こんにちは、ブクログ通信です。
小学館が本日2017年11月17日より無料で全文公開し、タイトルを公募する企画『小説X』を開始しました。現在、小学館『小説丸』サイトで全文公開のほか、Smartnews読書チャンネルで連載配信、またアマゾンKindle、楽天Koboなど、各電子書籍ストアでも全文無料版を配信中です。
この『小説X』を読んだ読者から、Twitterやネットフォームを通じて『小説X』のタイトルを募集し、5つのタイトル候補を決めたあと、ユーザー投票によって、正式にタイトルを決定してしまうというこの企画。採用された方には豪華特装本+賞金5万円、ノミネート作品にも豪華特装本+賞金1万円と、太っ腹すぎる!なにやらただごとではありませんね……。
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今回ブクログ通信では、渦中の『小説X』の著者である第三回メフィスト賞受賞作家、蘇部健一さんと担当編集者さんへ事前にインタビュー実施いたしました!切実すぎた『小説X』企画の舞台裏!今回の企画から明らかになった、メフィスト賞受賞作品『六枚のとんかつ』の秘密とは?!そして蘇部さんのユニークなお人柄に迫ります!
取材・文・撮影/ブクログ通信 編集部 持田泰 猿橋由佳
『小説X』著者・蘇部健一さんとは?
1961年東京都生まれ。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業。1997年『六枚のとんかつ』にて第三回メフィスト賞受賞デビュー。「バカミス」(※日本国内における推理小説の分類のひとつ。「おバカなミステリー」もしくは「バカバカしいミステリー」の略語)の代表作である『六枚のとんかつ』はその「ばかばかしさ」で賛否割れるものの絶賛の声も多い。「ミステリー界の異才」「異能作家」とも呼ばれる。デビュー作の系列に属するアイデア重視の推理短編の他、さまざまなジャンルを執筆刊行している。
単刀直入に某社企画へ感謝
―この度は企画開始おめでとうございます!『小説X』の試みについてのご質問の前に、気になることがありまして。この『小説X』という企画名で「タイトル未定でWeb・電子書籍で全文公開し、ユーザーにタイトルを募る」という企画をお伺いした際に、「これはどっかで見たことあるなあ」って思っていまして。某社さんのあの『ほにゃららの壺が割れた』企画であるとか。そういった企画をパク…いやなんて言えばいいんでしょうね。
担当編集者(以下担当さん):その某社さんの『ルビンのほにゃらら』の企画は大変おもしろいと思ったので、影響はもちろん受けてます。
―そうですよね。ええとつまり…インスパイア?ですよね?
『小説X』著者・蘇部健一さん(以下蘇部さん):はい。でも『ルビンの壺が割れた』(※)があったから今回の企画も生まれたので、私としては『ルビンの壺が割れた』さまさま、「宿野かほる」さまさま、です。
―こっちは伏せてはいるタイトルも著者名も言い切っちゃいましたね。
蘇部さん:ええ、心から感謝しています。
―取材始まって早々に、インスパイアをもらったみなさんにまっすぐに感謝する、という居直り感は立派かと思います。
※参考リンク:新潮社、すごすぎてコピーが書けない「すごい小説」を発売前に異例の全文公開 Twitter等でのキャッチコピー案募集へ【ねとらぼ 2017/7/15 13:15】
もうひとつ単刀直入に某書店企画へ感謝
―もうひとつ気になるところありまして、『小説X』という企画タイトルも「どっかで聞いたことあるなあ」って思っておりまして。
担当さん:最初「X」から「Q」だとかいろいろ出てきましたけど やはり謎は謎だから「X」にしようと。
―これもタイトルを伏せて販売する『文庫X』(※)という企画を昨年さわや書店フェザン店さん主導で実施して大ヒットになりました。
蘇部さん:そうですね。
担当さん:単純に、そういうビジュアルで見た時に、インパクトがやっぱり。
―わかりやすいですしね。
蘇部さん:さわや書店フェザン店さまさま、『文庫X』さまさまです。心より感謝しています。
―なるほど。スタンスとして「感謝」でいこうと。大事ですね。
※参考リンク:「文庫X」もう読んだ? 書名や著者名隠して販売【日本経済新聞 2016/9/7 12:20】
会社ぐるみの企画
蘇部さん:実際、ここだけの話、もし『ルビンの壺が割れた』企画(以下『ルビン』)や『文庫X』企画がなかったら、小学館さんからこの作品を発表できなかったかもしれないんですよ。僕の前の本がそれほど売れ行きはよくなかったので。そうしたら原稿を読んだ担当さんが小学館デジタル局に持って行ってくれて、『ルビン』『文庫X』みたいな形で出せないかって話をつけてくれたんですよ。
―なるほど。会社ぐるみなんですね。
担当さん:デジタル局で読んですぐ「これはデジタル向きだ」とお墨付きをもらえたんですね。やっぱり一気に読ませられる作品であるという部分もポイントですが、内容を読んでとても読みやすいし、おもしろい、と。
―そうですね。僕もゲラを読ませていただいて、すーっと物語に入っていけて、しかも少しずつ非日常空間に入りこんでいくような不思議な感じを味わえましたね。ちなみにそうなりますと『小説X』企画がある前に、そもそも蘇部さんの小説が手元にあって。
担当さん:そうです。最初に小説があって、タイトルも決まらず危うい状況だったんですが、『ルビン』というおもしろい企画が始まって。だからもし前例がなかったら、逆に「何でそんな怪しいことやるんだ」って蘇部さんから断られたかもしれない。
当初つけたタイトルがネタバレだった
―それが他社とはいえ新潮社さんの前例があったことで、企画もスムースにまとまっていったと。今回は「タイトル募集」はインスパイアされた元ネタの方よりも衝撃的な企画ですが、蘇部さんはこの小説を書きあげていた後で、本当にタイトルに困っていたっていう感じですか?
蘇部さん:最初に決めていたタイトルはあったんですよ。それをふたりの知り合いに読んでもらって、ひとりはいいタイトルだって言ってくれたんですけど、もうひとりはちょっと名前出せないんですけど、某有名ミステリー作家さんで、やっぱりミステリーのプロなんで、タイトルからトリックがわかっちゃったからタイトル変えたほうがいいですよってアドバイスしてくれたんです。
「うっかりしてたなあ」と思ってタイトルを変えたいと担当さんと打ち合わせしながらさまざまにタイトル案出したんですけど、埒が明かなくてですね。決めたタイトルを変えるって難しいですね。
担当さん:ただ今回、こういった形で世に出せたことは幸運で、出版局って大きいことやりたくてもなかなかできないんですけど、デジタル、ネットで接合して新たな試みを実施できて、出版局では考えられないような大きなプロモーションになったので、とにかく蘇部さんとしてもラッキーですね。
―やっぱり、会社ぐるみなんですね。
企画趣意文が自己卑下すぎる
―企画として非常にネット時代・スマホ時代に適った内容ですから、ユーザーとしても読者としても参加しやすいものであろうと思いますが、『小説X』サイトに上がっているこの蘇部さんのメッセージ、これはいうなればこの「企画の顔」に当たる部分かと思います。
担当さん:その直筆もありますよ。直筆がまたいいんです。本当はこちらを載せたかったんです。
―なるほど。たしかに味がある。どこかに「身代金」て言葉が書いてありそうな気がしてきます。その内容(全文はこちら)なんですが、蘇部さんの通常のスタンスなんだと思うんですけど、非常に自己卑下的な所が多すぎだと思うんですね。この内容にちょっと「赤入れ」させていただくと、まず「自称小説家」は、さすがに「自称」ではないんじゃないかなと思うんですけど。
蘇部さん:いや、作家友達と話してて、もし将来、下着泥棒とかで捕まったら、新聞に絶対「自称小説家」って出るよなって言われてたんで、だからやっぱり「自称」かなと。
―ぜひ下着は盗らない方向で頑張っていただきたく。
蘇部さん:でもあんまり本が売れないんで、もう犯罪でも何でも新聞に載りたいくらいの思いはあって、でも重い犯罪だと本を回収されちゃうから下着泥棒くらいならいいんじゃないかなと、ちらっと考えたことあるんですけど。
―おそらく下着でも本は回収されると思いますけども。犯罪は犯罪です。
蘇部さん: ※※※※(某出版社)さんあたりは大丈夫。
―その社名はもちろん伏字にしますね。
担当さん:うーん…小学館は回収かもしれない…。
―「回収かもしれない」でなく、もれなくそうでしょう。
時給1000円の牛丼屋さんでアルバイト生活
―蘇部さんはある意味「謙虚」であるということはいたくわかりましたが、つまりなんでしょうか。過去蘇部さんの作品は何度もボツになったという経緯があるんですか?結果として野良猫は人に懐かないみたいな風に。
蘇部さん:いや、本当いうとロクに書いてなかっただけっていうのはあるんですけど、でも今、本当に出版業界、特に小説は厳しいので、だから前の売上が良くない私に限らず、どの作家さんも新作を出してもらえない状況ですよ。だから本当にみんな厳しいと思います。新作を出すのは。
―なるほど。蘇部さんの前作、小学館文庫の『運命しか信じない!』が出たのは2014年3月ですから3年半の間、新しい作品は書いてなかったということ。
蘇部さん:そうですね。
―そうですか。ちょっと私生活のほうも質問をさせていただくと、趣意文に書かれているように時給1000円の牛丼屋さんでアルバイト中であると。
蘇部さん:はい。
―女性店長に「使えない」と罵られながら、長い期間こういうフリーター生活を。
蘇部さん:そうですね。最近小説出してないから、牛丼屋で2年ちょっと働いています。
―その牛丼屋さんの店長さんを含めて、スタッフさんは、蘇部さんが小説家だということは。
蘇部さん:全然知らないです。
―知らないんですか。じゃあこれでボーンと来たら、ええ!蘇部さんって作家だったんですか?!って。
蘇部さん:いや、バレないと思いますけどね。
担当さん:いやいや、こうやって顔出しして取材を受けていますから!
蘇部さん:もともと影が薄い方なんで。
担当さん:……
―はい。といったわけで周囲への影響はさておき、牛丼屋バイト生活の中で今回久しぶりに小説を出したよ!っていうことですね。
デビュー作、第三回メフィスト賞受賞『六枚のとんかつ』でも実は!
―しかし趣意文では後半に「自分で言うのは嘘くさい」とやはり謙虚に書いてはいますけども、今回は「大傑作」だと胸張られてますね。
蘇部さん:そうですね。今までで一番ラストのインパクトはあるかなとは思っています。
―だけどどうしてもタイトルだけが、いい案が思いつかないという感じですね。
蘇部さん:タイトルは、いいのが出る時は簡単に出るんですけど、出ない時はいくら考えても出ないので。
―タイトルというのは、基本的には作品を書き上げてから決まるもんなんですか?
蘇部さん:ケースバイケースですね。最初から決まってるときもあれば、途中で決まることもありますから。
―今まで蘇部さんの小説ですと、初期は非常にユニークなタイトルでしたよね。まず鮮烈なのがデビュー作でメフィスト賞受賞の『六枚のとんかつ』ですね。
蘇部さん:この『六枚のとんかつ』っていうのは私がつけたわけじゃなくて、私をメフィスト賞でデビューさせてくれた当時の編集長の「新本格の生みの親」の宇山日出臣さんが勝手につけたものです。
―そうだったんですか!デビュー作もタイトルは蘇部さんではなく誰かが決めていたんですか!
蘇部さん:だから今回で2回目です。
―他力本願タイトルで2度目の企画ですか。おもしろいですね。今回、もしかすると『六枚のとんかつ』の印象を塗り替えるようなインパクトある代表作になるかもしれません。『六十枚のビフテキ』とかダメですか。自己パロディといいますか。
担当さん:それくるかもしれないですよね。
蘇部さん:いや。できれば美しいタイトルがいいんですけど。一応恋愛ミステリーなんで。
―そうですよね。たしかに。今回は美しいほうがいいですね。
蘇部さん:できれば。
担当さん:ヒットするなら、えげつなくてもいいです。
―横で編集者さんがなにか言ってるようですが。
ヒットの法則が見えてきた!?
―その『六枚のとんかつ』メフィスト賞デビュー以後の足跡の質問なんですけど、現在までに、タイトルとしてはどのくらいの数を出されているんですか?
蘇部さん:18作品くらいだと思うんですけど。
―謙遜されているわりには立派な作家来歴と思いますが、『六枚のとんかつ』シリーズ以外ではユニークなタイトルはつけてきたわけではないんですね。
蘇部さん:全然。地味なタイトルですね。バカミス(※国内における推理小説の分類「おバカなミステリー」の略)で最初デビューして、バカミスのアイデアが行き詰まって、普通のミステリーに移行して、それも行き詰まったっていうのもあるし、全然売れなかったっていうのもあるので、時間SF、いわゆるタイムマシンものに移行して、それも売れなかったんで恋愛小説に移行して、それも売れなかったんで、また久しぶりにミステリーに戻ったみたいな。
―転生輪廻みたいな話ですね。前回が恋愛小説になるんですね。
蘇部さん:小学館さんから出してもらった「運命しか信じない!」っていうのはこてこての恋愛。ラブコメディですね。
―今回はひとつ、「企画」で再転生と。
蘇部さん:結局ずっと売れなかったんで、売れるためにはどうすればいいかなって考えてきたんですよ。1年に1回、メフィスト賞作家の集まりがあるんですが、メフィスト賞作家の乾くるみさんと真梨幸子さんと浦賀和宏さんが売れたんです。その3人の『イニシエーション・ラブ』『殺人鬼フジコの衝動』『彼女は存在しない』は、全部「叙述トリック」(※ミステリ小説において、文章上の仕掛けによって読者のミスリードを誘う手法)なんですよね。
だからみんなで集まって、「叙述トリック」書けば俺たちも売れるんじゃないかなんてことを、みんなで、ふざけて話してたんですけど、私は真剣に考えていて、2年前2015年の元日に「あれ?このパターン今まで誰もやってなかったんじゃないかな?」ってそのトリックを思いついてですね。「少なくとも有名作品ではないよな?」と認識していたので、すぐ書きたかったんですけど、このトリックを使うための必然性っていうのがなかなか思い浮かばなくて、ストーリー作りにものすごい苦労して、1年半くらい何度も挫折して、無理かなと思ったんですけど去年の夏前くらいに、こうしたらいいんじゃないかなと思ってようやくストーリーが完成したんです。
―たしかにそうですよね。言われてみればヒットしてる作品は本当に「叙述トリック」ばかりですね。
蘇部さん:そうなんですよ。ここ最近の〇〇さんの「XX」と△△さんの「□□」とか数えあげれば、キリがないくらいみなさん「叙述トリック」をやってます。だから売れるためには「叙述トリック」しかないなって本当にずっと思っていたんです。
タイトルは本の「魂」にもあたる部分。著者が命をかけて書いたものの最後を人に託す。
―では今回は作風としての変遷を辿りながら、今、新たな境地に達した中で、ひとつ大きな「企画」に至ったと。この『小説X』に賭ける思いといいますか、新しいタイトルに賭ける思いを教えてください。
蘇部さん:はじめて担当さんからお話を聞いた時に、もう夢のような話だったので、自分にこんないいことが起こっていいのかな?っていう、信じられないくらいの思いだったんですよ。出版社さんが自分のためにこういうことをしてくれるなんてことは絶対ないと思っていたんで、本当に嬉しいですし、たぶんこんなチャンスは二度といただけないと思うので、なんとか多くの人に読まれたらいいなと思っています。
―今回は本当にタイミングも良くて、この企画で行こう!っていう感じでガーッと進んだということなんでしょね。
担当さん:蘇部さんから「本になりますか?なりませんか?」って聞かれて、じゃあ8月いっぱいまでちょっと待ってくださいって言っていたんです。作品はおもしろいなと思ったんですけど、タイトルもうまく決まらないし、やっぱりさっき蘇部さんがおっしゃってたように、前回の売上とか販売とかいろんな側面が絡んでくるので、なんかもう、出せるか出せないかって運を天に任せるような気持ちで待っている所でした。
―「神頼み」だったんですね。
担当さん:私がデジタル局に「デジタルでどうにかならないですか?」と持ち込んだことが契機ですが、やはり蘇部さんの作品の力があったおかげです。こんなふうにとんとん拍子にプロジェクトが大きくなっていくことってあるんだなって。私も感慨深く思ってます。
―なんといいますか、悠久の時の中で転生輪廻を繰り返す魂を前にした御仏の境地に聞こえますね。でも、たしかに新しいですよね。全文公開してタイトルを募集してしまうのは。
担当さん:新潮社さんの施策ですが、SNSを使ってキャッチコピーを募集して、あれだけ一般ユーザーの人が広めていくっていう形は今までなかったんですよ。正攻法は、ある程度のジャンル固定の読者の上に、その作家さんのファンが火をつけて、書店キャンペーンから交通広告さらに映像化されて、新規の読者が入ってくるという形だったとは思うんですけれども、私たちも、今まで「本をあまり読まないような人たち」が入ってくるためにはどうしたらいいのかっていう施策をちゃんと考えてこなかったという反省があって、何かしなくては!と思っていたところに、今回の作品がちょうどマッチしたという感じですね。
―小説は、蘇部さんの読みやすい文章がすごくネットの親和性が高いように思うので、それも大きな要因ですよね。これがガチな純文学とかだと、それはそれでまた難しい局面もあるんでしょうけど。
担当さん:マジメな部分も補足をさせていただくと、編集部はこの小説は抜群におもしろいぞ!と思ったんですよ。そして今回『ルビン』になかったものでこっちにあるものは、幸か不幸か「タイトルが未定」であること。
ここの部分、タイトルを読者に託して、事後正式に採用してちゃんと出版するという意味では、私たちも相当な覚悟を持っています。タイトルは本の「魂」にもあたる部分で、蘇部さんご本人の前でいうのもあれですけど、著者が命をかけて書いてきたものの最後を人に託す。「ダルマの目を入れる」作業だけは読者にお願いするようなものです。ちょっと間違うとウケ狙いみたいに思われたりするかもですが、本当に真剣に、大マジメに、もちろん蘇部さんも私たちも、この企画に臨んでます。
―なるほど。ソフトウェア、ネットサービスの世界ですと「永遠のβ版」という発想があって、サービスをβ版(試作版)の段階で世に出してしまって、ユーザーの反応を見ながらどんどん改変修正を加えていく。今回は通常小説として内容とタイトルすべてパッケージで完結の上で正規の本として出してくものを、タイトル未定のまま出してしまい、そのタイトルを募集するという形はすごくインターネット的なアイデアだなと思います。
書籍のタイトルは永遠に書籍に残る!
担当さん:タイトルは、とにかくずっとその方がつけてくださったものが永遠に書籍として残っていきます。その試みを著者の蘇部さんが許してくれたわけです。本当に心の広さというか。
蘇部さん:いやいや。
―本当そうですよね。よくよく考えれば、タイトルってその作品の寿命も決めもするし、売上をも決めてしまうものですから、そこを読者にすべて委ねるって相当な決断ですよね。
蘇部さん:いいタイトルが思い浮かんでいたら、この企画に反対していたかもしれないですけど、ポンコツな脳みそが限界に達すると、他の優秀な脳みその力を借りた方がいいアイデア出してくれるかなって。
担当さん:このタイトルじゃあオチが見えるって言っていたミステリー作家さんは、いいことを言っていただけました。
―たしかにその言葉がなければそのまま行ってたかもしれないですもんね。読む人によってはタイトルでトリックがわかってしまって。
蘇部さん:でも私の作品の中で、今までちょっとでも売れたのが、タイトルを人につけてもらった『六枚のとんかつ』なので。
―今回その2回目を「託す」ということで。
蘇部さん:そうですね。
担当さん:3回目もあるかも。
―蘇部さんがタイトルで欲しいのは先ほど「美しいタイトル」とおっしゃってましたが、ほかに何かあれば。
蘇部さん:そうですね。一番は「売れるタイトル」。なんですけど、どういうタイトルが「売れるタイトル」かわかれば今までつけてたんで(笑)。わかんないですけどね。
―ちなみに今回、応募タイトルに文字数制限とかありますか?
蘇部さん:全然ないです。長くても短くても。
―ラノベ的にガーッて長いものでも全然かまわない。もしくは往年の純文学的に漢字一文字どーんでも。
担当さん:そういうタイトルが来たらおもしろいかもしれません。本当にどんなものでもOKです。読んでくださった方が、これはどうか、って思うようなもの。逆に読者の皆さんからのメッセージみたいなものであると、つけてくれたタイトルを見て、「こういうふうに受け取った方もいて、ああいうふうに受け取った方もいて」というのがわかるので、とても嬉しいですね。
―今回の企画は、まずタイトル募集ですね。
担当さん:そうですね。全文公開、11月17日(金)から開始して、12月7日(木)までで、タイトルの応募は一旦終了です。
―その後も全文公開作品は読めるには読めるのですか?
担当さん:応募いただいた中から選考しノミネート5タイトルを選出して、12月12日(火)から19日(火)まで最終タイトル決定のWEB投票をします。その時が小学館の「小説丸」で読めるラストチャンスです。限定1週間で再び全文公開いたします。
―最初はその「小説丸」の他、各電子書籍ストア、そしてなんとSmartnewsでの連載ですね。そこでノミネートタイトルが5つ決まった後は1週間「小説丸」だけで読めると。
担当さん:はい。読んでいただいて、ノミネートタイトルに投票していただきます。
―その後の流れは。
担当さん:年明け2018年1月9日(火)に結果発表になります。そして1月12日(金)に正式タイトル版は電子書籍で販売開始して、評判が高ければ紙の本も発売します。
蘇部さん:素晴しいですね。初耳ですけど、嬉しいなあ。
―初耳って。
「美しくて、売れて、愛がある」タイトルを募集します!
―しかしまず、「売れるタイトル」をぜひ!と。売れるタイトルであればどんな手を使っていただいてもと。
蘇部さん:そうですね。
―売れて美しいタイトルってことですね。
蘇部さん:まあ、できればですけど。
―売れて美しくミステリー史に燦然と輝くタイトル募集!
蘇部さん:そこまでは言いませんけど。
―ハードルを上げ過ぎてますね。
蘇部さん:どちらかというと読んでいただいて気軽に応募いただければと思います。
―でも、読んでもらって「愛があるタイトル」が集まれば。
蘇部さん:そうですね。それが本当に、たくさん来てもらえれば嬉しいですけど、1個でもあれば。
―そうですね。これは、僕なんかも参加して大丈夫なんですか?
担当さん:いっぱい出してください。優秀賞獲れるかもしれない。
―僕はそのタイトル命名センスはないですけど、年末年始に5万円は喉から手が出るほど欲しいです。
担当さん:けっこう社内関係者がみんな出したいって言ってますけど、止めてます。
―そんな話をよそに、実は蘇部さんが出したりして。まさかの。
担当さん:5万円をもらってるのに教えてくれなかったり。
蘇部さん:いやいや私はもうボツになったわけですから。ジブリとか必ずタイトルに「の」がつくとかいうので、でも私のタイトル「の」がついたためしがなくて、今回「〇の〇」と「の」つけたのにボツになっちゃったんで。
―蘇部さんの場合、タイトルはわりと人に委ねたほうがもっとすごいラッキーがあるってことかもしれません。本日はお忙しい中ありがとうございました!「美しく」、「売れる」タイトルがたくさん集まりますように!