来週打ち上げ予定の準天頂衛星「みちびき2号」
あと七日もすれば「祝・みちびき2号、打ち上げ成功」なタイトルの記事が山ほど出てくるでしょう。
※打ち上げが成功しても実用運用は2018年4月からの予定です

  1. 「みちびき」に対応した機材ならば、誤差数センチまで精度が向上する。
  2. 「みちびき」の補強信号に対応した機材ならば、誤差数センチまで精度が向上する。

そっくりな二つの文章ですが、一部だけ違っています。

「みちびき初号機」は6種類の電波を発信しています。
4種類の補完信号と2種類の補強信号です。


※6月1日に打ち上げ予定の2号機は準天頂軌道衛星です。
補強信号にも対応していると、高い精度が期待できますが、補完信号のみに対応している場合の誤差は数メートル単位になります。

「補完信号のみ対応」でも「みちびき対応」です。

「補完信号+補強信号に対応」でも「みちびき対応」です。

QZSS対応と書かれている場合があります。QZSSとはQuasi-Zenith Satellite Systemの意味で準天頂衛星システムの英語名です。システムの名前であって電波の種類ではありません。「QZSS対応」「みちびき対応」同義語になります。

どれか1種類の電波に対応していれば、「みちびき対応」となります。間違っていませんが、誤解を招きます。「消防署の方からきました」って話と同じです。


この表は、みちびき対応製品リストとして準天頂衛星システムの公式ページに記載されているものです。対応信号はL1C/Aと書かれています。L1C/Aというのは、GPS衛星と同じ電波で、頭の上(正確には仰角60度以上の位置)にGPS衛星が一個増えるのと同じです。一つ増えれば、誤差は少なくなりますが数センチ単位にはなりません。
※GPSとはアメリカが構築した衛星測位システム(The Global Positioning System)の固有名詞です。

誤差数センチで測位できるのは、L6信号(センチメータ級測位補強サービス)対応の端末です。
L1S(L1-SAIFと書かれている場合もあります)信号(サブメータ級測位補強サービス)対応機の精度は1メートル未満になります。

対応リストを見れば、補強信号に対応している製品はほとんどありません。チップやアンテナや受信機には補強信号対応の製品が出てきてますが、一般ユーザーには無縁の製品ばかりです。

iPhone7は、L6信号はおろかL1S信号にさえ対応していませんから、誤差1メートル以内の精度は期待できません。せいぜい数メートルといったところでしょう。

誤差数メートルとは、どのくらいかというと、誤差1メートルで半径50センチの円の中です。誤差5メートルなら2メートル50センチ、誤差10メートルなら半径5メートル、誤差数センチ(10センチメートル未満)となると半径5センチの円の中となります。

ということで、最初の二つの文章はどちらも正しいといえば正しいけれど、より正確に書くならば

「みちびき」のL6補強信号に対応した機材ならば、誤差数センチまで精度が向上する。

L1C/Aのみ対応なのに、L6対応であるかのように読めてしまう記事が沢山あります。最低でも補強信号に言及していない記事は信用しないことです。

あと、「みちびき」だけで測位できると思い込みがちですが、あくまでも数あるGPS衛星に頼っています。
理想的な測位状態は衛星8機、最低でも4機必用です。今年度予定の打ち上げが全て成功して、日本の測位衛星は4機となりますが、全てが一日中見えることはありません。アメリカの衛星の電波も受信しなければ測位できません。

最後に、私が買ったeTrex Touch 35t(eTrex Touch35Jではありません)は、Garmin USAのサイトではGPSとGLONASSのみ対応ということになっていますが、実際にはみちびき初号機の補完信号を受信しています。AndroidのNEXUS10でもみちびきの補完信号を受信できてます。カタログには書かれて無くてもみちびきの補完信号を受信できる端末はあります。

eTrex Touch 35英語版でも準天頂衛星「みちびき」に対応



2017.9.13追記
iPhone8/iPhone8 Plus/iPhone Xが発表されました。これらの機種ではGPS, グロナス, ガリレオ, みちびきに対応しています。おそらく「みちびき対応」はL1C/Aのみ対応でしょう。ただガリレオは測位誤差が1メートル未満と言われています。

https://osm-for-garmin.org/wp-content/uploads/2017/05/qzs.pnghttps://osm-for-garmin.org/wp-content/uploads/2017/05/qzs-150x150.pngmasarapGPSeTrex Touch 35,qzss来週打ち上げ予定の準天頂衛星「みちびき2号」 あと七日もすれば「祝・みちびき2号、打ち上げ成功」なタイトルの記事が山ほど出てくるでしょう。 ※打ち上げが成功しても実用運用は2018年4月からの予定です 「みちびき」に対応した機材ならば、誤差数センチまで精度が向上する。 「みちびき」の補強信号に対応した機材ならば、誤差数センチまで精度が向上する。 そっくりな二つの文章ですが、一部だけ違っています。 「みちびき初号機」は6種類の電波を発信しています。 4種類の補完信号と2種類の補強信号です。 ※6月1日に打ち上げ予定の2号機は準天頂軌道衛星です。 補強信号にも対応していると、高い精度が期待できますが、補完信号のみに対応している場合の誤差は数メートル単位になります。 「補完信号のみ対応」でも「みちびき対応」です。 「補完信号+補強信号に対応」でも「みちびき対応」です。 QZSS対応と書かれている場合があります。QZSSとはQuasi-Zenith Satellite Systemの意味で準天頂衛星システムの英語名です。システムの名前であって電波の種類ではありません。「QZSS対応」は「みちびき対応」と同義語になります。 どれか1種類の電波に対応していれば、「みちびき対応」となります。間違っていませんが、誤解を招きます。「消防署の方からきました」って話と同じです。 この表は、みちびき対応製品リストとして準天頂衛星システムの公式ページに記載されているものです。対応信号はL1C/Aと書かれています。L1C/Aというのは、GPS衛星と同じ電波で、頭の上(正確には仰角60度以上の位置)にGPS衛星が一個増えるのと同じです。一つ増えれば、誤差は少なくなりますが数センチ単位にはなりません。 ※GPSとはアメリカが構築した衛星測位システム(The Global Positioning System)の固有名詞です。 誤差数センチで測位できるのは、L6信号(センチメータ級測位補強サービス)対応の端末です。 L1S(L1-SAIFと書かれている場合もあります)信号(サブメータ級測位補強サービス)対応機の精度は1メートル未満になります。 対応リストを見れば、補強信号に対応している製品はほとんどありません。チップやアンテナや受信機には補強信号対応の製品が出てきてますが、一般ユーザーには無縁の製品ばかりです。 iPhone7は、L6信号はおろかL1S信号にさえ対応していませんから、誤差1メートル以内の精度は期待できません。せいぜい数メートルといったところでしょう。 誤差数メートルとは、どのくらいかというと、誤差1メートルで半径50センチの円の中です。誤差5メートルなら2メートル50センチ、誤差10メートルなら半径5メートル、誤差数センチ(10センチメートル未満)となると半径5センチの円の中となります。 ということで、最初の二つの文章はどちらも正しいといえば正しいけれど、より正確に書くならば 「みちびき」のL6補強信号に対応した機材ならば、誤差数センチまで精度が向上する。 L1C/Aのみ対応なのに、L6対応であるかのように読めてしまう記事が沢山あります。最低でも補強信号に言及していない記事は信用しないことです。 あと、「みちびき」だけで測位できると思い込みがちですが、あくまでも数あるGPS衛星に頼っています。 理想的な測位状態は衛星8機、最低でも4機必用です。今年度予定の打ち上げが全て成功して、日本の測位衛星は4機となりますが、全てが一日中見えることはありません。アメリカの衛星の電波も受信しなければ測位できません。 最後に、私が買ったeTrex Touch 35t(eTrex Touch35Jではありません)は、Garmin USAのサイトではGPSとGLONASSのみ対応ということになっていますが、実際にはみちびき初号機の補完信号を受信しています。AndroidのNEXUS10でもみちびきの補完信号を受信できてます。カタログには書かれて無くてもみちびきの補完信号を受信できる端末はあります。 https://osm-for-garmin.org/etrex-touch-35-supports-for-michibiki/ 2017.9.13追記 iPhone8/iPhone8 Plus/iPhone Xが発表されました。これらの機種ではGPS, グロナス, ガリレオ, みちびきに対応しています。おそらく「みちびき対応」はL1C/Aのみ対応でしょう。ただガリレオは測位誤差が1メートル未満と言われています。 QZSSは、いつものごとくL1C/Aのみ対応なんだろうな— 囧(masarap) (@masarapmap) 2017年9月13日May the GARMIN be with you