従来、UMNファーマと塩野義製薬の立ち位置は異なり、UMNファーマが新型のインフルエンザワクチン開発でトップを走っていたのに対し、塩野義製薬はインフルエンザの治療薬の開発を進めてきた。
塩野義製薬が開発中の「S-033188」は、1~2日でインフルエンザに対して高い治療効果を発揮することを確認済み。これは、同分野で現在主力製品である「タミフル」を凌駕する。投与後1~2日でインフルエンザが治療できるということは、何を意味するのか。
それは、インフルエンザワクチンの必要性の否定にほかならない。現在でもインフルエンザワクチンは深刻な副作用問題を抱えている。しかも、インフルエンザワクチンの場合、行政当局が予め流行の種類を予想・特定し、その情報を基にワクチンを生産してきた。流行と生産ワクチンの型が一致しないと効果は期待できない。リスクを犯してもワクチンを投与するのはインフルエンザが脅威だからだ。しかし、短期間に治療できればだれもワクチンなど接種しなくなるだろう。
塩野義製薬は、UMNファーマのどこを評価したのか
UMNファーマのワクチンが承認の対象から外されたのは、塩野義製薬の「S-033188」の開発進展ばかりではない。しかし、ワクチンの息の根を止めようとしている会社がワクチン開発のトップ企業を救済した点は注目される。手代木功社長は説明会で、UMNファーマのインフルエンザワクチンには「期待していない」とコメントした。これは逆に言えば、純粋にUMNファーマの技術力を評価したともいえる。
新たな相手を見つけたUMNファーマとその株主にとって、極めて幸せな結果となった。企業の統合は人の「結婚」と共通点も多い。企業が“生き物“であるという視点に立てば、それもある意味当然といえよう。
再生医療のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(7774)と富士フィルムホールディングス(4901)やJCRファーマ(4552)とメディパルホールディングス(7459)などの提携は、それぞれの企業にとって良縁だったといえる。要は有力な技術があれば、資金な潤沢が流れ込む可能性も大きい、ということだ。
そうした観点からは、業績や開発面で苦戦が続くナノキャリア(4571)、キャンバス(4575)、スリー・ディー・マトリックス(7777)などの企業群も捨てたものでもない、ということになるだろう。
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塩野義薬 (4507) JCRファ (4552) ナノキャリ (4571) キャンバス (4575) UMN (4585) 富士フHD (4901) メディパル (7459) J-TEC (7774) 3Dマト (7777)- コラムを順に読む