「働き方改革」はなぜ期待外れになったのか

ダメ会議撲滅会議自体がダメ会議だった皮肉

「生活」ではなく、「生きるか死ぬか」の「ライフ」が議論されてしまった(撮影:今井 康一)

副作用を議論しない政策論議は不誠実

衆院選で掲げられた「教育無償化」は、無償化とはいえない代物だった。今後の議論で修正される可能性はあるが、少なくとも蓋を開けてみた時点では、パッケージと中身が違う。残念なことに、私たちは最近そんなことに慣れっ子になってしまっている。

「働き方改革」もそうだった。「ニッポン一億総活躍プラン」が発表されたのが2016年6月。主たるメッセージは、男女ともに仕事と子育てを両立できる社会を目指すという宣言だった。その流れを受けて9月には「働き方改革実現会議」が設置された。しかし論点はすぐにすり替わった。

「ニッポン一億総活躍プラン」の趣旨に沿うならば、「働き方改革」で議論されるべきは、男女ともに仕事と家庭が両立できる、ワークライフバランス重視の働き方であるはずだ。しかし会議の早々から論点は過労死ラインを巡る残業時間の上限規制になってしまった。「生活」を意味する「ライフ」ではなく、「生きるか死ぬか」の「ライフ」である。話の次元が違う。

これに異議を唱えるため、仕事と家庭の両立に葛藤を抱える父親たちの立場から『ルポ父親たちの葛藤』(PHPビジネス新書)を書いた私と、雇用・労働問題の専門家である千葉商科大学専任講師の常見陽平氏が、2016年9月8日にトークイベント「俺たちの働き方改革ナイト」を開催した。2017年3月28日には参議院議員会館で「働き方改革に物申す院内集会」を実施した。

その両方で私たちが訴えたことは、「働き方改革」の「副作用」にも目を向けようということである。

長時間労働の是正、雇用の流動化、正規・非正規の格差解消、どれも賛成である。

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  • NO NAME516643e33ed9
    >日本国民が不便を受け入れる所から始めないと。

    多くの人は不便を受け入れないなんて言ってないんだけどな。例えばコンビニとか無料配送とか。ほとんどのユーザーはそこに便利なサービスがあるから使ってるだけで、無くなれば無くなった中で便利なものを使い始めるだけだよ。
    始まる前から24時間コンビニを是非!通販無料配送を是非!何て声高に言ってたか?

    勝手に自分達に辛い設定しといて勝手に自滅して、国民が求めるから!とか笑っちゃうよ。

    受け入れるも何も、サービスが無くなったら受け入れるしかないんだから企業が勝手に減らせばいい。現に某百貨店が年末年始の営業時間を一日減らしたが、営業に大きな影響でなかったらしいぞ?
    そういう意味でこの記事の最後の意見に賛成。本来、こんなことは自分達で考えてやるべきだ。それが出来ずに国に頼ろうとしてる現状が情けない。
    up55
    down3
    2017/11/17 08:49
  • NO NAME006f849fbacd
    働き方改革なんてなんて遠回りなんてこと言ってないで、
    労基法の遵守、徹底、取締、罰則強化、
    してください。法治国家だろ?
    up40
    down1
    2017/11/17 09:41
  • NO NAME9ac615b290fd
    たまたま別ニュースで見たのですが、先日過労で死人が出た新国立競技場の工事現場に過労死対策として医師が常時待機するって話になったようです。新国立競技場と言えば、斬新的過ぎるザハ案が良い悪いとかいってワイドショーが大盛り上がりした挙句に全部やり直しになった例のアレですね。
    本来、発注側がちゃぶ台ひっくり返したのだから「工事は予定通りには完成しません」という結果を受け入れるのが当然。しかし、日本は現場の人間が泥かぶって何とかしようとして、本当に人が死んでしまう。そして死人が出たのに働き方を見直すのでなく、医者付けとけば良いと言う発想がもうね…。
    不便を受け入れるのもそうですが、「できないものは出来ない」という話も受け入れないと。次は恐らく豊洲で死人が出ます。
    up26
    down1
    2017/11/17 11:56
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