[営農+1] リンゴ園 ネズミ食害対策 フクロウ営巣今年も着々 青森県弘前市
2017年05月24日
巣の中で育つフクロウのひな(青森県弘前市で)
地元小学生と実施した下湯口ふくろうの会の観察会(青森県弘前市で)
リンゴ樹を食害するハタネズミの対策に、天敵のフクロウを呼び込む取り組みが広まっている。青森県弘前市のリンゴ園では、今年もフクロウが戻ってきた。農家と連携して調査する弘前大学は、設置した巣箱7カ所で営巣とふ化したひな16羽を確認。昨年の調査では、フクロウが営巣した園地ではネズミが70%減り、食害が発生する根雪前まで密度を抑えることも分かった。青森市や長野県にも巣箱設置の活動が広がっている。
日本に生息するフクロウ科は11種。リンゴ園でよく繁殖するのは、フクロウ目フクロウ科フクロウ属のフクロウ。北海道から九州まで生息する。同大学の東信行教授によると、繁殖中は、巣に運ぶ餌の70%以上がハタネズミで、成長期は1日3匹食べる。
フクロウの高い捕食能力を生かすため、リンゴ園にフクロウを呼び戻し、ネズミの被害を減らそうと同大学の東教授らと活動するのが「下湯口ふくろうの会」。2014年から取り組み、今年は昨年より10個増やし、巣箱63個を設置。今春5個で営巣を確認し、4個の巣箱で11羽がふ化した。
春先のネズミ生息数が少なかったためか、営巣数、産卵数ともに昨年を下回った。ただしふ化率は100%で、昨年の79%から大きく改善した。
フクロウは2~4月産卵、5月ごろ巣立つ。同大学で研究する岩手大学大学院連合の大学院生ムラノ千恵さん(39)は、昨年営巣した7カ所の巣周辺100メートル以内の7園地でネズミ(成獣)生息数を調査。営巣後は、ネズミ生息数が50~92%、平均70%減少していた。
ネズミの食害は、餌の草がなくなる根雪期に増える。冬は繁殖しないとされるため、成獣になると予想される幼獣を含めても生息密度は、4月のおよそ半分だった。
フクロウは、ネズミが多い園地を選ぶことも分かった。どの巣箱もフクロウが試し座りした形跡があり、多くの巣箱を設置したことで、餌になるネズミが多い園地を選んだとみる。
活動の輪も広がる。下湯口ふくろうの会は、地元の市立青柳小学校5、6年生17人と観察会を開き交流、巣箱作りを呼び掛ける。7月下旬には、地元住民向けの巣箱製作の講習会を開く。
同市では同会の他、15年秋から農家グループ「モホ組」が活動を開始。今年10個の巣箱を設置し、2個に営巣し5羽のひなが育った。
巣箱設置は青森市にも広まった。「浪岡グリーンツーリズムクラブ」は、昨年10個の巣箱を設置。「樽沢里地里山を考える会」も今年度、「フクロウの棲(す)む果樹園環境整備事業」で、30個の巣箱を設置する。
県外では、長野県高山村で「長野県果樹研究会高山支会ふくろうプロジェクト」が立ち上がり、巣箱32個を設置した。1個で営巣を確認したが、放棄されたという。
巣箱設置を指導し、生育調査に取り組むムラノさんは「多くの巣を設置するのが良い。巣箱の手入れでふ化率が改善する。巣のウッドチップを秋に棒でかき混ぜ、柔らかくする」と助言する。
ふ化率100%
日本に生息するフクロウ科は11種。リンゴ園でよく繁殖するのは、フクロウ目フクロウ科フクロウ属のフクロウ。北海道から九州まで生息する。同大学の東信行教授によると、繁殖中は、巣に運ぶ餌の70%以上がハタネズミで、成長期は1日3匹食べる。
フクロウの高い捕食能力を生かすため、リンゴ園にフクロウを呼び戻し、ネズミの被害を減らそうと同大学の東教授らと活動するのが「下湯口ふくろうの会」。2014年から取り組み、今年は昨年より10個増やし、巣箱63個を設置。今春5個で営巣を確認し、4個の巣箱で11羽がふ化した。
春先のネズミ生息数が少なかったためか、営巣数、産卵数ともに昨年を下回った。ただしふ化率は100%で、昨年の79%から大きく改善した。
密度半分に
フクロウは2~4月産卵、5月ごろ巣立つ。同大学で研究する岩手大学大学院連合の大学院生ムラノ千恵さん(39)は、昨年営巣した7カ所の巣周辺100メートル以内の7園地でネズミ(成獣)生息数を調査。営巣後は、ネズミ生息数が50~92%、平均70%減少していた。
ネズミの食害は、餌の草がなくなる根雪期に増える。冬は繁殖しないとされるため、成獣になると予想される幼獣を含めても生息密度は、4月のおよそ半分だった。
フクロウは、ネズミが多い園地を選ぶことも分かった。どの巣箱もフクロウが試し座りした形跡があり、多くの巣箱を設置したことで、餌になるネズミが多い園地を選んだとみる。
活動の輪広がる
活動の輪も広がる。下湯口ふくろうの会は、地元の市立青柳小学校5、6年生17人と観察会を開き交流、巣箱作りを呼び掛ける。7月下旬には、地元住民向けの巣箱製作の講習会を開く。
同市では同会の他、15年秋から農家グループ「モホ組」が活動を開始。今年10個の巣箱を設置し、2個に営巣し5羽のひなが育った。
巣箱設置は青森市にも広まった。「浪岡グリーンツーリズムクラブ」は、昨年10個の巣箱を設置。「樽沢里地里山を考える会」も今年度、「フクロウの棲(す)む果樹園環境整備事業」で、30個の巣箱を設置する。
県外では、長野県高山村で「長野県果樹研究会高山支会ふくろうプロジェクト」が立ち上がり、巣箱32個を設置した。1個で営巣を確認したが、放棄されたという。
巣箱設置を指導し、生育調査に取り組むムラノさんは「多くの巣を設置するのが良い。巣箱の手入れでふ化率が改善する。巣のウッドチップを秋に棒でかき混ぜ、柔らかくする」と助言する。
おすすめ記事
酒井 藍さん(吉本新喜劇座長) シイタケ食べて幸せに 私の食支える母親に感謝
テレビのロケの仕事で農家さんの所に行かせてもらうことはよくあります。野菜を作っている農家さんにも果物を作っている農家さんにも、これまでいっぱい行かせてもらいました。農家さんの所に行くと、記事が壁に貼ってあったりするので、この新聞のことは知っていました。お世話になった農家さんが、この記事を読んでくれると思うとうれしいです。
先日はシイタケを栽培されている農家さんの所に行きました。私、シイタケが大好きなんです。だからめちゃくちゃ幸せでした。シイタケは焼いてもおいしいし、炊いてもおいしい。どんなふうに料理してもおいしいです。ほんまに大好きなんです。岐阜に「椎茸すなっく」というシイタケチップのお菓子があって、私がシイタケ好きなのを知っているファンの方が時々買ってきてくれます。これもおいしいですよ。
食べることは大好きだし、食べ物は何でもOKと言いたいところなんですが、どうしても苦手な物が一つだけあります。グリーンピースなんです。何でか分かりませんが、なかなか克服できません。これさえ食べられるようになったら、もう「怖いもんなし」なんですけどね。
農家さんの所に行くと、これまでに出会ったことのないおいしい野菜や果物がいっぱいあって、びっくりします。一番びっくりしたのは、和歌山の農家さんの所で食べさせてもらった桃ですね。普通なら、ちょっと硬い桃はあんまり甘くないのかな、って思うでしょう?でもその桃はサクっとしているのに、めっちゃ甘いんです。でもしつこい甘さじゃなくて、爽やかです。農家さんの所には、まだみんなには知られていない、おいしいものがいっぱいありますね。
農家さんは優しい人が多いような気がします。動物もそうですけど、農産物も生き物です。生き物を相手にお仕事をしている人は、やっぱり優しくなってくるんでしょうね。
吉本新喜劇に入団して今年で10年ですけど、実はまだ奈良の実家で暮らしています。ご飯もお母さんに作ってもらっているので、料理はしません。仕事で帰りが遅くなっても、お母さんがお弁当を作ってくれています。私の食を支えてくれているお母さんには、ほんまに感謝しかありません。
帰りが遅くなっておなかがすいた時には、おにぎりでも食べてから帰ろうかなと思うこともあるんですけど、おなかがすいた状態でお母さんの料理を味わって食べたいと思うので、ひたすら我慢して、ペコペコのまま、とにかく帰ります。そのかわり帰ったら、ドカンと食べますよ。昨日もご飯2杯食べました(笑)。
今年7月に新喜劇の座長に就任しました。「座長ってこんな仕事をしてたんか」と初めて知ることもたくさんあります。座長は自分で劇を作っていかんとあかんので大変です。でも周りにいる団員やスタッフの皆さんが状況を察知してくれて、いいものにしていこうと動いてくださるのが、自分でも分かります。ほんまに救われている感じです。大先輩の桑原和男さんも、ただ居てくださるだけでもありがたいのに、いろいろと声をかけてくれます。皆さんに支えられています。ありがたいです。
大阪・梅田に新しくできたよしもと西梅田劇場で、11月14日からの新喜劇公演に出演します。お母さんの作ってくれるご飯をたくさん食べて、これからも頑張りますよ。(写真・聞き手 ジャーナリスト・古谷千絵)
<プロフィル> さかい・あい
2007年9月に「第3個目金の卵オーディション」合格を経て、吉本新喜劇に入団。ぽっちゃりキャラの「ブーブー。ブーブー。私、人間ですねん。」のギャグでテレビでも活躍中。今年7月に30歳で吉本新喜劇史上初の女座長に就任。趣味は寺社仏閣巡り、柔道、アイドル鑑賞。
2017年11月12日
畑で育つエコ燃料 エリアンサス 「JES1」育成 放棄地活用→ペレット化→CO2抑制
畑でエネルギーが作れる――。栃木県で、熱帯植物の一種、エリアンサスをペレット化し燃料として使う試みが進んでいる。二酸化炭素(CO2)排出量が減らせる上、手をかけずに耕作放棄地を活用できるのも大きなメリットだ。農地保全とエネルギー自給、地球温暖化対策を一度に結び付けられるとして、地元は期待している。
成長早く栽培容易 栃木県さくら市 実証試験が着々
植物由来の燃料は、木材を圧縮・加工した木質ペレットが代表的だが、近隣で原料が手に入らないと製造は難しい。一方、エリアンサスは畑ならどこでも育つ。一度植えれば永年で茎や葉を収穫し、燃料にできる。
農研機構などは2013年、世界的にほとんど注目されていなかったエリアンサスの国内栽培に向く品種「JES1」を育成。燃料としての品種では世界初だ。民間企業や栃木県さくら市が着目し、8ヘクタールの栽培と、市の施設でペレット燃料を使う実証を開始。地下に眠っているCO2を地上に排出することになる化石燃料と異なり、地上のCO2を増やさない。
「木質ペレットの発電所が次々とでき、木材調達は難しくなりそうだが、エリアンサスを育てれば確実」と強調するのは、栽培やペレット製造を実証するタカノ。造園や一般廃棄物処理を手掛ける同社は、今年から製造に本格参入した。
13年に耕作放棄地5ヘクタールに定植したエリアンサスは、3年目には1ヘクタール当たり20トン近い収量を上げられるまでに成長。未成園の3ヘクタールを含め、現在8ヘクタールを栽培する。うっそうと茂るが、人家や市街から遠い農道沿いに植えてあり、市民生活への影響はないとみる。
飼料作物の収穫に使う刈り取り機で春先に収穫。春に雑草防除と追肥をすれば、手をかけずに栽培できることも分かった。ペレットは、一般的な杉の木質ペレットと同等の発熱能力がある。
温泉施設に供給
今年4月、さくら市の温泉施設で利用を開始。シャワー設備に使う年間102キロリットルの灯油を210トンのペレット燃料で置き換える計画だ。現在は生産量が足りず半分だけだが、将来的に全量を切り替える。
市が期待するのは、畑の耕作放棄地対策だ。市内の耕作放棄地は、17年現在16ヘクタール。作業体系が効率化している水田と異なり、対策に頭を悩ませていた。市産業経済部は「高齢農家にも取り組みやすい。集落営農組織などに栽培を呼び掛けたい」と期待する。
CO2排出量の削減効果も大きなメリット。地方自治体には国が策定を義務付けるCO2削減目標がある。同施設ではエリアンサスの燃料で102キロリットルの灯油をペレット燃料で置き換えれば、施設の5年間の目標の8割に当たる255トンのCO2を削減できる。「CO2削減と耕作放棄地という両方の課題を解決につなげたい」(市産業経済部)と期待する。(石川大輔)
<ことば> エリアンサス
東南アジア原産のイネ科の大型の多年草で、サトウキビの仲間。生育が旺盛で、春から秋までに草丈3、4メートルまで育つ。農研機構の「JES1」は1ヘクタール当たり22~25トンと大量の茎葉が収穫でき、立毛で乾燥するなど燃料に向く。
2017年11月11日
和の心 農業文化トレビア~ン 仏大使館で
在日フランス大使館に、稲穂や唐箕(とうみ)を使った「農の生け花」が登場――。日本農業新聞は9日、創刊90周年記念事業として東京都港区の同大使館で「農の生け花」の展示・体験会を開いた。「農の生け花」愛好会の東京グループ20人が、用意した作品を展示。展示を見た参加者からは「日本の繊細な和の心と農業文化が調和していて、衝撃を受けた」など感嘆の声が上がった。展示は14日まで。
体験会では大使館職員10人らが参加。ユズ、カボチャなど約70種類の農作物と約30種類の農具を使って挑戦した。愛好会メンバーの青木幸子さん(61)は「フランスの人に日本農業の良さを伝えることができた」と喜んだ。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=NLDK0VboZ6w
■この記事の「英字版」はこちらをクリックしてください。
2017年11月10日
24時間 飛行訓練OK 人材育成や技術開発 茨城にドローン拠点
人手不足の解消に向け、農薬散布や荷物の搬送などで開発が進むドローン(小型無人飛行機)の日本最長規模の飛行訓練場を備えた研究・人材育成拠点が27日、茨城県河内町にオープンする。東京都内の民間企業が、首都圏や成田空港から近い廃校を活用。農業の技術開発を進める他、飛行訓練などでドローンを操れる人材育成につなげる。
施設の名は「ドローンフィールドKAWACHI」。全国で珍しいドローン関連の機能を集約した。運営するのは、関連技術やサービス開発に取り組む「アイ・ロボティクス」(東京都新宿区)。
同日は、同社やドローンの開発を行う企業や大学などが入る「ドローン・ラボ」、飛行訓練を行う「ドローンフィールド」がオープン。目玉の操縦訓練や実証実験ができるドローンフィールドは、利根川上に最長往復10キロのコースを用意、体育館は一年中、24時間飛行させることができる。
今後、プロの人材育成を図る「ドローン・スクール」、ベンチャー企業の育成を支援する「ドローンファーム」も整備。一般向けの体験スクールも開いていく予定。
同町で水稲40ヘクタールを栽培する山田浩之さん(53)ら地元農家と協力して使い勝手の良い農業用ドローンの開発にも取り組む。成田空港から車で20分の立地を生かし、国際会議や技術発表会などを開いたり、農薬散布などの操縦、技術コンテストを開いたりする計画だ。安藤嘉康社長は「全て集約した拠点で開発を加速し、町をドローンの先進地にしたい」と意気込む。
2017年11月09日
商品続々 「ご当地」の味 再現 地域色売りに支持集める 外食や食品メーカー
外食企業や食品メーカーが、「ご当地」を打ち出した商品を売り込んでいる。地域に根付いた料理の味を再現し、地元はもちろん全国に届け支持を集める。素材に地場農産品を用いることが多く、産地にとってもチャンスが広がる。
モスバーガーを運営するモスフードサービス(東京都品川区)は、各地の名物料理をアレンジした「ご当地創作バーガー」を11月下旬まで期間限定で販売する。北海道北見市の焼き肉のたれをヒントにした「北見しょうゆタレとんかつバーガー 北海道産ポーク使用」(430円)や、埼玉県秩父市のかつ丼をイメージし、県名産の「深谷ねぎ」も用いた「秩父わらじカツバーガー 深谷ねぎ味噌ソース」(同)を展開する。
2年前に開始した試みで、全国の店舗スタッフからアイデアを募った。今年は「揚げもの」をテーマに、1000件超の応募から4品を商品化した。「ご当地料理はストーリー性がある。スタッフが関わることで販売意欲も高まる」と同社。各商品とも120万食の販売を見込む。
「ご当地鍋」を家庭で手軽に作れる料理キットを考案したのは、食材宅配のヨシケイ開発(静岡市)。埼玉県和光市商工会が主催するニッポン全国鍋グランプリで上位入賞した各地の鍋物料理を宅配メニューに導入。第1弾として、千葉県東金市の「家康鷹狩り鍋」(4人前、2176円)を7日、全国で発売した。
徳川家康のタカ狩りをイメージした鶏肉や豚肉を具材に、スープには市特産品「東金黒豆みそ」の香ばしさや甘味を生かした。野菜は県内JAから調達。同社がご当地鍋を仕掛けるのは初で、目標13万食を掲げる。年内にさらに2品を投入する予定だ。
コンビニエンスストア大手のローソン(東京都品川区)は全国12地域の食材を用い、名物の味を再現した鳥の唐揚げ「ご当地からあげクン」(216円)を販売する。東京都の練馬大根おろしドレッシングを使った「おろしぽん酢味」や、徳島県産スダチを用いた「ひろたのぽんず味」など、さっぱりした味の商品が好調という。
2017年11月09日
営農の新着記事
害虫の薬剤抵抗性抑制 「世代内散布」が有効 農研機構
農研機構は14日、害虫の薬剤抵抗性が起こりにくい新たな散布方法を発表した。散布方法は、同じ世代で有効成分の異なる複数の殺虫剤を使う世代内散布。新農薬の開発には膨大なコストと時間がかかるため、成分を長く効率的に利用できると期待される。
2017年11月15日
スマホで分かる収穫適期 樹上の果実を判定 眼鏡式端末に応用へ 秋田県立大
秋田県立大学は14日、果実の収穫適期を果皮の色で判定する手法を確立したと発表した。スマートフォン(スマホ)のカメラで圃場(ほじょう)を写すと、果実ごとにカラーチャートの数値を測定し、数値から収穫を判定する。光量が減る曇りの日などに関係なく測定が可能で、同大によると、露地栽培で樹上の果実を判定する技術は初めて。新規就農者や新人従業員などの補助、一定品質をそろえた果実の収穫などが可能になるとみる。実証を進め、製品化を目指す。
県果樹試験場、県産業技術センターと協力して開発。画像による判定は、変化する自然光の環境でも使える。圃場を撮影すると、果実を自動で認識し、日当たりや陰などの環境条件を基に補正。カラーチャートの数値を表示し、出荷基準の数値であれば収穫する。
開発はリンゴを対象に始めた。側面のカラーチャート6段階と、底部のがく周辺の地色8段階を基に測定する。測定は、果実の側面、地色のどちらかでも可能という。
スマホの専用アプリとして開発したが、操作で片手がふさがる課題がある。作業性を考え、カメラとモニター機能を持った眼鏡式端末で、画像を確認しながら収穫作業ができる形での実証を進める。
同大学システム科学技術学部の石井雅樹准教授は「一番の課題は人手不足。誰でも収穫できる仕組みを求めていた。高齢化が進む中、省力化で産地を支えたい」と話す。手法は、他の果樹や野菜、花きへの応用も可能とみている。
科学技術振興機構などが同日、東京都千代田区で開いた新技術説明会で発表した。
2017年11月15日
芽切り温度の時期に刺激 原木シイタケ増収 ナイロンコード式刈り払い機 宮崎県
宮崎県林業技術センターは、ナイロンコード式の刈り払い機でほだ木を刺激してシイタケを増収する方法をまとめた。気温が各種菌の芽切り温度になったころ刺激を与える。品種は、低温性、または、低中温性で効果的だった。ほだ木の年数や刺激の時期にもよるが、県内の生産者での試験では、3年ほだ木で1000本当たり4万6000円以上の増収効果が認められた。
1000本当たり4万6000円超
発生量が鈍ってきた古いほだ木に刺激を与えるとシイタケの発生が促されることは知られていた。ほだ場で刈り払い機による除草をすると、並べたほだ木の下の部分に刃が当たる。すると下の方からのシイタケの発生が多い、という話もあった。
刈り払い機は、ひも状の刃を回転させてほだ木の上から下までを均一にたたくようにして一往復する。ほだ木全体を薄く、満遍なくたたく。
これまでの試験では、増収効果が大きいのは3年や4年と古いほだ木だった。新しいほだ木では、ほとんど違いが見られなかった。刺激する時期にもよるが、刺激なしのほだ木に比べて4年ほだ木は62%増収したデータも出ている。
刺激による効果は品種によって感度が違うことも分かった。中低温性よりも低温性、低中温性で「効果の差が大きくなる傾向が見られた」としている。タイミングも品種で異なる。これまでの試験では、芽切り温度の時期に刺激することで、大きな効果があるという。
経営面では、3年ほだ木で1本当たり13・55グラムの収量増になり、売上金額にして46・73円増と試算。経費が0・7円かかっているので、1000本で4万6030円増収になるとしている。
同センターでは10年前からなたで切れ目を入れたり、チェーンソーで上面を切り落としたりするなどの刺激を与える方法を試してきたが、今回は実際の生産者のほだ場を使った試験でも効果を確認した。
2017年11月14日
鳥インフルの冬 間近 韓国 「野鳥から検出」 既に12件
今年も大陸から渡り鳥の飛来が本格化する季節がやってきた。韓国では10月、野鳥のふんから鳥インフルエンザウイルスが相次いで検出され、日本でも6日、松江市で前日に回収した野鳥の死骸について、簡易検査で陽性反応が確認された。確定されれば今シーズン初の検出となる。高病原性鳥インフルの発生阻止に向け、防疫対策の強化が急務となっている。
早くも警報「深刻」 冬季五輪で防疫を徹底
韓国では昨シーズン、高病原性鳥インフルが計383件、殺処分が3787万羽を超す過去最大規模の流行となった。
今季は家禽では高病原性鳥インフルが発生していないが、10月10日に野鳥のふんから低病原性ウイルスを検出。同31日に京畿道で2件、11月2日には忠清南道で、野鳥のふんから相次いで高病原性の可能性もあるH5型ウイルスが検出されたことを受け、警戒を強めている。
今季に入っての野鳥からのウイルス検出は12件。同国は従来、渡り鳥が増える10月から翌年5月までを高病原性鳥インフルの重要な防疫時期としている。今年は10月から、危機警報を最高段階の「深刻」に引き上げ、渡り鳥の監視強化や人の移動制限、該当地域の消毒などを進めている。
韓国では昨秋も、野鳥のふんから低病原性ウイルスが検出されていた。低病原性と安心して対策が遅れ、高病原性ウイルスのまん延につながったと反省する。韓国農林畜産食品部は「直近の3件は検査中で高病原性ウイルスの恐れがあり、油断できない状況」(鳥インフルエンザ防疫課)と話す。
来年2月に開催される冬季五輪・パラリンピック平昌大会を控えていることが背景にある。開催地に近い一部地域では、アヒル飼養を中止する農家も。政府が1羽510ウォン(51円)の補助金を提供し、11月から来年2月まで飼養しないよう呼び掛けている。
厳寒の作業に備え 日本 今季初「陽性」
環境省は6日、松江市で回収した野生のコブハクチョウ1羽の死骸について、簡易検査で鳥インフルウイルスの陽性反応が出たと発表した。確定検査の結果は1週間程度で判明する予定。確定すれば今シーズン初の検出だ。
昨シーズン、国内では9道県の12農場で高病原性鳥インフルが発生。殺処分された家禽は166・7万羽となった。野鳥では昨年、野鳥や死骸、ふんなどから過去最多となる218例の感染が確認された。家禽に感染したのは全て野鳥と同じH5N6亜型ウイルスで、韓国など大陸で猛威を振るったタイプと同型だった。
昨年11月に初めて高病原性鳥インフルが発生した青森県。厳寒期とあって、着用する防護服が薄手のため作業担当者は3重に着用して寒さをしのいだという。
県は今年度、防護服の数を1・5倍に増やした他、防寒具も用意した。資材の配備場所も県内1カ所だったが、家禽の多い地域にも配備。県の防疫対応マニュアルも見直し、発生時の連絡や指揮体制を強化。7月に生産者などを対象に開いた研修では、畜舎周りのチェックなどウイルスの侵入防止策の徹底を呼び掛けた。
農水省は9月、都道府県に対し、発生予防策として特に人や車両、野生動物を介してウイルスが家禽農場や畜舎に侵入しないようにするなどの対策を通知。併せてウイルスの拡大防止へ発生の初動対応、人員や防疫資材の確保の強化も呼び掛けた。
専門家らの調査によると、渡り鳥の飛来ルートは複数あり、全国で感染リスクがあるという。「今秋以降も、引き続き厳重な警戒が必要だ」(同省)と強調する。
2017年11月07日
梨の葉“紅茶”開発 機能性成分 豊富に 鳥取大学大学院など
鳥取大学大学院連合農学研究科と県内企業が協力し、梨の葉を使った“紅茶”を開発した。梨葉には茶葉の3倍の抗酸化力が含まれている機能性も発見。耕作放棄園を活用し、新たな特産として商品化を目指す。
同県は梨「二十世紀」が特産だが、生産者の高齢化などで面積は減少傾向にある。植物病理学専門の児玉基一朗教授は、梨を振興するため、着眼点を変えて葉に着目。2010年から商品化に向けた研究を始めた。
これまで梨葉に着目した研究はなく、葉の成分は特定されていなかった。児玉教授らが調べると、ポリフェノールの一種で抗酸化や細胞活性化の作用が期待される3・5―ジカフェオイルキナ酸や美白効果で知られるアルブチン、がんや生活習慣病の予防効果が期待できるクロロゲン酸を多く含むことが分かった。
桃やビワ、柿、ブルーベリーなどの葉も調べたが、梨が突出して高かった。抗酸化力(ORAC)は茶葉の3倍の機能性を持っていた。
ただ、ポリフェノールが多いため自然乾燥では酸化重合し葉が黒く変色し、機能性成分も失われる。同大学では成分を保てる処理方法も開発し、粉末やエキスにして使えるようにした。
梨の葉自体には風味がほとんどないため、県内で茶の製造を手掛ける企業と協力。梨葉3割に梨の実やカモミール、ルイボスなどをブレンドし、梨の香りをほのかに感じる飲みやすい紅茶風に仕上げた。
児玉教授は「葉の素晴らしい機能性の素材を知ってもらい、鳥取県の活性化につなげたい」と力を込める。原料の安定確保が課題で、葉を取りやすい木の仕立て方なども研究していく。今後は、サプリメントや化粧品などへの活用も検討する。
2017年11月06日
濃厚飼料に大麦OK 裏作、自給向上へ 早刈りで加水不要 群馬県畜試が開発
群馬県畜産試験場は、大麦が国産の濃厚飼料の原料として使えることを明らかにした。麦は水稲裏作で栽培できるため、表作の飼料用米や子実トウモロコシと組み合わせれば、二毛作で濃厚飼料が自給できる。稲ソフトグレインサイレージ(SGS)に比べ生産費が低く抑えられ、手間がかからない。全国でも大麦子実の濃厚飼料化の研究は珍しい。同試験場は、タンパク含量が高く輸入の配合飼料に代わる濃厚飼料として期待する。
2017年10月29日
高速高精度汎用播種機を披露 増収・省力 同時に 最大時速10キロ 正確な点播作業 農研機構など
農研機構とアグリテクノ矢崎は、米、麦、大豆、ソバなど穀物種子を最大時速10キロで播種(はしゅ)できる「高速高精度汎用(はんよう)播種機」を開発した。60馬力以上のトラクターで使え、市販の播種機に比べ最大2倍の速さで、1時間当たり50~60アール分の播種ができる。2018年以降の発売を目指す。26日に茨城県桜川市で現地検討会を開き、時速9キロで小麦の播種作業を披露した。
汎用播種機は、条間30センチの6条まき。溝切り、播種、施肥、土寄せ、鎮圧が同時に作業できる。播種部では「分離プレート」という、一定間隔に切れ込みが入った円盤が回転していて、ホッパーから落ちてくる種子を、切れ込みで定量受け取り、播種していく。
切れ込みの形や大きさが違うプレートを交換することで、多様な穀物や粒数に対応する。株間は14~23・5センチの6段階で可変。種子を正確に1カ所に置く点播ができ、水稲の乾田直播栽培では、倒伏軽減効果も確認した。
検討会では、水稲を収穫した圃場(ほじょう)で小麦を不耕起播種した。参加者らは、鎮圧後の土壌を掘り起こすなどして播種を確認。高速作業に加え、精度の高い点播に驚いていた。小麦、大豆、ソバで開発に協力した同市の菱沼英昌さん(78)は「1台で、2台分の効率がある。速度を出しても苗立ちが良かった」と評価する。
同機構によると、市販の播種機の作業は、最大時速5キロだが、汎用播種機は、水稲で時速10キロが上限。小麦は同9キロ、大豆は同7キロが目安という。乾田直播では、時速8・6キロで苗立ち率7割だった。点播で真空播種やグレーンドリルなど他の播種方法に比べ、倒伏が少なかった。「増収と省力化が一度で実現できる」と、作付面積20ヘクタール以上の大規模農家での利用を考える。
価格は400万円以下での販売を目指し、8条まきの機種も開発中という。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=ulcBqwL7TGE
2017年10月27日
血圧上昇抑制 機能性表示で ナス消費拡大へ 高知県、信州大など研究
血圧の上昇を抑える効果が見込める「コリンエステル」を多く含むナスで、機能性表示の認定を目指した研究が本格的に動きだした。信州大学や生産量日本一を誇る高知県の農業技術センターなどが「ナス高機能化コンソーシアム」を結成し、共同研究する。機能性表示に向けたデータ収集やメカニズムの解明、好適品種の選定、実証栽培に取り組み、機能性表示の認定で、ナスの消費拡大につなげていく。
2017年10月26日
「創エネ」組織を発足 農家の収益向上に 京大とNTTデータ経営研
京都大学農学研究科とNTTデータ経営研究所は25日、農産物とエネルギーの両方を作る「エネルギー創造・利用型農業」の実用化・普及に向けた組織を立ち上げたと発表した。名称は「グリーンエネルギーファーム(GEF)産学共創パートナーシップ」といい、ヤンマーやパナソニック、和郷園、京都府など同日の時点で23団体が参加。京都府木津川市にある同大学付属農場を拠点とし、研究開発や制度設計、政策提言などをしていく。
2017年10月26日
「みちびき」電波受信 吹雪の中 感度良好 トラクター自動操舵実演 誤差1.5センチで走行
今月、4号機の打ち上げに成功した準天頂衛星「みちびき」。内閣府は23日、2018年度から日本版衛星利用測位システム(GPS)として運用を始めるため、「みちびき」の電波でトラクターの自動操舵システムを動かす実演会を、北海道上富良野町で開いた。既存の高精度衛星測位システム(RTK―GNSS)並みの誤差数センチで走行してみせた。RTK―GNSSと異なり、位置情報に必要な地上の基地局が不要で、山間地でも使えるとアピールした。
4基体制になった「みちびき」は、常に1基が日本のほぼ真上にあるため、正確な位置情報を受信できる。農機メーカーなど50人が参加した実演会では、ヤンマー、クボタ、井関農機が、トラクターを自動走行させ、精度や作業効率を紹介した。
実演会では雪が吹き荒れる中でも、電波の受信感度は良好。誤差は実測値で1・5センチと、実演したRTK―GNSSと精度が同じことを確認した。
北海道を中心に導入が進むトラクター向けGPS自動操舵システム。精度の高い位置情報が必要なため、地上の基地局で衛星からの位置情報を補正するRTK―GNSSが利用されている。しかし、基地局の設置や、山間部、防風林の近くで精度が落ちるなどの課題がある。
道技術普及課によると、GPS自動操舵システムの出荷台数は16年度までに3030台で9割以上が道内向け。ロボット農機を研究する北海道大学の野口伸教授は「みちびきを使えば本州の山間部でも高精度な位置情報が得られる」と説明。受信装置の低コスト化も進め、「既存のGPSより安くなれば、全国普及につながる」と期待する。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://youtu.be/XFN0UM1TrHU
2017年10月24日