トランプ米大統領の長いアジア歴訪は、トランプ流「脱欧入亜」が迷走していることを印象付けた。「米国第一主義」を振りかざし、パリ合意など国際合意から脱退するトランプ外交は、欧州の総反発を買っているが、アジアでも表面的な歓迎はともかく、ほとんど受け入れられていない。焦点の北朝鮮への対応では、米中で足並みの乱れが目立った。
環太平洋経済連携協定(TPP)は11カ国で合意が成立し、保護主義に傾斜する米国抜きに自由貿易体制が形成される時代を浮き彫りにした。何より、トランプ大統領が習近平(シー・ジンピン)国家主席のもとで強権化する中国との「新大国関係」を事実上、容認するなど、むしろ中国の存在感を示す外交舞台になった。
「米中新大国関係」を容認
トランプ・アジア外交がもたらした最大の特徴は、中国の悲願であった「米中新大国関係」をトランプ大統領が事実上、容認したことだろう。習近平国家主席はオバマ前大統領との度重なる会談でもすげなくされ続けてきたこの「新大国関係」をついに獲得したのである。
そこには、習近平政権の周到な準備と戦略があった。共産党大会で長期の権力基盤を固めた習近平国家主席にとって、場当たり的でメンツにこだわるトランプ大統領は組し易い相手だったのかもしれない。北京での宿舎に世界遺産である故宮をまるまる提供し「国賓以上」の扱いをして感激させた。
中国政府主導で米中企業がまとめた2535億ドル(約28兆円)規模の巨額契約は、為替操作や貿易不均衡などといった中国への不満を和らげるのに役立ったに違いない。対米投資や米国製品の大量購入などのなかには、既存契約分や交渉段階のものが含まれるが、当初見込みを上回る大規模契約だったのはたしかである。
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