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守れ、弥富白文鳥 愛西の佐屋高生が繁殖に成功

生徒たちが育てている弥富特産の白文鳥=愛知県愛西市の佐屋高で

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 「弥富文鳥」の名で知られ、日本で唯一、愛知県弥富市で生産されている白文鳥の繁殖に、隣の同県愛西市にある県立佐屋高校生物生産科の生徒たちが今秋、初めて成功した。生産者の高齢化や需要減で生産農家がわずか二軒となる中、二〇一三年から取り組み、五年越しで二羽がふ化。一羽は死んだが、もう一羽は元気に育っている。生徒たちは「弥富文鳥の遺伝子を受け継ぎ、生産技術を守り続けたい」と意気込む。

 同校には愛玩動物や家畜の飼育に関する「アニマルコース」専攻がある。〇九年に弥富文鳥組合が解散したのをきっかけに、生産者が「飼育技術を継承してほしい」と成鳥やひなを寄贈した。一三年に授業の一環で繁殖を始め、現在は一~三年の女子生徒七人が三十二羽を育てている。

 全身白色の白文鳥は、白文鳥と黒色と灰色の桜文鳥とのつがいか、白文鳥同士を交配させた場合に生まれる。指導する野沢更紗(さらさ)教諭(30)によると、初年度に一羽がかえったが、直後に死に、以降はひなが生まれていなかった。

 今年九月、白文鳥の一つがいを交配させ、四個の有精卵から十月十一~十四日にかけて白文鳥と桜文鳥が二羽ずつ生まれた。白文鳥と桜文鳥が一羽ずつ七~八日夜に死んだが、二羽は一カ月が過ぎた十六日現在も健康で、体長一〇センチ、体重二〇グラムほどになった。

 繁殖業者などによると、文鳥の繁殖は親鳥の体調や鳥同士の相性を見極めることが難しく、相性が悪ければ卵を産まない。同校の場合は文鳥の数が限られ、文鳥を育てるのに手いっぱいで、相性の良いペアを見つける余裕もなかったという。また白文鳥は遺伝的に卵がかえりにくい。今回は生徒が昨冬から文鳥たちをじっくりと観察。行動をともにし、仲が良いと判断したつがいを交配させた。

 生徒たちには、地元の農家がカゴに段ボールを巻いて常に暗くしておくと産卵しやすいことなどをアドバイス。今年二月に開設したツイッターには全国の愛鳥家からも鳥の健康状態を維持する方法などが寄せられ、参考にしたという。

 今後は二羽を繁殖用に育て、増えたひなを希望者に譲ることも想定。三年の人見満里奈さん(17)は「地元として飼育を受け継ぎたい気持ちはずっと持ってきた。多くの人に飼ってもらい、再び弥富の文鳥を広げていければ」と話している。

 (大野雄一郎、写真も)

繁殖に成功した白文鳥のひな=愛知県愛西市の佐屋高で

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 <弥富の白文鳥> 文鳥はスズメ目カエデチョウ科の鳥。弥富市では明治以降に農家の副業として飼育が始まり、突然変異の白色個体を品種改良したのが白文鳥で、同市が発祥の地とされる。愛玩動物として人気があり、最盛期の1970年代前半には約240人の生産者がいた。ペット需要の低下や外国産の普及により生産数は激減。現在は2農家が最盛期の約1・8%にあたる1200羽ほどを飼育し、年間1500羽ほどを出荷するのみとなっている。

 

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