我々人間は、本来の年齢よりも若く見せるために多大な努力を払うが、どうやらサメは生まれながらにその技を身に着けているらしい。
10年ほど前から、サメの寿命が従来考えられてきたよりも長いらしいという研究報告がもたらされ始めた。そしてこのたび、50以上の研究データをまとめた新たな分析により、サメやエイなどの軟骨魚類において、「広い範囲にわたって」寿命が過小評価されていたことが明らかになった。
学術誌「Fish and Fisheries」に発表された分析結果は、ホホジロザメからシロワニ、ドタブカまで、多くのサメがこれまで考えられてきたよりも数十年長く生きていることを示している。(参考記事:「ホホジロザメ 有名だけど、謎だらけ」)
論文の著者で、オーストラリア、ジェームズクック大学の水産学者であるアラステア・ハリー氏によると、核実験の影響を利用したボムピーク年代測定法などの最新メソッドが、脊椎骨の輪紋を数える従来の方法よりも正確であることがわかったという。(参考記事:「冷戦中の核実験が、象牙密猟の証拠を提示」)
「研究者らが以前から(年齢の過小評価に)気づいていたことは確実ですが、おそらくはその誤差がどれだけ大きく、どれだけ広範囲に及んでいるかまでは認識していなかったのでしょう」とハリー氏は言う。
2016年には、北極圏の冷たい海にすむニシオンデンザメが、数百年間の寿命を持つ可能性があることが確認されている。(参考記事:「約400歳のサメが見つかる、脊椎動物で最も長寿」)
研究者らは、寿命の過小評価が保護活動に与える悪影響を懸念している。(参考記事:「最も高齢な動物たち、6つの例」)
軟骨ゆえの難しさ
ハリー氏は、過去に研究対象とされた53の集団のデータを見直し、そのうちの30パーセントで年齢が過小評価されていたことを明らかにした。
サメの年齢測定は一筋縄ではいかない。軟骨魚類である彼らは、硬い骨の魚にある「耳石」をもたないからだ。耳石は内耳にある炭酸カルシウムの塊で、生涯を通じて一定の速度で層が形成され、それを木の年輪のように数えることで年齢を確認できる。この年輪にあたるものが輪紋だ。
そのため、サメの研究者らはこれまで数十年間にわたり、次善の策として、サメの軟骨性の脊椎骨にできる輪紋を数えてきた。
輪紋を数える作業は、科学であると同時に職人技のようなものでもある。米フロリダ自然史博物館サメ研究プログラムの元主任、ジョージ・バージェス氏によると、ときには1匹のサメに、同時に異なる数の輪紋が確認され、その平均値が年齢とされる場合もあるという。
今回の研究では、サメが高齢になるほど、輪紋の数と年齢が合わなくなることがわかった。つまり、輪紋は常に信頼できる指針にはならないこということだ。