キムタクの映画「無限の住人」は米国での評価が高いというのは本当か?

junk-weed.hatenablog.com
ホームランor空振り三振でお馴染み三池崇史「無限の住人」がアメリカで公開され、ROTTENTOMATOESで評価が高かったそうで、リンク先はROTTENTOMATOESの評価を書き出した(スクショを貼った)記事。

海外の評価見るのは結構好きでして、ただROTTENNTOMATOESよりIMDBを使うことが多い。
そこでIMDBでどんな感じなのか気になったので書き出してみる。

ただしこういう「ヒットしている・していない」は相対的評価。
ここ最近日本でヒットした作品と並べるとどうなるか。



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IMDB

www.imdb.com
以下表の数値は、すべてIMDB(インターネットムービーデーターベース)から引用。
本日、2017年11月15日時点。

f:id:paradisecircus69:20171115161405j:plain

左から順に公開初週のBOXOFFICE(北米での興行収益)
その際の公開劇場数。

ユーザー評価はIMDBへの書き込みによる。
評価は、10点満点での平均。
左が平均、右が書き込み数。
最後がTHE GUARDIANなどメディア評価の平均値。

こうやって見ると「君の名は」の異様な数値が目につく。
そもそも公開劇場数がいきなり288館。
宮﨑駿ですら21なのに。
ユーザー評価、メディア評価も高い。


こうやって見ると「無限の住人」は……まぁ国内評価と違って評価されている感じがある。
評価が高い、というのはウソではない。
ただユーザー評価を見ると見事に真っ二つで、「ワーストサムライムービーだ!」なんて意見もあるし「マンガの映画化として素晴らしい」なんて意見も見受けられるのは、映画をどういう視点で見るかの違いなのかもしれないが。

movies.yahoo.co.jp
日本のYahooムービーでは5点満点中3.75(4,787件)ですから米国のほうがたしかに評価は高い。


ところで、

これは昨年公開され日本で大ヒットを記録した「シン・ゴジラ」とほぼ同等の数字です。

またフレッシュ認定されているので40人以上の批評家(トップレベルの批評家5人を含む)に鑑賞され批評されたということです。

実はこの事実だけでも価値があるのです。

なぜなら残念なことに日本映画はほとんどのアメリカ人は観てくれないからです。

そのため三池崇史監督の「一命」や山田洋次監督と木村拓哉が組んだ「武士の一分」などは批評家からも観客からも評価はされてるもののフレッシュ認定まではされておらず、作品そのものがあまり多くの人に観られていないことと批評がされていないことがわかります。

んー、ただ「武士の一分」はそもそも米国では2スクリーンの単館上映しかしてないんですよ(初週5,234ドル)。
だから「観てくれない」以前に売り込んでない。
それを比較しても仕方ないというか。

さらに日本では大ヒットした「るろうに剣心」に至っては批評家はほとんど見向きもしてくれていません。

侍を主人公にした時代劇映画だから観てくれる、甘く評価してくれるということでは決してないのです。

というか「るろうに剣心」はフィリピンでの公開記録はあるんですけど、そもそも米国でやったの、これ……?
日本の映画を全部が全部海外で上映するわけじゃないないし、批評家だって全世界の映画のすべてに目を通すわけじゃないですから。
「京都大火編」もフィリピンの記録はあるんだけど……。

斜陽の日本映画

話は変わって。
news.yahoo.co.jp

いちばんのったパターンですね。脚本作りも「大人向けにしよう」と、女性とか子どもとか意識しない、と言われて、こちらも腹をくくりました。(※記事末尾に注あり)
一作目に極めて近いのをやりたい、主人公は政治家にしますと。我々としては恋人がいたほうがいい、長谷川博己さんと石原さとみさんは元恋人にしましょうとか言ったんですけど、庵野さんはそういうのどんどん排除していって、人物たちのバックボーンは描かない脚本になりました。ハリウッド映画だと絶対そういうサイドストーリーとかあるわけですけどね。きわめてストイックな政治家だけの話になりました。

なんつーのか。
このインタビューでもわかるように「ともかく恋愛要素をぶち込んどけばあたる」みたいな幻想を捨てるところから始めないと日本映画が世界市場に討って出るなんて馬鹿馬鹿しい。
ハリウッド映画が「中国人出しとけば中国で公開できる」おまじないと似たようなもんかもしれないが。

恋愛をコンテンツにすればJKだとかJDだとかの客から、そこそこの利益が出るからって女生徒が先生を好きになって告白する映画とか、ツンデレ男に美少女が恋するとか、壁ドンとか、顎クイとか、もうどこまでそんな映画を作り続けるつもりなのか、と。

低バジェットで撮れる「安易な恋愛映画」が平常運転。
で時折、異端となる映画が登場してヒットになる近代の映画業界。
そもそも小さいパイを奪いに行く低空飛行の平常運転を底上げしないと映画業界を長い目で見てもどうしようもなくね?と思うんだが。

日本映画が斜陽だと言われて久しい。
即物的なヒットばかり気にして作ってるせいで、「誰がわざわざテレビドラマのスペシャル版みたいなモノを観に行くのか」と観客が感じ劇場から足が離れるのは必然。
「氷菓」を映画化するなら原作やアニメファンでも納得するキャストにすりゃあいいのになんで広瀬アリスやねん……うぅ。

まぁ、だからといって押井守みたくまともに利益のでなさそうな作品ばかり撮って一部の好事家から評価されて延命し、気付けば自己啓発チックな本ばかり出す橘玲的なスタンスは勘弁してほしいものです。
以上となります。

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