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「銀行消滅」は、こんな順番でジワジワ進行する

みずほ「大量人員削減」で現実味
山崎 元 プロフィール

「AI」による置き換えを軸に、銀行員の削減順序を想像すると、

(1) 顧客に接触しない事務処理
(2) コールセンター等の定型的な顧客対応処理
(3) 支店窓口等の定型的顧客対応
(4) 個人向け等の小口ローン
(5) 法人向け融資

といった順だろうか。

もちろん、個別の業務の置き換えだけでなく、店舗の統合・削減も進むだろう。「いつかは(せめて)支店長に」という、かつて多くの銀行員が胸に抱いた人生の中間目標はますます狭い道になるということだ。

 

逆に、後まで残りそうなのは、人をシステムに置き換えるわけなので、システム部門、特定の富裕層に食い込んで対人的サービスを提供するプライベート・バンク的な業務、そして、銀行員にとって「人生の預金先」とも言える人事部門だろうか。

究極的には、銀行業務全体が仮想通貨のようにプログラムされて、銀行員は純粋に人事にだけ励むような風景が目に浮かぶが、もちろん、そこに至るまでには長い年月が必要なので、現在の銀行員が直ちに心配するには及ばない。

しかし、読者のご子息世代にあって、これから銀行に就職することは、相当にリスキーな選択であるように思われる。

生き残るのは、スルガ銀行か、三菱UFJ信託か

AIによる多くの銀行業務の置き換え、経済のAI化が今後進めるに違いない貧富の格差の拡大を考えると、銀行及びその周辺で有望に思えるのは、AIと機械化によるコスト削減を進めつつ、ネットに適応したビジネスモデルを構築して広い顧客層を相手にする、現在のスルガ銀行の将来像として想像されるようなビジネスか、或いは、富裕層向けに特化したビジネスだろうか。

但し、ネットの世界には、各都道府県に存在する地方銀行が棲み分けるような余地はないので、同様のビジネスに競争力を持てない銀行が、スルガ銀行的なビジネスモデルを真似るのは無駄である。

富裕層向けのビジネスに関して興味深いのは、法人向けの融資業務を三菱UFJ銀行に移換する方針を発表した三菱UFJ信託銀行だ。信託銀行の中にあって、法人向けの融資業務は、ある意味ではこれまで本流中の本流の仕事であったこともあり、行内の抵抗は強いのではないかと拝察する。

しかし、もともと信託銀行は、顧客一人当たりの預かり資産が大きいし、法人向けの融資業務と資産運用業務の間には深刻な利益相反の問題があった。

同行が資産運用と富裕層向けのビジネスに特化するということであるなら、この戦略は他の金融グループの一歩先を行く「当たり!」かもしれない。また、信託銀行の中に残る人こそが将来の当たりくじを引くことになるのではないだろうか。

もっとも、個々の富裕顧客向けに適合した複合的なサービスの提供を考える場合、これに関わる個人は、銀行であろうと信託銀行であろうと、「行員」である必要が最早ないかもしれない。税理士なり、FP(ファイナンシャル・プランナー)なりで、高度なスキルを持った者が個人・法人を問わずコンサルタントとして独立して、顧客の利益の立場から、AI化が進んで残った銀行の「機能」を利用すればいい。

今月17日は、大手行の先陣を切って北海道拓殖銀行が経営破綻した日である。あれから20年が経過した。今から、20年後に、今の銀行がそのままの形で存続しているとは、到底思えない。銀行員消滅は、「無い」とは言い切れない想像だ。