【ボン=川合智之】ドイツ・ボンで開催中の第23回気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)で15日、首脳らが出席する閣僚級会合が始まった。マクロン仏大統領は、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱を表明したトランプ米政権が国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)への出資をやめたことに関し、「欧州は米国に取って代わる」と表明。メルケル独首相も「多くの仕事が残されている」と述べ、パリ協定の着実な実行を主導していくと訴えた。
IPCCは世界の科学者らが温暖化の影響などを議論する国際組織。数年おきにまとめる報告書は世界各国が温暖化ガス削減を進める重要な資料となっており、2007年にノーベル平和賞を受賞した。
米国のIPCCへの拠出金は全体の2割にあたる約200万ドル(約2億2千万円)と大きくはないが、トランプ米政権はゼロにする方針を表明していた。マクロン氏は「失われた米国の出資分を我々は埋め合わせることができる」と強調した。
マクロン氏は演説で、「石炭発電を21年までに全廃する」とも表明した。二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭火力発電所を閉鎖し、運転中にCO2を出さない原子力発電所などへの移行を加速する。
トランプ氏は大統領選で自らを支持した炭鉱労働者らに配慮し、石炭発電の復権を打ち出している。オバマ前大統領が打ち出した石炭発電への規制を撤廃すると表明するなど、温暖化対策には後ろ向きだ。
マクロン氏は12月に気候変動に関する首脳会議をパリで主催する。米国に代わって温暖化問題で世界の先導役を果たしたい考えで、環境対策に積極的な姿勢をアピールした。
メルケル独首相も「トランプ氏がパリ協定離脱を決断したにもかかわらず、米国の大部分が気候を守るのは重要だと強調したことを歓迎する」と述べた。COP23にはパリ協定を支持する米自治体・企業などでつくる団体が参加し、草の根で政府方針に反対する姿勢を表明している。
一方、石炭発電についてメルケル氏は「石炭産業は(排出量削減の)目標達成のために重要な貢献をしなければならない」と述べたものの、具体的な縮小策などは示さなかった。独は発電量の約4割を石炭に頼る。
メルケル氏が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は自由民主党(FDP)、緑の党との3党連立を目指している。環境重視の緑の党が石炭発電の早期中止を求めているのに対し、企業寄りのFDPは反対しており、メルケル氏は明確な態度を打ち出せなかった。
国連のグテレス事務総長も閣僚級会合に出席し、石炭などの化石燃料に投資が続いていることに関し「持続できない未来に賭けるのはやめなければならない」と批判した。異常気象による発展途上国での被害を抑えるためには、先進国からの資金支援が必要だとも訴えた。