「わろてんか」一週間 第7週「風鳥亭、羽ばたく」[字] 2017.11.19
せ〜の。
(一同)頑張っぺし!
(アサリ)寄席の高座に「薬」の額かいな。
(てん)笑いいうんは人を幸せにする薬やと思うて。
(万丈目)ボンの寄席か。
(アサリ)いつ開業するんや?
(藤吉)まずは芸人集めんと。
ボンわてが一肌脱ぎまひょ。
(キース)俺も出たるわ。
わいも出たるで!そやけど下足番やら雇わなアカンし。
そんなお金ありまへんえ。
うちがお茶やお座布運ぶんもやりますさかい。
(岩さん)その座布団はどこや?座布団置き場は空っぽやったで。
(2人)へ?ほな湯飲みは?タバコ盆は?
(アサリ)ちょうちんは?何もないんかい!・「出かける時の忘れ物」・「ひょいとつかむハンカチのように」・「心の中にすべり込む」・「いちばんちいさな魔法」・「泣いたり笑ったり」・「今日も歩き出す」
(藤吉)座布団100枚やろ。
お湯飲みも100個はいるやろし。
(啄子)200や。
200?お湯飲みはすぐ欠ける。
それぐらい用意しとかなアカンで。
商いは始めが肝心。
確かにそやな。
とにかくはよ儲け出しとくれやす。
あんたのお里から借りたお金返さなアカン。
はい。
ボン!
(歌子)天神さんの近くに店閉める料亭があるんや。
古い座布団店の前にぎょうさん積んどったさかいただ同然で手に入るで。
そらありがたい話ですな!着いたで!
(万丈目)へえ!おおきに。
あとはやりますよって。
あっそや湯飲みどうしよ。
古なったお湯飲みを譲ってもらえへんかさっきの料亭前で片っ端から聞いてきます。
もっぺん行くんか?は〜えらい馬力やな。
さっすがごりょんはん始末がすごい。
(藤吉)色もんの芸人はなんとか頭数はそろいそうやが問題は落語や。
落語?寄席いうたらやっぱり落語や。
色もんだけではどうにもならん。
当てはありますのん?なんとか探してくるわ。
その数日後
噺家見つかったで!ホンマか!和泉家玄白師匠や。
大看板やないけどうちみたいな端席に出てくれるだけでもありがたいわ。
皆さんどうかよろしゅうお願い致します!よっ!頼むでみんな!寄席の名前を決めんと。
付けたい名前あるか?これ。
それ俺があげた…。
この鳥のように小さい羽で一所懸命風に乗って大阪中に笑い声を広めてくれたら…。
(太鼓の音)風鳥亭開業しました!本日初日でっせ!10銭で和泉家玄白師匠の落語が見られますえ。
医者から噺家になった変わり種や。
そらオモロそうやな。
こちらお二人さんご案内!
(一同)おおきに!
(てんキース)3人さんご案内!
こうしていよいよ初日を迎えました
大黒さ〜ん!
ところが…
もう引っ込め!はよう落語出せ!玄白師匠はまだ来んか。
お見えになりました!よろしゅうお願いします。
(玄白)「ぎょうさんの着物や人形がつってありますな」。
「子どもさんを亡くさはった方が涙の種になるというので…」。
師匠いうからどんなもんやと思たら…。
全然ウケとらん。
オモロないでヤブ医者!ヤブより前のタケノコや。
もう帰りまひょ。
待っとくれやす!最後まで見てもろたらきっと笑えます。
笑えるかあんな安もん。
もっと銭あったらなこういうホンマもんの落語が聴きたいわい!気分悪い!お前らのやり方が悪いんや!すんまへん!大体何でこんなカス芸人らと同じ板に乗らなアカンねや!こんな端席二度と来るか!
残った芸人4人だけでなんとかやりくりしなければならなくなりました
また同じ芸人!アカン!アカ〜ン!
(栞)まだ入れますか?は…伊能さん!?新しい寄席ができたと聞いてどんなものか見に来たんだ。
てんどちらさんで?伊能栞です。
少し興味があってね。
「財政難や言うて人民におねだりしてたそうやね」。
あんなお人が何の興味があるいうんや。
売れっ子の噺家をつかまえてくる?つかまる訳ないやろ!何でです?小さな端席に出たら噺家の格が下がってしまうんや。
その上今演芸の世界を真っ二つに割る戦争が起きててな。
片や当代随一の噺家喜楽亭文鳥を筆頭に落語の伝統を守る伝統派。
文鳥さん?あっ片や寺ギン率いるオモロかったら何でもありのあっオチャラケ派!2つの派閥でどっちが上や下や言うてケンカしてんねん。
そやけどお前ら人気の噺家と同じ高座に立ちとうないか?俺はこの小屋にお客さんもっと集めてお前らの芸を見てもらいたいんや。
風鳥亭はうちらの夢をかなえる小屋いうだけやありまへん。
皆さんの夢をかなえる小屋でもあってほしいんです。
みんなで一緒にこの寄席を育ててやっておくれやす。
伝統派の誰がそんな10銭小屋みたいなもんに出ますかいな。
大体やでこのうなぎ特上やのうて並やがな。
並の噺家に頼むんやったらなオチャラケ派に言いなはれ。
お願いします!
(寺ギン)どの面下げて来たんじゃ。
伝統派が出よらんから困って来ただけやろ?芸に上等も下品もない。
安うてオモロイもん売るだけや!お前にかかずらぁってる暇はないねん。
また来てもろてありがとうございます。
一杯どうですか?どうして寄席なんか?たくさんの人を笑顔にしたいからです。
あの芸人たちで?それなりのええ噺家に出てもろたらきっとうまくいくと思てます。
何で落語にこだわるんだ?落語は芸のてっぺん。
出てる噺家の格で寄席の格も決まる。
あいつら芸人のためにもええ噺家に出てほしいんです。
くだらないなぁ。
一番大事なのはお客じゃないか。
そらもちろんやけど…。
お客は寄席の格や君らの夢なんてどうでもいい。
ただ笑えさえすればね。
落語がどうのこうのとそこにこだわる意味が分からないな。
俺は落語が好きや。
落語は面白い。
芸の事知らんあんたにとやかく言われる筋合いはあらへん。
そんな甘い考えでおてんさんを幸せにできると思ってるのか。
何やと?何すんねん!・
(話し声)伊能さん!?何で…。
活動写真?西洋の活動写真を日本中に広めるんが夢なんや。
親からはこっぴどく怒られて勘当同然だけどね。
あの伊能製薬のご次男が親の反対を押し切ってまでご自分の夢を?ご立派ですな。
俺かて日本一の席主になるっちゅうご立派な夢があるんや。
当てにしてまっせ。
何やそれもう〜。
お代わり。
へ?藤吉さん!藤吉さん。
僕の母親もよくそうやって夜なべしていたよ。
僕は本家の子じゃない。
東京の妾の子だ。
母は活動写真が好きでね。
だからいつか自分の手で母の好きな活動写真を作りたい。
僕の作った活動写真で日本中を感動させたい。
うちらは日本中を笑わせます。
どっちが先か競争だ。
へえ。
藤吉君に伝えておいてほしいんだ。
文鳥師匠に会ってみないかって。
そんな…どうやって?藤吉はん!この落語会のビラ見とくれやす!「後援伊能製」…。
昨日伊能さんが帰りしなに文鳥師匠に会うてみぃひんか言うてくれはって。
は!?文鳥師匠いうたら落語の神様。
俺が尊敬する一番好きな噺家や。
そんな人に俺ごときがどの面下げて会えるんや。
あんじょうお気張りやす。
伊能製薬の正月行事にもよく顔を出してくれてたんだ。
ひゃ〜。
辛いものが大好きらしくて子どもの僕に「日本一辛いトンガラシカレーを作った。
勇気があるなら食べてみろ」ってむちゃくちゃ言ってきてこわごわ食べたらなんと中身は甘いカレー。
文鳥さんは大の甘党だったっていうオチだ。
へえ〜。
(文鳥)ボンボン大きなられましたなぁ。
実はこちらの風鳥亭さんに伝統派の落語家さんを出して頂けないかというお願いでして。
寄席にはそれぞれその小屋の色がある。
あんたんとこの小屋の色は何や?えっ…。
その色を作ってから来るのが筋や。
つてを頼って来るのは筋とちゃうで。
あ〜でも悔しいなぁ。
え?甘いカレーの仕返しをしようと思ったんだが文鳥さんの方が何枚もうわてだった。
え?何や栞君はもっと雲の上の人かと思ってたんで。
ええ?金持ちのご子息で思いどおりにならん事は何一つないて。
おてんさんは君を選んだじゃないか。
ああ…。
人生なんてうまくいかない事ばっかりだ。
でもこれだけはやり遂げたぞっていう生きた証しが欲しいよな。
ああ。
百面相にものまねもありまっせ。
前に見たけどさっぱりオモロなかったで。
面白おまっせ。
わろていきまへんか?どないですか!
(岩さん)えらいこっちゃ!アサリが消えた!「ぜぜこが入らん」言うて神戸の新開地の小屋に行ってもうた!え〜っ!あの子がしっかりせんさかいいつまでたってもあんたは夜なべやめられへんなぁ。
寄席で一緒に働くんは楽しいですさかい。
疲れたなんて思わへんのです。
もう休み。
無理しすぎや。
明日までにこれをみんな仕上げなアカンのです。
うちなら大丈夫ですさかい。
どないしよ!内職が…。
針仕事はもうやめなはれ。
え?わてがまたてんびん棒担ぐさかい。
あんたの仕事は藤吉郎の手綱を締めて寄席を繁盛させる事や。
心して頑張ります。
離せ!この裏切りもんが!わいも食うていかなアカンねん。
あんたらの夢にいつまでもつきおうてはおれんのや!お前もさっさと見切りつけた方がええで。
ここはもう…終わりや。
終わりやありまへん。
うちがこの寄席を守ってみせます!残ったみんなももう限界です。
そやけど休んだら余計に…。
一緒にもう一度文鳥師匠のとこお願いに行きましょ。
ご本人に出て頂くんです。
はあぁ!?ホンマにこんなカレー作ったくらいで文鳥師匠が会うてくれんのか?ただのカレーやありまへん。
甘っ!うまいなぁ。
だしもしっかりきいてるししかも…辛いわ。
そやけどこのうどんでコロッといくほどわては甘うないで。
うちの噺家を出すのは諦めたんやないんか?今日は文鳥師匠に出てもらえないかと。
わてか?はい。
こらオモロイ事言わはるわ。
子どもの頃から文鳥師匠の落語が好きで特に「時うどん」が大好きで大好きで。
ようまねしました。
(うどんをすする音まね)「ひっぱりな!そない引っ張ったらだしがこぼれるやないかい!」。
そやけどうちの近所の人らは師匠の「ひっぱりな」を知らんのです。
今師匠が出てはる寄席は敷居が高すぎてホンマに面白い落語を聴く機会がないんです。
お願いします!たった一回でええ席主として悔いのない番組を作って天満の町を歩いてる人らに師匠の落語をその目ぇで見てもらいたいんです!うちが初めてわろた芸はお祭りで見た落語でした。
笑いってええな芸人さんてすごいなぁ思て…。
(笑い声)そやからうちは女子はんらにもお子たちにもみんなにわろてもらいたいんです。
あんたんとこの小屋が目指す色はそういう事か?はい。
伝統派でもオチャラケでもない…。
落語のためやと言わはるんやったら…。
一回きりやで。
カレーうどんの礼や。
ありがとうございます!ありがとうございます!文鳥師匠が風鳥亭に!?嘘や!嘘や嘘や!おおきに。
しかし一回こっきりではしかたがない。
これを利用しよう。
伝統派の大看板文鳥が名もなき小さな寄席の席主の情熱に打たれてその高座に上がる。
その夢物語を大々的に書いてもらうんだ。
間もなく札止め!入ってってや!失礼しますすんまへ〜ん。
ちょ…ちょっと押しないな!
(楓)こんな端席にこんなに人が集まったいうだけでええ記事になるんとちゃいますか?
(拍手と歓声)「百年目」やって!今日はめったにやらんもんを一つやらしてもらいます。
(どよめき)
(すする音まね)「ええだし出てるがなこれ」。
「ひっぱりな!」。
(笑い声)「ちゃんと半分残しといたる」。
「ホンマに半分残しといてや」。
「残しといてや」。
「昨夜とちょっとも変わらんようにやって1文ごまかしたんねん。
ひっぱりな〜!」。
(笑い声)「ひっぱりな〜!そないにこのうどんが食いたいか!何っ食いたい?食いたけりゃ食え!食わいでか〜!」。
「気色悪い人やなこの人」。
(笑い声)「誰ぞ人通らんかいなぁ」。
(拍手と笑い声)
(藤吉)師匠おおきにありがとうございました!ありがとうございました!うどんは冷めたらまずい。
寄席も同じや。
ここからどうやって味付けしていくかはあんたらの…これやで。
肝に銘じておきます。
またいつか辛〜いうどんをつるっとすすりたいけどなぁ。
へえ!そん時は舌がしびれるようなもっと辛い辛いおうどんご用意致します。
ハハハハハハハハハハ。
いやしかし「時うどん」とはびっくりしましたわ。
てんちゃん!楓さん!?あ〜どないしはったん?うち記者になったんや。
職業婦人として働きながら歌人目指してる。
すごいわぁ。
いやあんたらこそすごいわ。
おっきい記事書くさかい楽しみにしててな。
「風鳥亭に喜楽亭文鳥が出演す!」。
よし!大阪中の話題やで!
(一同)万歳!この記事を読んで居ても立ってもいられない男がいるはずだ。
・
(寺ギン)ごめん。
では。
あんたんとこに芸人出したるわ。
(2人)え?伝統派に庶民の味方気取りされたらたまらん。
うちが専属の太夫元なったるで。
(小声で)伊能さんの言うてたんは…。
ここまで読んでたんや。
どないする?「安うてオモロイもんがええ芸や」。
それは俺らも同じ気持ちです。
ほなら7分3分や。
そちらさんの取り分が3分なら文句ありません。
アホ言うな!わしが7分や。
(2人)え?それ以外は認めん。
あっいや…。
(亀井)えらいやられましたなぁ。
いや〜そやけどえらい評判や。
下足番おらんのやろ?わし雇うてくれまっか?
(2人)へ?2017/11/19(日) 11:03〜11:23
NHK総合1・神戸
「わろてんか」一週間 第7週「風鳥亭、羽ばたく」[字]
てん(葵わかな)と藤吉(松坂桃李)は自分たちの寄席「風鳥亭」の開業日を迎えた。だが芸人の力不足は明らかで、日に日に客が減る。そんなとき伊能(高橋一生)が現れる。
詳細情報
番組内容
てん(葵わかな)と藤吉(松坂桃李)は自分たちの寄席「風鳥亭」の開業日を迎えた。だが出演する芸人の力不足は明らかで、日がたつにつれ客足が遠のいてしまう。そんなとき伊能(高橋一生)が風鳥亭に現れる。寄席経営は夢実現のためだという藤吉と、客を第一に考えるべきと言う伊能の議論は白熱しケンカになるが、思いをぶつけ合ったあと二人は仲良くなる。後日藤吉は、伊能の計らいで有名落語家の文鳥(笹野高史)に会うことに。
出演者
【出演】葵わかな,松坂桃李,大野拓朗,前野朋哉,岡本玲,枝元萌,兵動大樹,藤井隆,内場勝則,笹野高史,高橋一生,鈴木京香
原作・脚本
【作】吉田智子
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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