歴史の教科書から「坂本龍馬」が消える? 東大教授に聞く「歴史にロマンはいらない?」

 高校の歴史教科書に載る用語が半分になる可能性がある。14日の朝日新聞によると、「大学入試で歴史の細かい用語が出題され、高校の授業が暗記中心になっているのは問題」だとして、高校と大学の教員らで作る「高大連携歴史教育研究会」が用語の精選案を発表。知識を入試で問う用語を現在の3500語程度から約半分にすべきだとしているという。


 「気候変動」「グローバル化」などの追加が検討されている一方で、日本史分野の削減対象にあげられているのが「坂本龍馬」「大岡忠相(大岡越前)」「武田信玄」「上杉謙信」「吉田松陰」だ。いわば歴史上の“スター”だが、なぜ教科書から消える可能性があるのか。『けやきヒル’sNEWS』(AbemaTV)では、歴史学者で日本史を専門とする東京大学教授の本郷和人氏に見解を聞いた。

・坂本龍馬について

 「僕が勉強していた頃の教科書には坂本龍馬は載っていなかった。司馬遼太郎さんの小説で坂本龍馬の人気が上がってきたので、『それじゃあ教科書にも載せようか』とむしろ小説が先行した。大スターとされているが、ある歴史研究者に言わせると坂本龍馬は西郷隆盛の“パシリ”だとする見方もある。歴史学としては西郷隆盛が載っていれば坂本龍馬は必要ないということでは」


・大岡忠相(大岡越前)について

 「大岡越前はテレビドラマや『大岡裁き』では有名だが、実際の大岡忠相という人物は裁判官として有名だったわけではない。歴史事実とは異なり脚色もあるので、削ればよしという考えだと思う」


・武田信玄、上杉謙信について

 「武田信玄と上杉謙信の『川中島の戦い』は、言ってみれば地方における大名と大名との戦い。歴史の大勢に影響なしという判断だろう」


・吉田松陰について

 「吉田松陰は扱いが難しい人物で、教育者としては非常に優れていたが、思想家としてはどうなんだろうと考えられているのでは」


 しかし、「一方的に用語を削った方がいいとは思っていない」と話す本郷氏。暗記とは別の理由で子どもの“歴史離れ”が進んでしまうのではないかと指摘する。


 「僕も教科書を書いていて、子ども達に読ませることを考え大事にしているのは“物語の流れ”。しかしそういう教科書を高校の先生に見せると『我々高校の教員は、生徒たちに教科書は丸暗記しなさいと指導している。だから余計なことは書かないでくれ』と言われてしまう。僕はそれが間違いだと思っている。本来教科書に書いてある単語全部を覚えさせる必要はない。高校の先生が教科書を丸暗記させるのは、歴史用語や年号を答えさせるだけの“クイズのような入試問題”をだす学校が存在するから。だから私が歴史教科書の中に“物語”の要素を含めて叙述をしたら、『それはいりません』と切られてしまった。先生の大半は『歴史は学問だからロマンはいらない』と言うわけだけど、僕はそうではないと思っている。クイズのような試験を出す学校に合わせて、“単語を覚えさせるだけの授業が行われてしまっている現状”が悪いのであって坂本龍馬という単語が悪いわけではない。子どもたちの歴史離れが進んでいるのは、はっきり言って今の歴史教科書がつまらないからだと思う。」


 また、それによって日本史が廃れていく可能性があるとし、「今の調子でいくと、あと30年で日本史は潰れると思う。歴史はみんなに勉強してもらってこその学問なので、坂本龍馬などの用語を削除しようと大上段から言ってしまう先生方の考えがわからない」と見解を述べた。

(AbemaTV/『けやきヒル’sNEWS』より)


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