11月の3連休に元SMAPのメンバーである稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人が出演することで注目されていたAbemaTVの「72時間ホンネテレビ」。
3日間の累計視聴数は7400万視聴と、AbemaTVの過去最高視聴数記録を大幅に更新し、Twitterのトレンドワードで「森くん」というキーワードが世界1位となるなど、おおいに話題を呼びました。
個人的にも番組の放映開始前に、「元SMAP3人の #72時間ホンネテレビ は1億視聴の大台を超えるか」という飛ばし気味の推測記事を書いていたこともあり、責任を持って振り返りをしておこうと思います。
今回の72時間ホンネテレビにおいては、番組を見る時間帯によってはダラダラした番組で面白くなかったと批判する人もいるようで、立場や見る視点において評価が分かれる点も多いようですが、個人的には、やはり非常に革命的な取り組みだったと感じています。
もちろん、今回の企画では、様々な新しい挑戦が同時に実施されましたから、どの点を見るかによって評価が大きく分かれるのは当然でしょう。
まずは、AbemaTVにとってはネガティブな指摘からしておきましょう。
■5時間の視聴数では亀田企画を超えていない
視聴数7400万という数値は、非常に大きな数値ではあるのですが、実際にはAbemaTVが発表している視聴数は、視聴「人」数ではなく、アクセス数やページビュー数に近い数値であると言われており、この数値だけを一人歩きさせるのは間違っていると言えるでしょう。
一部メディアで累計視聴数を視聴人数に置き換えて、日本の人口の半分が、とか書いていたりするのが散見されますが、これは明らかに間違いです。
詳細は下記の岡田さんの記事が詳しいです。
参考:元SMAP3人の「ホンネテレビ」7400万視聴も、「見た人」はもっと少ない
ただ、個人的にも、1億視聴数のクリアは堅いと予想していただけに、今回の視聴数は実は少し意外でした。
予想を外した言い訳になってしまいますが、亀田企画では放送5時間で1420万の累計視聴数の記録を出しているため、今回の72時間ホンネテレビは予約が亀田企画の倍あったこともあり、事前の話題性を考えると当然この記録を上回ってくると思い込んでいたのです。
ただ、放送5時間を経過した72時間ホンネテレビの視聴数は780万と、亀田企画の1420万の半分強の数値に留まりました。
もちろん、亀田企画の放送時間が18時~23時だったのに対し、72時間ホンネテレビは21時開始のため、5時間というと21時~26時と深夜の扱いになるため単純比較は少し不公平とはいえるでしょう
ただ、翌日の18時~21時の時間帯での累計アクセス数の伸びは400万程度のようですので、初日の21時~24時で600万視聴だったことを考えると、両方を足しても1000万視聴にしか届きません。
つまり72時間ホンネテレビは、5時間だけで見た累計視聴者数だと亀田企画を超えていないわけです。
ひょっとしたら、亀田企画の時はサーバーダウンなどの影響で視聴数が切断時にカウントしなおされるなどの影響があったのかもしれませんし、亀田企画に比べると72時間ホンネテレビはファンが継続して見続けていたので視聴数が無駄に増えなかった可能性もあります。
ただ、いずれにしても5時間での視聴者数記録という意味では、亀田企画がトップの座を守ったことになります。
ビジネスインサイダーのインタビューでも、藤田社長が視聴者数は「1000万まではいっていない」と明言されていますから、累計の視聴者数は数百万人であるということが分かります。
参考:ホンネテレビ手応えから200億赤字の意味まで…藤田晋社長アベマTVの全てを語る
72時間の累計視聴者数が数百万人と言うことは、当然全員が72時間見続けるわけはないですので、ピーク時の同時視聴者数は亀田企画同様の100万~200万程度だったのではないかと想像されるわけです。
そういう意味で、もし同じメンバーで民放で同じ立て付けの番組をやっていたら、当然5%や10%の視聴率は取っていたであろうことを考えると、同じ番組をテレビ局でやった方が良かったよね、という意見が出てくるのは良く分かります。
もちろん、その民放に不可能な立て付けの番組を実現したからこそ、AbemaTVがスゴいわけで、今回の72時間ホンネテレビは、民放の視聴率的感覚ではそれほど大きな数値ではないが、業界の常識を突破したという意味で革命的だったのは間違いないでしょう。
ちなみに、そういう意味では、11月19日(日)に放映されることが発表された「72時間ホンネテレビ未公開シーン&トレンド入りの瞬間7.2時間で全部みせますSP」という7.2時間番組が、5時間でどこまで視聴者数を伸ばすのかが注目点と言えそうです。
参考:稲垣・草なぎ・香取「72時間ホンネテレビ」未公開シーン&トレンド入りの瞬間“舞台裏”公開
■ツイッターの話題ジャックに大成功した
さて、あえて視聴者数についてはネガティブな形で振り返ってみましたが、逆に言うとテレビに比べると意外に少ない同時視聴者数にもかかわらず、ツイッター上の話題のジャックに成功したというのが、今回の72時間ホンネテレビのスゴいところだと思います。
何しろツイッターのトレンド入りは72時間でなんと107件。
「#森くん」のハッシュタグが世界のトレンド1位を獲得したのを筆頭に、ツイッターのトレンドリストには、AbemaTVの広告も含めて常に72時間ホンネテレビのハッシュタグが表示され続ける状態になっていました。
番組のオープニングで宣言された、3日間「世界トレンド1位」を取るというのは達成できませんでしたが、3日間の番組関連の総ツイート数は508万件以上だというからスゴいです。
テレビを見ながらのツイッター投稿と言えば、ラピュタのバルスツイートが秒間14万ツイートで世界記録を達成したことが有名です。
参考:「バルス」秒間14万3199ツイートでTwitter瞬間最大風速塗り替える
ただ、そのラピュタでも番組放送中全体のツイートは75~100万件前後と言われています。
2時間で75万件と、72時間で508万件を単純比較はできませんが、この数値が異様な数値なのは分かって頂けるはずです。
これ以外のソーシャルメディアにおいても、72時間ホンネテレビは、Amebaブログで3日連続総合1位を獲得し、YouTube動画の合計再生回数は約536万回、Instagramフォロワー数は100万人を超えて合計で1,400万件以上の「いいね」がついたとかで、記録尽くしの番組となりました。
■記録達成は三人のファンの力
ここで注目すべきポイントとなるのが、元SMAPである三人のファンの力です。
前述したように72時間ホンネテレビの視聴率は憶測ですが、同時視聴者数が100万~200万と想定すると、おそらくは民放に換算すると数%の世界でしょう。
深夜の放送時間もありますから番組全体の平均で見ると1~2%というところではないかと想像されます。
今年のラピュタ放映時が、2時間の放送を平均視聴率14.4%で、ツイッターの投稿が75万件程度だったようですので。
72時間ホンネテレビは平均視聴率はおそらく1~2%にもかかわらず、ツイッターの投稿が500万件を超えているわけです。
ラピュタの視聴率1%あたりのツイート数が2万件なのに対し、72時間テレビは3.5~7万件という類推ができます。
いかに三人のファンが熱心にツイートしていたかが容易に想像できる数値だと思います。
象徴的なのは三人のツイッターの投稿のリツイート数です。
例えば草なぎさんのツイッターアカウントの投稿一覧を見てもらうと、番組終了後もほとんどの投稿が1万リツイートを軽く超えていることに驚きます。
もちろんフォロワーが既に80万人を超えていることもあると思いますが、ツイッターのフォロワーが多い芸能人として有名な有吉さんやきゃりーぱみゅぱみゅさんは、既に3人の5倍以上の500万人以上のフォロワーがいます。
それでも、彼らの通常時の投稿のリツイート数は、数百件が一般的。
それを考えると、80万人のフォロワーで1万リツイートが非常に高いリツイート率であるのが分かっていただけるでしょう。
これはあくまで想像ですが、やはり大手芸能事務所を退職するという思い切った決断をした三人に対して、三人のファンが自分達の力で彼らを応援することがいかに大事かを感じていることが、これらの数値に出ているように思います。
■画面キャプチャシェアのお願いはファンの心に火をつけた
また、そのファンの力を最大化する上で最も大きかったのは、今回、番組中の画面キャプチャのソーシャルメディアでのシェアを推奨したことでしょう。
これまでジャーニーズ事務所所属のタレントはネット上で顔出ししないことで有名でしたが、今回の72時間ホンネテレビでは、三人がネットで顔出しするだけではなく、視聴者に番組の画像をどんどんとってハッシュタグ付きでシェアすることが推奨されました。
これまで御法度とされていた行為を、許容されるどころか本人達からお願いされて、ファンが意気に感じないはずはありません。
結果的に、ツイッター上にはたくさんの72時間ホンネテレビの番組キャプチャ画像が氾濫することになりました。
ある人は、ツイッター上の写真を見れば大体何がおこったか分かるから、番組見なくても済んだ、と発言していました。
それぐらいたくさんの画像がツイッター上でシェアされたわけで、非常に画期的な試みだったと言えるでしょう。
香取さんのインスタグラムのフォロワー数が現時点で120万人で、三人のツイッターのフォロワー数が大体80万人前後であることを考えると、おそらく彼らのコアなSNS上のファンは数十万人前半ということなのだと思います。
この数十万人という数値は、数百万人や数千万人が視聴してくれて当然のテレビの視聴率で見ると小さい数字かもしれません。
でも、この数十万人が新しい旅立ちにチャレンジする三人を、ツイートやいいねという形で72時間応援し続けた結果が、今回の72時間ホンネテレビのツイッタージャック成功につながったのではないかと思います。
だからこそ、ビジネスインサイダーのインタビューで、藤田社長も「正直、こんなに反響があるとは思っていなかった」というほどの反響がまきおこったのでしょう。
そういう意味で、もう一つ興味深いのが3日間の視聴者数の推移です。
おそらく72時間テレビの放映開始の初日の冒頭は、私のような物見遊山の視聴者が多かったのでは無いかと推測しています。
そういう意味では視聴数は初日がピークで、あとは下がってもおかしくなさそうなものですが、実は72時間テレビの視聴数は日を重ねる毎に増えています。
初日の視聴数が2260万視聴
二日目の視聴数が2400万視聴(4660万視聴ー2260万視聴)
三日目の視聴数が2740万視聴(7400万視聴ー4660万視聴)
と、1日ごとに着実に増えているのです。
聞いた話では、今回の番組がAbemaTVでないと視聴できないため、ツイッター上の話題を見て、放送を見たくはなったんだけどどうやって見れば分からなかったと言う人もかなりいたようです。
そういう人が徐々にAbemaTVの見方を覚えて後半の視聴数の伸びにつながっている印象もあります。
右肩上がりに数値が上がるというのは、少なくとも視聴者の満足度が高かったことがうかがえるわけです。
■テレビ局や他のネット企業はどう受け止めるのか
今後注目されるのが、既存のテレビ局の方々が今回の結果をどう受け止めるかということでしょう。
インターネットの登場によって、テレビドラマなどの番組放映はNetflixやHuluに代表されるようなタイムシフト化が急速に進んでいます。
ライブで流し続けることが基本であるテレビ局にとっては、非常に難しい状況であると言えるでしょう。
ただ、今回の72時間ホンネテレビは、「テレビ」ならではの生で72時間の放送を続けるというトライを行い、番組の視聴者や三人のファンの力を借りることによって、3日間のツイッター上の話題をジャックすることができることを証明しました。
実はこのこと自体は、ネットテレビであるAbemaTVだけができることではなく、テレビ局においても挑戦できるはずで、今回の番組もテレビ朝日と連動した取り組みであればもっと大きな話題にすることもできたはず。
そういう意味では、今後ヤフーやLINEのようなネット大手企業や、テレビ朝日以外のテレビ局が、このネットテレビの分野にどう取り組むのかというのも気になるのですが。
長くなりましたので今日のところはこの辺で。
今後の元SMAP3人の、新たなる挑戦にも引き続き注目していきたいと思います。
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