サイボウズさんには業務的にもお世話になっております。ありがとうございます。
私も入籍時に名字をかえたので、非常に興味深く拝見しておりました。
問題としている内容など、青野氏の主張に同意します。違和感はありません。名字かえた側からとしては、非常に普通の主張です。
また論点を経済的デメリットに絞って訴訟を起こした点も納得できます。こういう話って家族観とか道徳とか、歴史的なあれとかを問題にしても主観的なものにすぎず、客観性がないのですよね。入籍時に名字をかえることによって経済的な打撃を受ける。これは非常に客観的で、算定も容易ですし。冴えたやりかたではなかろうかと。
さらに言えば、今後こうした経済的な打撃は大きくなる可能性が高く、「今まで夫婦は同姓だったから」で放っておくと結婚のコストは際限なく上がっていきます。
以前にこんな記事を書きました。結婚して名字をかえるとなると、これだけの手間がかかります。
「昔は同姓婚で問題なかったではないか」という主張がありますが、それは昔のほうが手続きが少なく、今のほうが煩雑で面倒だから。例えばクレジットカード。昔はなかった。今はある。クレジットカード払いにすると便利なものもある。例えば公共料金。例えばインターネットでのお買い物。交通の便が悪いところ、都市部まで遠いところほどクレジットカードは便利でしょう。ネットですべて完結する。
しかしながらクレジットカードは個人に紐付けられるもののため名義変更が必要です。クレジットカードの名義と、申し込みの名義が同一でなければならないものは結構あります。携帯電話なんかもそうですね。私も格安スマホにかえるとき、ここが問題になりました。
あるいは保険。保険料をクレジットカードで払い、それが名義変更となるとしばらくはクレジットカード決済ができないため、コンビニ決済が必要になり……とか。
こうしたもろもろが実に面倒くさい。便利な世の中になればなるほど面倒くさい。様々なものが個人情報に紐付けられ、便利になればなるほど個人情報変更に伴うコストが大きくなる。つまり改姓手続きが面倒になり、入籍に伴って名字をかえる人間だけが損をするわけです。
昔は個人情報に紐付けられるものってあんまりなかったんですよ。クレジットカードなかったし。公共料金とかは世帯とか住所に紐付けられるものでしたし。名字かわろうが構成員が変化しようが、そこに土地・建物が変わらずあり、人が住んでいて料金さえきちんと支払われていれば問題にならなかった。銀行口座だってハンコひとつで親が子の分とか全員分つくってどうこうとかできた時代ですし。名寄せとかどうとかで本人確認が必要になったのは最近ですよ。昔はゆるかった。ゆるかった分、名字をかえる手間が今より少なく、コストも少なかった。今は違う。違う以上は今までと同じ制度では持たないんです。
名字をかえることが面倒くさい。となると結論としてはふたつで、面倒だけどなんとかするか、面倒だからあきらめるかです。で、「なんとかしろ」というのが同姓婚主義者なわけで、私はそれは余計なお世話だと思っているわけです。表向き家族制度を守るとか言いながら、結果的に結婚をあきらめる人を多く作り出してしまう可能性が高い。事実、名字かえるのは面倒なんです。私は総務畑の人間だから、こうした手続きは得意でなんとかこなせた。お金で解決できる場合もあり、それを選択できる人もいるでしょう。
しかしながら、こうした手続ぎが苦手だとか、お金がないだとか、あるいは考えるだけで憂鬱だとなった場合の結論は、婚姻放棄であります。で、私はこっちのほうが先行き難しいと思うのですよ。事実婚状態の世帯を把握するのは難しいし、それこそお子さんができた場合に、お子さんはどうするとか。子どもは親の同姓・別姓を選べない。でもそれ以上に親の法定婚・事実婚を選べないほうが問題が大きいと思うわけです。受けられる福祉的な恩恵が事実婚の場合不利なので。
であるなら、今のままでいくなら事実婚でのお子さんに対する福祉制度の整備が必要だと思うわけです。法定婚でのお子さん並に。それもしないとなると、もう手詰まりです。
名字をかえたくないなら結婚するな。
子どもに福祉を与えたいなら結婚しろ。
こういうことなので、面倒だから結婚しないし、お子さんができると不利なので子どもを作らないと。行き着く先は非婚化で少子化です。だってそれが合理的選択ってもんじゃないすか。
なので多少なりとも「産めよ増やせよ」をやりたいなら、結婚しやすく、お子さんを作りやすくするべきで、まずはその入口となる結婚制度見直しの着手待ったなしだと思うわけです。同姓婚維持で結婚制度を守ろうとするのはいいけど、結果的にそれじゃ結婚しづらくなって、結婚制度滅んじゃうよね。そんな滅びの論理に肩入れする必要なんてないよなあ。しかも同姓も選択できるのが選択的夫婦別姓で、損する人あまりいねーのに。
以上、名字をかえた話をすると奥様から受けがいいタケルンバがお届けしました。