてはおかしい」みたいなことを言い出し、未来からの干渉に気付いて逆に過去から干渉し返す等々いろいろわけのわからない展開になっていったりします。
  • そういった感じで、わけがわからないけどとにかくアクセル踏みまくったネタが惜しみなくぶち込まれていって、しかしなんか知らんけど気がついたらなんかきっちりまとまっている……という感じで進んでいく作品です。
  • あと、個人的な感覚ですが、文章がとてもいいです(こなみ)。
  • 小説の文章って、読んでて面白い、読んでて楽しい、読ませる、ふつう、読みにくい、普通なように思えるんだけどなぜか読みにくい等々いろいろあると思いますが、この作品の文章は単に読ませるというだけでなく、(個人的には珍しいことに)華を感じます。
    美しいものを見ている気にさせる何かがあるというか。
  • 本編連載中(約310万字)。分量的には文庫ラノベが20~30冊程度になるくらいで、これが2014年4月からの連載なので相当速筆な方なのだけど、2015年後半からはそれまでに比べると更新頻度が落ちていて、今はたぶん普通のラノベシリーズを追いかけるくらいの速さになっていると思われます。
    エタる気配は今のところたぶん無さそうなのでだいじょうぶ。(2017/11/19現在)

無職転生 - 異世界行ったら本気だす -

  • 言わずと知れたなろう累計ランキング一位。異世界転生というジャンルの最高峰の一つと言ってしまいたい。
    どんな作品なのかシンプルに言うならば、『人生に後悔しながら死んだ主人公が、異世界に転生したので、今度は後悔しないように、本気で生きる話』といったところ。
    ……まあタイトルとあらすじに書いてることだいたいそのまんまなんだけど、作品の概要を簡潔に説明しようとすると、おおむねこれ以外のものにはならない。
  • 転生先は剣と魔法のファンタジー的異世界。
    生まれ変わりによって最初から大人並みの思考能力を備えているというアドバンテージを活かして、幼少期から魔術の練習をして最大MP的なものをめちゃくちゃ上げたり、使える人がほとんどいない無詠唱魔術を身につけたりもして、幼い頃から天才扱いされる(実際、幼少期の主人公の実績については、主人公を知らない作中人物には作り話だと断定されるレベル)。
  • ここで例えば、アドバンテージを活かして世界最強の魔術師を目指すぜとか、成り上がって高い地位についてやるぜとか、世界をめぐって冒険者として名を馳せるぜみたいなのがあれば、そういう感じの話として説明できるんだけど、そういったいかにも物語的な目標は主人公には無いです。
    • これはもともと主人公の目標が「後悔しないように本気で生きる」以上のものではないというのもあるのだけど、主人公を増長させない程度の強者(元冒険者の父親)が身近にいるということや、魔術関連でもてはやされようと中身は凡人でしかないというのを自覚していることが関係しています。
    • ちょっと転生して魔術の天才みたいに扱われたくらいで中身がそうそう変わることはない。たとえば転生後の主人公も、前世に引き続き、当初は引きこもりです。
  • じゃあ結局どんな話になるんだ本気でまったり生きて終わるのか、と思われるかもしれないが、とりあえずまったりにはなりません。
  • とある大きな災害に巻き込まれたり、ほとんど世界を横断する旅をする羽目になったりなどの大きな出来事もあれば、家族や友人、恋人との関わりなど、剣と魔法のファンタジーからしてみれば比較的小さく感じられるだろうことまで、いろいろあります。
  • 前提として、主人公は失敗者です。これらすべてが主人公にとっては大きな問題、難題であり、なかなかスマートに解決することはできないけれど、それでも主人公なりに向かい合って、目の前のことに一つずつ取り組んで、「本気で生きて」いく──そんなお話、という感じ。
  • この作品を異世界転生というジャンルの最高峰の一つと思う理由として、まず個人的に、異世界転生作品で楽しみたい要素として、「生き直す」という事柄があります。
    • ここで言う「生き直す」というのは「転生によって得た新しい人生を生きる」「しかしこの新しい人生は前の人生の続きでもある」という二つの意味合いがあって、自分の中では異世界転移と差別化するポイントの一つでもあったり。
    • 特にこの後者の要素は、なろうに異世界転生作品多数あれど、実はそれほど触れられない傾向にある(と思っている)のですけど、ここについてこの作品は常に強く意識させます。
      どこかのファンタジー世界に生まれ幼少期から頭角を現した天才魔術師の物語ではなく、後悔にまみれて死んだ元無職ニートが今度は後悔しないように生き直す物語として、貫き通しているのです。
    • そのあたり、これこそまさに「異世界転生」の話だと私は感じています。
  • 本編完結済み(約280万字)で、蛇足編と称して完結後のサイドストーリー的なものとか、また別に同一世界観の作品がいくつかとかあったり。
    というか、この作品そのものが、作中世界におけるとある大きな出来事というか、物語の一部であるという構想で、実は現在は続編待ちみたいな状況だったりします。
    この作品の主人公の物語、という意味ではちゃんと終わっているのでだいじょうぶです。作中世界における物語の続き、という意味での続編が待たれます。(2017/11/19現在)

四度目は嫌な死属性魔術師

 中々発展しないどころか何時衰退と崩壊のコンボを決めるか分からない問題だらけの世界ラムダ。
 その世界も含めた複数の世界の輪廻転生を管理運行する神様は、問題を解決すべく『対象の世界に異世界の人間をチート能力つきで転生させて送り込むと、世界が発展する』と言う神仲間から聞いたジンクスを実行した。
 ただし、念のためにオリジンと言うまた別の異世界に転生させて経験を積ませてから。
 この物語は、そんな神様のうっかりミスで与えられるはずのチート能力を、名前が良く似た他人に与えられてしまい、莫大な魔力(MP)と独自に獲得した特殊な死霊魔術である死属性魔術しかない主人公が、不幸だった一度目、二度目の人生を終えながらも、四度目は嫌だと異世界で三度目の人生を生きるお話です。

  • どんな物語なのかの前提が若干ややこしいのであらすじから引用しましたが、つまりそういうお話です。
    個人的には、エンタメに寄った最強主人公ものとして楽しんでいます。
  • 主人公が三度目の人生を生きるお話ということですが、これがどんな感じなのかというと、まず主人公は莫大な魔力と死属性魔術によりポテンシャルは高いのですが、二度目の死の際に神様や他の転生者への恨み言を口にしたため、三度目の人生で他の転生者に害をなさないように、何もできずすぐ死ぬよう神様に呪われた状態で第三の生を始めることになります。マイナススタートです。
  • 神様の呪いに加えて、主人公はダンピール(吸血鬼との混血)に生まれ、それにより教会に狙われ、母親もその関係で火炙りにされます。
    主人公は自身の死属性魔術によって、母親を幽霊として現世に留めます。そしてこの母親に肉体を取り戻し、生前と同じように生活できるようにするというのと、母親を殺した者たちへの復讐が、ひとまずの主人公の目的となります。
  • 主人公は母親の蘇生の方法を探すとともに、復讐のためにも力をつけてゆくことになります。
    と同時に仲間も得てゆくことになるのですが、主人公が言わば人間社会に命を狙われている以上、その仲間もまた、人間社会の外にいる者たちになります。
    • たとえば山賊に殺された者たちの霊(ゴースト)
    • 社会性を持ち集団生活をしているが、人間からはモンスターとみなされている種族の者たち
    • かつて人間に滅ぼされた国のアンデッド(ゾンビ)たち
  • 主人公は、一度目と二度目の人生を不幸なままで終えた、言ってみれば「虐げられた者」です。そんな主人公に付き従ってゆくのも、虐げられるなり、人間社会から酷い扱いを受けるなどした、弱者の立場にいる者であることが多いです。
  • 彼らが寄り集まって、やがて拠点を手に入れ、国を名乗り、生活や文化を発展させ、さらに仲間を加え、それぞれが力を増し、集団としての力も蓄えてゆく──というのも、この作品の一面です。
    作品タグにある「成り上がり」というのは、主人公だけではなく、主人公と共に歩むものすべてにかかっています。
    • このように書くと、主人公勢力は人間社会に対していずれ復讐することを企てているみたいに見えるかもしれませんが、そういうわけでもなく、むしろうまいこと共生しようとしています。
      しかし、人間社会の上位にいる神たちや、最初に主人公たちを転生させた神様が、いろいろな事情により、主人公(勢力)絶対殺すマンになっているため、争うことなくまったりというわけにはいきません。
    • 舞台となる世界ラムダでは、二つの勢力に分かれた神々の戦争が過去に行われており、負けた側の大将は封印され、勝った側の神々が世界を統治しています。そして勝った側の神々の価値観では、主人公や、主人公の魔術によって生み出されるアンデッドたちの存在は認められないという感じの事情があります(ざっくり)。
    • そしていろいろあって、負けた側の神々の多くが主人公に与したりするので、神々を巻き込んだ勢力争い的な感じにもなっていきます。
  • また、別の軸として、他の転生者たちの存在もこの作品の見所の一つとなっています。
    • 主人公と共に二度目の世界オリジンに転生したチート能力(それぞれ固有の特殊な能力みたいなイメージでいいかと)持ち転生者が100人います。これは二度目の世界で死んだら順次三度目の世界ラムダに転生することになっています。
    • 先述したように、転生を司る神が主人公絶対殺すマンと化すため、三度目の世界に転生するチート持ちをヒットマンに仕立て上げようとしたりします。
      が、完全に強制されるわけでもなく、主人公へのスタンスは転生者によってそれぞれです(他の転生者が三度目の世界に来る頃には主人公が一大勢力を築いているため、敵対するのは危険すぎるというのもあり)。
    • さらに、主人公が死んだ後の二度目の世界における、転生者たちの関係や内紛等々も描かれます。ここで重要なのは、二度目の世界で生きている転生者たちは、三度目の人生があるというのをまだ知らないということです。
      • 三度目の人生の存在は、死んだ後に神様のもとで知らされます。そこでは下界の様子なんかも見れるので、要するに、二度目の世界でどんな陰謀が動いていたかなど全部ネタバレされちゃうわけです。
      • 主人公側が三度目の世界から少し干渉したりなんかもして、二度目の世界での顛末がその後の三度目の世界でどう影響するのか、楽しく想像させてくれます。
  • 主人公の勢力には、各種族のゴーストや各種族のゾンビ、巨人族やグール、アラクネやスキュラや吸血鬼、その他多数の種族が合流し、そしてそこにはもちろん普通の人間もいて、それぞれの認識や文化をすり合わせて共生し、発展していきます。
  • そんな極彩色の混沌が、敢えて言えば「正義」の勢力を押しのけて世界に侵食してゆく様はある種の小気味よさがあり、そしてこれは実際に読んでみないとわからないのですが、これらが妙にコミカルに描かれていたりもします。
  • 注意という程でもないのですが、ステータス表記があります。
    • 数値にはそこまで意味は無いけど、各キャラ成長によってジョブなり種族なりがちょくちょく変わるので、どんどん強くなってるよという表現として受け取れるものです。
    • 種族等々の設定について各話の最後に捕捉されることがちょくちょくあるというのもあって、TRPGのキャラシート的なノリで見るみたいなのもしやすいかと。
  • 本編連載中(約300万字)で、現在更新は四日に一度で各話それなりの量もありと、非常に安定しています。(2017/11/19現在)

黒の魔王

  • オーソドックスでありながら腰を据えて書かれる異世界転移ファンタジー、なんだけどどちらかというとラブコメです。
  • 基本的なストーリーはだいたい以下。
    • まず主人公は、異世界のとある勢力(国家)によって異世界転移させられます。
    • 彼らは主人公を兵士に仕立て上げるべく、なんか人体実験とか洗脳とかいろいろ施します。
    • 主人公はなんとかそこから逃げ出しますが、逃げ出した先で平和を謳歌していたところに、主人公を異世界転移させた国が攻め込んできます。
    • 舞台となる世界には神が実在しています。そしてこの攻め込んでくる国というのは、とある強力な神を崇拝する「十字教」を掲げ、その神の威光で世界を染めつくそうとするべく「十字軍」を差し向け他国を侵略しまくる宗教国家です。
    • 強制異世界転移からの人体実験コンボを決められたこと、加えて自分たちが暮らしていた場所に攻め込んできたこともあり、主人公はこの国を敵視し、因縁を育て、戦ってゆくことになります。
  • メインのストーリーはだいたいこんな感じのはずなのですが、もう一つメインと言ってしまっていいであろう軸があって、それは主人公をめぐるヒロインたちの攻防、すなわちラブコメです。
    • と言っておいてなんですが、これをラブコメと呼ぶのはイメージと異なってしまう可能性も高いというか……たとえばわりと初期からの付き合いであるヒロインとしてまず二人いるのですが、恋に狂った二人は互いに恋敵を排除する気満々で隙を窺っています。
    • そんな鍔迫り合いの中に、主人公に出会って初めて恋を知る純真な新ヒロイン──いえ、ヒロイン候補が迷い込んできてしまうのですが、初期ヒロインに(一応最初は精神的に)ボコボコに叩きのめされます(正直このボコボコにされっぷりが既にもう最高にかわいいです)。
    • 主人公の愛を勝ち取るために、非合法というか非道なことはもちろん(主人公にバレなきゃいいんだよ精神)、同じパーティーの仲間である恋敵のこの世からの排除も含めてやる気満々の初期ヒロインたちには、幼く清らかな恋心などでは全く歯が立たないのです。
    • しかしそんなヒロイン候補ちゃんも、幾度となく心を折られ、それでも主人公への気持ちを忘れられず、初期ヒロインたちへの呪詛を吐き、穢れを知らなかったかつての姿など見る影もなくなり、恋心を核にした逞しさとともにヒロインの資格を得てゆく、恋に汚れてゆくとでも言ってしまいたいこの過程が本当に素晴らしいです。
      この作品のヒロインはみんな輝いています(初期ヒロインたちも最初からイっちゃってたわけじゃないよ!)(いや最初の一人は若干微妙かもしれないけど、恋敵が現れたことで本格的にアレになっていくんですよ)。
    • そしてヒロイン候補は最新話時点でまだ何人もいる!!
  • なんかラブコメがすべてみたいなノリで言ってるけど、基本的にはバトルものの異世界転移ファンタジーです。主人公はもちろんヒロイン(候補)もバトルしまくります。
  • とはいえ十字教という勢力、ひいてはそれを掲げる国家に主人公とヒロインのパーティーが単独で喧嘩を売るわけではもちろんなく、国対国の戦争にいち冒険者パーティーとして参加することになります。タグの架空戦記が示す部分でもあり、その関係上、集団対集団の戦いもけっこう描かれたりします。
  • ストーリーのメインの軸は十字教との戦いとラブコメの二つと思いますが、それ以外の枝葉もかなり書いていく形で進んでいきます。
  • 日常の話や、主人公やヒロインの修業等の強化エピソード、冒険者としてクエストをこなしたりモンスターを狩ったり、はては主人公の持つ呪いの武具の来歴など、全部惜しまず、話を進めるのに焦ったりもせず、書きたいのを書きたいだけ書いているといった感があります。
  • こういうのはweb小説ならではと思うし、個人的には(更新が安定してるなら)むしろ大好きなんですが、人によっては冗長と思えるかもしれません。なのでこのあたりは良し悪しかも。
  • 本編連載中(約360万字)。現在週一更新で安定しています。(2017/11/19現在)

そだ☆シス

  • 異世界転生ほのぼの日常ものの極北と思われます。
  • ファンタジー世界に転生した主人公が、双子の妹をはじめとした家族たち、幼馴染たちやその他の人たちと、普通に日常を送るお話です。それ以上でもそれ以下でもありません。
  • 転生した主人公には為すべき使命が──とか、やがて世界を滅ぼそうとするなんちゃらが現れ──とか、転生して平和に暮らしていた主人公たちだが戦渦に巻き込まれ──とか、そういういかにも物語ちっくなあれこれは無いです。
    というか、異世界への転生で始まるお話から、「そういうの」を排除した結果がこれ、みたいに考えるといいかも。
  • そしてそれを、すごくゆっくり、じっくり書いています。
    それがわかりやすい部分としては、たとえば現時点でこの作品は約350万字ですが、主人公はまだ六歳(一歳から数えて)です。
  • 文庫三十冊程度の分量を経て主人公はまだ六歳、どうしてそんなことになるのかイメージがつかなかったり、あるいは間違ったイメージを抱かれてしまうかもしれませんが、これは「時系列に沿って全部を描いているから」です。
    • 文庫三十冊とかのシリーズがあって、その最新刊で主人公が六歳と聞くと、その三十冊で五年しか時間が進まないくらい濃密なイベントの嵐だったんだなとイメージされるかもしれませんが、そうではありません。日常の様子を全部書いてるだけです。
    • イベントの連続によって物語を紡ぐのではなく、単に起こっていることを時系列に沿ってだばーっと垂れ流していく──言ってみれば日記に近いであろうそのスタイルは、長さへの制約が薄いweb連載ならではのものと思われます。
    • (ならではすぎてわりと上級者向けな感は否定できないかも)
  • 転生者がありふれているみたいな世界観ではないので、主人公には転生者としての普通の(?)アドバンテージ(子供らしからぬ知識やら思考能力やら)はあります。
    • そのため、「初期能力が特別に高い子」なりの特別なイベントはちょくちょく起きますが、それらは基本的には、異世界でのほのぼの日常生活の範囲内での特別なイベントです。
    • 特殊な「イベント」としては、転生者バレに伴いとあるキャラと出会うことでいろいろ関係性というか行動可能範囲が広がったりということがあるのですが、それ以上のことはおおむね無いです。
  • 敢えてこの作品の主軸は何かというならば、「妹ちゃんの成長を見守る」ことになります。
  • そんなほのぼの日常コメディーの味付けとして、舞台がファンタジーちっくな異世界なので、魔法や魔獣の存在など、この世界とは様々な前提が異なる世界、国での社会制度や生活様式についてちまちま語られたりというのがあります。
  • あと他に人間関係的な部分の味付けとして、やはり大きいのは妹ちゃんとの関係ですが、まず妹ちゃんは様々な方面に関して才能の塊だというのがあります。
    • 転生者のアドバンテージで最初こそ自分の方が妹ちゃんよりなんでもできるものの、いずれ色々な方面で追い越されると、主人公はわりと早いうちに確信します。
    • 兄として恥ずかしくないように、認めてもらえるように、すべてで妹ちゃんの先を行くことはできないにしても、何か別の分野で──と必死で努力を重ねたりもするのですが、これはあくまで時系列に沿って日常を描く話であって、そして四六時中そんなことを意識して暮らしているわけでもないので、このあたりもやはり話の主軸とかよりは味付けとして考えた方が良いと思います。
  • あと、タグに「ハーレム?」とあるのでラブコメ的部分についても少し述べますが、まず前提として、いくつかの理由により、現時点ではそこまで強くラブコメしてる感じはないかもしれません。
    • まずやっぱり、主人公や妹ちゃん等々の主要キャラが最新話時点でも六歳なので。
    • そしてハーレムといっても、どちらかというとヒロインたちが主人公を攻略しにかかってるみたいなところがあるため、基本的に主人公視点の本編では、主人公がラブコメしにいってる感はあまり無い。
    • そしてやっぱり日常を描く話であって、みんな四六時中ラブコメ脳で動いているわけでもないため。
    • というか主人公は妹ちゃんに置いていかれないように頑張ってるみたいなことを上で書いたけど、正直この頑張りは将来的に女性関係がハーレム的に収まった際にみんなを養うため、言ってしまえば甲斐性のある男になるための過程に見えなくもない。
    • 甲斐性が無いとハーレムはやれないのです……。
  • 本編連載中(約350万字)。最近は若干更新が不安定なのですが、平均すると週一くらいのペースになっています。(2017/11/19現在)

 とりあえず以上になります。
 それぞれ面白いので興味があればぜひ読んでみてください。
 たまに追加や追記があるかもしれません。