円安頼みの成長に限界、労働力の安売りで消費低迷も-玉木元財務官

  • 「消費者の購買力を輸入インフレという形で奪う」
  • 「何から何まで黒田総裁におんぶにだっこというのは」

経済協力開発機構(OECD)の事務次長を7月まで務めていた玉木林太郎元財務官は、円安による原材料コストの上昇が国内賃金の伸びを妨げ、ひいては消費低迷につながりかねないとし、金融緩和と円安頼みの日本の経済政策運営に警鐘を鳴らす。

  玉木氏は9日のインタビューで、巨額の経常黒字を抱える日本が通貨安による輸出増だけで成長することはできないと指摘。円安による輸入インフレ下で企業が輸出競争力を維持しようとすれば賃金の抑制という形でしわ寄せが来るとし、「極端に言えば海外への労働力の安売り」になると語った。長く続ければ円安が「消費者の購買力を輸入インフレという形で奪う」ことになり、国内消費にマイナスに働く恐れがあると言う。

玉木林太郎氏
玉木林太郎氏
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg *** Local Caption *** Rintaro Tamaki

  賃金・消費の伸び悩みを背景に、政府・日本銀行が合意した2%の物価目標の達成は見通せず、異次元緩和は長期化している。円相場は最近1年間で主要10通貨の全てに対して下落。総務省が発表する家計調査では全世帯の消費支出が9月までの12カ月間で2回しか前年同月比でプラスとなっておらず、個人消費は盛り上がりを欠いたままだ。

  玉木氏は黒田東彦日銀総裁による金融緩和の意義を認める一方、世の中で「2%インフレは達成できず、低金利が永遠に続くというマインドセットが定着している」とみる。もし、この前提条件が崩れたら、金利上昇の思惑で広範囲に混乱をもたらしかねず危険だと指摘した。かつての日本企業にとっての障害であった高い法人税率や過度の円高などは解消しており、「何から何まで黒田総裁におんぶにだっこというのは、ちょっと甘ちゃん」と語った。

  玉木氏は金融危機の兆しとなったパリバショック直前の2007年7月に国際局長に就任し、翌年9月のリーマンショックに対処。09年からは財務官として金融危機の後処理と東日本大震災や超円高への対応に追われた。11年からOECDの事務次長を6年間務め、先月1日付で加藤隆俊元財務官の後を継ぐ形で、国際金融情報センターの理事長に就任した。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE

【米国株・国債・商品】株下落、国債は続伸-連日の商品安で

更新日時
1494367156_usstock
Photographer: Michael Nagle
  • 米経済指標、インフレの加速と小売売上高の堅調な伸び示す
  • 10年債利回りは5bp低下、2.33%台に

15日の米市場では株式相場が続落。世界的な成長減速や税制改革の見通しを巡る懸念が根強く残り、S&P500種株価指数は3週間ぶり安値となった。一方、国債は続伸した。

  • 米国株は続落、エネルギーや素材関連銘柄に売り
  • 米国債は続伸、10年債利回り一時2.32%台に
  • NY原油は続落、2週間ぶり安値-ロシアが減産延長に消極的
  • NY金は下落、リスク回避の動きを受けた上げを消す

  S&P500種は取引終了30分前にやや下げ幅を拡大した。有力とみなされる共和党のロン・ジョンソン上院議員が上院共和党の税制改革法案に反対しているとの米紙報道が材料視された。ニューヨーク原油先物が1バレル=55ドルに向けて下げる中、エネルギー生産業者が売り込まれた。前日に続く商品安が重しとなり、米国の消費者動向が依然堅調なことを示す経済指標はさほど材料視されなかった。

  S&P500種は0.6%下げて2564.62。ダウ工業株30種平均は138.19ドル(0.6%)安い23271.28ドル。ニューヨーク時間午後4時40分現在、米10年債利回りは5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し2.33%。

  ニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が続落。ほぼ2週間ぶりの安値となった。今月末の石油輸出国機構(OPEC)会合で減産合意を延長する可能性を巡り、ロシアは消極的だと伝わったことが売りを誘った。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は前日比37セント(0.7%)安の1バレル=55.33ドルと、2日以来の安値で終えた。ロンドンICEの北海ブレント1月限は34セント下げて61.87ドル。

  ニューヨーク金先物相場は下落。他市場でリスク回避ムードが広がり、上場投資信託(ETF)を通じた金保有高が1カ月ぶりの大幅増となったことで寄り付きは好調だったが、下げに転じた。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は0.4%安の1オンス=1277.70ドルで終了。

  この日の米経済指標は、消費者物価指数(CPI)が市場予想に一致、小売売上高は堅調、11月のニューヨーク連銀製造業景況指数は軟調とまちまちだった。これらの発表後に米国債は長期債中心に上昇し、イールドカーブはブルフラット化した。5年債と30年債の利回り差は一時、73.3bpに縮小した。

  S&P500種の業種別11指数は大半が下落したが、米国のインフレ加速を示すCPIを背景に、金融株は買われた。

原題:Stocks Fall, Treasuries Rise as Commodities Slump: Markets Wrap(抜粋)
USTs Bull Flatten After CPI as Long-End Demand Remains Robust(抜粋)
Oil Closes Lower as Russia Casts Doubts on OPEC Cuts Extension(抜粋)
PRECIOUS: Gold ETF Assets Up Most in Month Amid ‘Risk-Off Vibe’(抜粋)

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE