昨シーズンの冬のこと。
ぼくは群馬県の赤城山に登山をしに行って滑落し、足首を折ってレスキューヘリで病院まで運ばれる事態となった。 めったにあることではないこの経験を、強い自戒を込めて語り残したいと思う。 ※注:山岳救助は命がけの非常に危険な任務です。この記事を読んで、「レスキューって簡単に来てくれるんだ」とか絶対に思わないでください。
1978年、東京都出身。漂泊の理科教員。名前の漢字は、正しい行いと書いて『正行』なのだが、「不正行為」という語にも名前が含まれてるのに気付いたので、次からそれで説明しようと思う。
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雪山、と聞くとハードルが高そうに思えるけど、低山なら実はそうでもありません。 服は夏山装備にフリースを着込むだけでOK。あとは軽アイゼンを付けるだけで、一面の雪景色はあなたのもの! キャプション
……というような情報を鵜呑みにして、危険性を甘く見て向かった結果、僕はレスキューヘリで雪山から救出されることになった。
そのあとの入院生活は2週間におよび、各方面に甚大な迷惑をかけることになった。 手術が想定外にきつくて、しばらく動けなかった
以下、僕がレスキューされるまでの当日のいきさつを振り返るので、どこに事故の原因があったのか、画面に蛍光マーカーで線を引きながら読んで欲しい。
「ファミリー登山の山だから、大丈夫だよ」群馬県の赤城山。標高1828m。
日本百名山には入っているが、湖畔の1360m地点から始まる登山コースは短く単純で、典型的なファミリー登山の山だ。 湖畔からの赤城山登山コース。(カシミール3Dで作成)
メンバーは学生の頃から登山に行っているいつもの仲間で、経験豊富とまではいかないが、それなりに山には慣れている。何度かアルプスに行ったこともあるし、赤城山も夏なら登ったことがある。
しかし雪山は未経験だったため、「3人で雪山ハイキングから挑戦してみよう」と、僕が誘うかたちで行くことになり、晴れた3月の朝に新宿駅を出発して、僕らは赤城山の入り口までたどり着いた。 入り口でアイゼンを靴に取りつけます
雪山の装備「アイゼン」とは?滑り止めのために取り付ける「爪」のこと。これは本格的なアイゼン
夏山に残る雪を「雪渓」と言うが、僕は何度か雪渓を小さいアイゼン(軽アイゼン)で越えたことがあったので、
「今回は雪山ハイキングだし軽アイゼンで大丈夫だと思う」と友達に伝えた結果、2人は軽アイゼンで山に入った。 最初の頃は確かに、軽アイゼンでも問題はなかった
しかし中盤以降、思ったよりも雪が深く、軽アイゼンの友達たちはまあまあに苦労していて、これは間違ったアドバイスをしたなと申し訳なく思っていた。
だが、自分に関しては本格アイゼンを装備していて、降り固まった雪の固さもほどよく、滑る気配すら無かった。 後半になると、4本爪の軽アイゼンは無力に等しかった
とはいえこの日は晴れた3月の日。
積雪が凍りついていることもなく、ちょっと汗をかいたぐらいの運動量で、僕らはあっという間に尾根にたどり着いた。 眺めも最高! あとは尾根歩き、ほのぼの!
尾根付近はフィールドも広く、他の登山客の中には「ヒップそり」と呼ばれるおもちゃのそりで斜面を滑って遊ぶ人もいて、それがとても楽しそうに僕の目に映った。
かくして、無事に予定通り山頂へと着いた僕らは「腹減ったー!」と叫びながら昼ごはんを作り、高校生のような勢いで山盛りのパスタを食べた。
雪をコンロで溶かしてパスタを茹でて……
あっという間に冷めるので、一気に食べる!
いいね!いいね! 雪山いいね!
赤城山に対して500いいねをグーで押し付けたいぐらいの「雪山挑戦、大成功!」である。 あとは下山だけだ。ほぼまっすぐ一本道の下山道を僕らは下り始めた。 危険個所は読み取れたでしょうか以上が事故直前までの僕の行動である。
マンガや映画だったら、「この人、このあと確実に不幸に遭うな」という予兆が端々に見てとれるだろう。 そのとおり、次のページからこの登山行は暗転する。
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