東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 特集・連載 > 言わねばならないこと > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【言わねばならないこと】

(103)まず憲法を知り、周りに伝える 弁護士・太田啓子さん

写真

 衆院選の結果を受けて憲法改正の発議がされ、国民投票へという流れになる。その前に、まず憲法とは何かを学ぶための「憲法カフェ」を開いている。二児の母だけれども、子どもが生きていく環境を考えると不安と恐怖が強い。「子どもにいい学校を」と思うのと同じ回路で「社会をよりよくしたい」と動機を話すと同世代が興味を持ってくれる。

 カフェではまず憲法と法律の違い、立憲主義について話す。「国民は憲法を守らなければいけない、○か×か」。答えは×で、「国民ではなく国が憲法を守らなくてはいけない」というと「えーっ」て。あまりに知られていない。九条以前の問題だ。

 自民党改憲草案も解説する。一三条「個人として尊重される」の個が取れたのは偶然ではなく、(憲法が保障する)個人主義の行きすぎが社会病理を生んでいるという発想。これは個人主義への攻撃であり、全体より個人を下に置く発想は基本的人権の尊重の対極にあると。

 今回の九条改憲も、単に自衛隊を「明記するだけ」なんてことはあり得なくて、安保法制によって海外で事実上「戦争」ができるようになってしまっている「新自衛隊」を明記することなんですよと。

 安倍晋三首相の憲法観には危うさを感じる。立憲主義が嫌いなんだろう。彼は自分が悪いことをするはずない、縛られる必要はないと思っているのでは。権力の暴走を恐れなければならないという発想が乏しい。

 私たちは流されないで、自分の頭で考えて意見を持つことが大事。まず知ること、そして発信者になって周りに伝えてほしい。趣味のサークルで勉強会を提案するとか。人対人で熱を伝える草の根の活動をみんなでやる。それが王道。焦りはあるが、何もやってこなかったよりずっと押し返していると思いますよ。

<おおた・けいこ> 1976年生まれ。国際基督教大卒。2002年弁護士登録。神奈川県弁護士会、「明日の自由を守る若手弁護士の会」所属。性犯罪問題などで活躍。

 

この記事を印刷する