中高生の20% 「死にたい」と時々思う 支援の仕組み必要

中高生の20% 「死にたい」と時々思う 支援の仕組み必要
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「死にたいと思ったことがときどきある」という中学生と高校生が5人に1人に上るという調査結果を大学の研究グループがまとめました。専門家は「“死にたい”という言葉は、“助けてほしい”という意味だと社会全体で受け止め、支援する仕組みが必要だ」と指摘しています。
この調査は、久留米大学病院の小児科医、永光信一郎准教授が厚生労働省などと去年10月と11月に初めて実施し、全国の中学生と高校生2万2000人余りから回答を得ました。

この中で、「あなたは死にたいと思ったことがあるか」と尋ねたところ、「常に思う」が2.1%、「ときどきある」が23.7%でした。また、「過去に試みた」と答えた人の割合は5.4%でした。

その理由となる悩みについて複数回答で聞くと、多い順に「将来の進路」、「成績」、「身体」、そして「友達との関係」でした。

さらに、それぞれの悩みを誰に相談しているのか尋ねると「SNSやインターネットの掲示板」という回答が、「家族」よりは少なかったものの、「友達や先輩」、さらに「学校や塾の先生」より多くなる傾向にありました。

調査した永光准教授は「自殺を教育で扱うと寝た子を起こすという固定観念を捨てて、多くの機関が連携して対策にあたる必要がある」と話しています。

ネット上に自殺を考える人の相談サイトを立ち上げているNPOの代表、伊藤次郎さんは「“死にたい”という言葉は、“助けてほしい”という意味だと社会全体で受け止め、支援する仕組みが必要だ」と指摘しています。

「死にたい」その本音は?

若者たちはいつ、どんな思いでインターネットのツイッターに「死にたい」と書き込むのか。
夜の渋谷の繁華街で彼女たちの本音を聞きました。

埼玉県の大学に通う女子学生です。
過去にツイッターに「死にたい」と書き込んだのは、友達とのトラブルによるストレスを発散するためだったといいます。

女子学生は「SNSでしか書けなかったり、誰にも言えなかったりした。でも、書いたことで、吐き出せたのかなと思う」と話していました。

都内の19歳の女子学生も、友達との人間関係などに悩むと頻繁に「死にたい」と書き込むといいます。

女性は、「誰も信用できないと感じると、誰にも言えずにつぶやきます。助けてほしいという気持ちでツイートします」と話していました。

さらに、彼女たちの話からSNS上の人間関係を頼りにしている実態も見えてきました。

都内の大学に通う21歳の女性は、ツイッター上の友人と受験や就職、さらに両親の離婚などについても相談するといいます。

そんな友人について女性は、「現実の友人は、気が合わなくても毎日顔を合わせないといけない。だから、うまいこと気を遣う必要があります。でもネットであれば、いつでも関係が切れるから、本当のことを話せるんじゃないかと思います」と話していました。

また、19歳の女子学生はツイッターで知り合った人と直接会ったことがあるといいます。
女子学生は「共感してほしいという思いでつぶやいて、いいね、をしてくれた人からダイレクトメッセージが来て、1人でいたくないと会ったことがあります」と話しました。

一方で、座間市の事件について聞くと「私自身は全然抵抗なく会ったのですが、今回、同年代の女の子が殺されたのはすごく残念です。安易に簡単につぶやかないほうがいいなと思いました」と話していました。

家族・友人 “異変”気付かず

神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件で、被害者はツイッターに「死にたい」などと自殺願望を書き込んだことなどがきっかけで事件に巻き込まれたと見られています。

しかし、被害者の多くは行方不明になる直前までふだんどおり学校やアルバイトに行くなど、家族や友人も“異変”に気付いていませんでした。

高校によりますと、被害者のうち福島市の高校3年生だった17歳の女子生徒は、以前、家出をしたり学校の面談で進路についての悩みを打ち明けたりしたことがあったということです。

しかし、行方不明となる前日には高校の体育祭に参加するなど、ふだんどおり通学していたということです。

同じ高校に通う友人は「学校で先生に相談しているような姿を見たことがあり、何か悩みがあるのかなと感じていましたが、私たちの前ではふだんどおりふるまっていたのでそこまで深刻そうには見えませんでした」と話しています。

また、群馬県邑楽町の高校1年生だった15歳の女子生徒も1学期は1日も休まずに登校していたということで、同じ高校に通う友人は「夏休みに入る前、最後に会った時は、ふだんと変わらない様子だったし、その後LINEでメッセージを送った時も明るく返してくれました」と話しています。

しかし、学校によりますと2学期の始業式の朝、本人から「体調が悪いので休む」と連絡があり、その後、行方がわからなくなったということです。

絵画教室で女子生徒を指導していた男性は「8月末までレッスンに来ていた。悩みを抱えていたり、死にたいと考えていたりしている様子は全くなかった」と話しています。

また、埼玉県所沢市の大学2年生だった19歳の女性や横浜市の25歳の女性も行方不明になる直前までアルバイト先で勤務していました。

横浜市の女性の母親は「行方がわからなくなる前はふだんと変わらない様子で悩みを抱えているようにも見えなかった。アルバイトを始めて笑顔も増えたとほっとしていたやさきの出来事で、『なぜ』という気持ちでいっぱいです」と話していました。

NPO代表「“死にたい”は助け求めるSOS」

悩みがある人たちのため相談サイトを運営しているNPOの代表は、ツイッターに書き込まれる“死にたい”という言葉には“生きたい”という意味が込められているとして、「若者のニーズに合った相談窓口の整備が急務だ」と指摘しています。

東京のNPO「OVA」は、若者の自殺を防ぐため、4年前からネットの検索サイトに「死にたい」とか「孤独だ」などと書き込む人たちの相談を受けています。

メールによる相談件数は1年間におよそ150人に上るといいます。

代表の伊藤次郎さんは、「“死にたい”というつぶやきは、誰かに助けを求めるSOSだと言える。“生きたい”からこそ、つぶやいていると感じる」と指摘しました。

そのうえで、支援の在り方については「現状では、全く受け皿の用意が足りないと思う。彼らがふだん使っているインターネットで相談できるようにするなど、若者のニーズに合った相談窓口を作っていくのが急務だ」と話しています。

中高生の20% 「死にたい」と時々思う 支援の仕組み必要

「死にたいと思ったことがときどきある」という中学生と高校生が5人に1人に上るという調査結果を大学の研究グループがまとめました。専門家は「“死にたい”という言葉は、“助けてほしい”という意味だと社会全体で受け止め、支援する仕組みが必要だ」と指摘しています。

この調査は、久留米大学病院の小児科医、永光信一郎准教授が厚生労働省などと去年10月と11月に初めて実施し、全国の中学生と高校生2万2000人余りから回答を得ました。

この中で、「あなたは死にたいと思ったことがあるか」と尋ねたところ、「常に思う」が2.1%、「ときどきある」が23.7%でした。また、「過去に試みた」と答えた人の割合は5.4%でした。

その理由となる悩みについて複数回答で聞くと、多い順に「将来の進路」、「成績」、「身体」、そして「友達との関係」でした。

さらに、それぞれの悩みを誰に相談しているのか尋ねると「SNSやインターネットの掲示板」という回答が、「家族」よりは少なかったものの、「友達や先輩」、さらに「学校や塾の先生」より多くなる傾向にありました。

調査した永光准教授は「自殺を教育で扱うと寝た子を起こすという固定観念を捨てて、多くの機関が連携して対策にあたる必要がある」と話しています。

ネット上に自殺を考える人の相談サイトを立ち上げているNPOの代表、伊藤次郎さんは「“死にたい”という言葉は、“助けてほしい”という意味だと社会全体で受け止め、支援する仕組みが必要だ」と指摘しています。

「死にたい」その本音は?

若者たちはいつ、どんな思いでインターネットのツイッターに「死にたい」と書き込むのか。
夜の渋谷の繁華街で彼女たちの本音を聞きました。

埼玉県の大学に通う女子学生です。
過去にツイッターに「死にたい」と書き込んだのは、友達とのトラブルによるストレスを発散するためだったといいます。

女子学生は「SNSでしか書けなかったり、誰にも言えなかったりした。でも、書いたことで、吐き出せたのかなと思う」と話していました。

都内の19歳の女子学生も、友達との人間関係などに悩むと頻繁に「死にたい」と書き込むといいます。

女性は、「誰も信用できないと感じると、誰にも言えずにつぶやきます。助けてほしいという気持ちでツイートします」と話していました。

さらに、彼女たちの話からSNS上の人間関係を頼りにしている実態も見えてきました。

都内の大学に通う21歳の女性は、ツイッター上の友人と受験や就職、さらに両親の離婚などについても相談するといいます。

そんな友人について女性は、「現実の友人は、気が合わなくても毎日顔を合わせないといけない。だから、うまいこと気を遣う必要があります。でもネットであれば、いつでも関係が切れるから、本当のことを話せるんじゃないかと思います」と話していました。

また、19歳の女子学生はツイッターで知り合った人と直接会ったことがあるといいます。
女子学生は「共感してほしいという思いでつぶやいて、いいね、をしてくれた人からダイレクトメッセージが来て、1人でいたくないと会ったことがあります」と話しました。

一方で、座間市の事件について聞くと「私自身は全然抵抗なく会ったのですが、今回、同年代の女の子が殺されたのはすごく残念です。安易に簡単につぶやかないほうがいいなと思いました」と話していました。

家族・友人 “異変”気付かず

神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件で、被害者はツイッターに「死にたい」などと自殺願望を書き込んだことなどがきっかけで事件に巻き込まれたと見られています。

しかし、被害者の多くは行方不明になる直前までふだんどおり学校やアルバイトに行くなど、家族や友人も“異変”に気付いていませんでした。

高校によりますと、被害者のうち福島市の高校3年生だった17歳の女子生徒は、以前、家出をしたり学校の面談で進路についての悩みを打ち明けたりしたことがあったということです。

しかし、行方不明となる前日には高校の体育祭に参加するなど、ふだんどおり通学していたということです。

同じ高校に通う友人は「学校で先生に相談しているような姿を見たことがあり、何か悩みがあるのかなと感じていましたが、私たちの前ではふだんどおりふるまっていたのでそこまで深刻そうには見えませんでした」と話しています。

また、群馬県邑楽町の高校1年生だった15歳の女子生徒も1学期は1日も休まずに登校していたということで、同じ高校に通う友人は「夏休みに入る前、最後に会った時は、ふだんと変わらない様子だったし、その後LINEでメッセージを送った時も明るく返してくれました」と話しています。

しかし、学校によりますと2学期の始業式の朝、本人から「体調が悪いので休む」と連絡があり、その後、行方がわからなくなったということです。

絵画教室で女子生徒を指導していた男性は「8月末までレッスンに来ていた。悩みを抱えていたり、死にたいと考えていたりしている様子は全くなかった」と話しています。

また、埼玉県所沢市の大学2年生だった19歳の女性や横浜市の25歳の女性も行方不明になる直前までアルバイト先で勤務していました。

横浜市の女性の母親は「行方がわからなくなる前はふだんと変わらない様子で悩みを抱えているようにも見えなかった。アルバイトを始めて笑顔も増えたとほっとしていたやさきの出来事で、『なぜ』という気持ちでいっぱいです」と話していました。

NPO代表「“死にたい”は助け求めるSOS」

悩みがある人たちのため相談サイトを運営しているNPOの代表は、ツイッターに書き込まれる“死にたい”という言葉には“生きたい”という意味が込められているとして、「若者のニーズに合った相談窓口の整備が急務だ」と指摘しています。

東京のNPO「OVA」は、若者の自殺を防ぐため、4年前からネットの検索サイトに「死にたい」とか「孤独だ」などと書き込む人たちの相談を受けています。

メールによる相談件数は1年間におよそ150人に上るといいます。

代表の伊藤次郎さんは、「“死にたい”というつぶやきは、誰かに助けを求めるSOSだと言える。“生きたい”からこそ、つぶやいていると感じる」と指摘しました。

そのうえで、支援の在り方については「現状では、全く受け皿の用意が足りないと思う。彼らがふだん使っているインターネットで相談できるようにするなど、若者のニーズに合った相談窓口を作っていくのが急務だ」と話しています。