「ぼくの前には/白く大きな/キャンバスがある(略)苦しくても/悲しくても/自分の人生だから/自分で描く」。重度障がいがありながら画家・詩人として活躍し、13日に亡くなった仲宗根正満さん(61)の詩。あふれ出る生命力を感じる

▼詩集「かたつむりの詩」の一編。ゆっくりと歩む「かたつむり」と自身を重ねた。1歳のころかかったはしかが原因で、手足と言語の障がいを負うも、絵画と詩の才能を開花させていった

▼静物画や風景、人物、動植物、草花…。キャンバスに広がる繊細かつ迫力ある構図や色彩に目を奪われる。座いすに腕を縛られて天井を仰ぐ少年を描いた作品は、自身の境遇を投影させた。自身と向き合う姿勢が、見る者を魅了してきた

▼文芸誌に掲載した「絵は言葉」と詠んだ詩がある。「絵は人の心の中に語りかけてくる」。わずかに動く右手首で時間をかけてつむぐ「言葉」は、生きる努力と心のひだが伝わる

▼多才な仲宗根さんを支えてきたのは家族。多くの旅や展示会に連れ出したという。父親を「太陽のように強く光り輝いてみえる」。母親の手を「春のようなにおいがする」と詠んだ。なんとも温かい

▼だれにでも人生に迷い、その意味を問うときがある。ゆっくりだが着実に人生を歩むかたつむりの足跡に触れるとき、多くの希望を与えてくれる。(赤嶺由紀子)