シャケと一緒にシャケボールで遊ぶ時、廊下の南北を僕とシャケ交互に行ったり来たりしている。
南から北に投げたシャケボールをシャケが追いかけ、北から南に投げたシャケボールをシャケが追いかける。そんなことをひたすら繰り返しているのである。
つまり、廊下の南北に分かれた僕とシャケが行ったり来たりしているのであり、廊下の真ん中ですれ違う時、僕はシャケの頭を撫でる。
なんか南北の廊下などという表現をすると、時代劇に出てくる広大な屋敷の廊下のようなものを想像される方がいるかもしれないが、もちろんそんな長い廊下であるはずはなく、驚くほど短い廊下である。
その廊下を、僕とシャケはシャケボールを追いかけて行ったり来たりしているのである。
僕はまた、別の行ったり来たりもやっている。
それは、僕は単身赴任生活をしているので、毎週、福岡と単身赴任先を行ったり来たりしている、ということである。
こんな行ったり来たりをもう8年ほど続けている。
以前は、福岡に用事などがある時だけ帰る、という具合だったが、最近はほぼ毎週帰っている。
なぜかというと、母が認知症になったことにより、帰らざるを得なくなったからである。
そして、その母の認知症にどう対処するか、ということについて、父とのやりとりがまったく噛み合わず意見や会話が行ったり来たりして交わることがない。
父とのやりとりが僕はもっとも疲れる、心底。
そんな時、僕はシャケに向かってこうつぶやくのである。
”疲れたよ、パトラッ…、いや、シャケ”