世界最大のEMS(電子機器の受託製造サービス)である台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)傘下入りから1年3カ月、シャープの業績回復が鮮明になってきた。10月27日に発表した2017年4~9月期の連結最終損益は347億円の黒字(前年同期は454億円の赤字)となり、リーマンショック以前の水準に回復。18年3月期の最終損益見通しも690億円の黒字(前期は248億円の赤字)と、従来予想から100億円引き上げた。
けん引役は、液晶パネルやテレビから成る「アドバンスディスプレイシステム」部門だ。液晶パネルはスマートフォン用やタブレット用が好調に推移し、テレビは中国で大幅に販売が拡大した。液晶やテレビはかつて経営危機に陥った主要因の事業だったが、ホンハイ傘下入りしたことで販路が拡大したほか、部品調達などのコストダウンが進んでいる。
そんなシャープが現在急ピッチで取り組んでいるのが高精細な「8K」事業へのシフトだ。8Kは、現行のフルハイビジョンの16倍、普及しつつある「4K」の4倍の解像度を持つ。今年5月、ホンハイ傘下後初の中期経営計画で「AIoT」(AIとIoTを組み合わせたシャープの造語)と共に成長の柱として打ち出して以降、商品化を急いでいる。その中心となる8Kテレビは10月に中国で発売し、国内でも12月に投入を予定している。
11月7日には戦略的に重要な意味を持つ商品が発表された。業務用の8Kカメラだ。
低価格の業務用8Kカメラに参入
業務用カメラは、「大昔には手掛けていたようだがほぼ新規参入といえる商品」(シャープで電子デバイス事業本部長を務める森谷和弘常務)。新商品は1台で8K映像の撮影から収録、再生などができ、高精細な8K映像を約40分連続で収録可能という。映像機器メーカーのアストロデザイン(東京都大田区)と共同開発した。
シャープが新商品の「売り」に掲げるのが880万円(税別)という価格だ。8K事業を推進する西山博取締役は「従来製品とは一桁違う、導入しやすい価格を実現した」と胸を張る。20年度末までに業務用カメラ市場の約1割を占める3万台の販売を目指す。
「決して赤字ではない」(シャープの森谷常務)と言うものの、戦略的に低価格を打ち出したのには理由がある。8Kテレビ普及のカギを握るコンテンツ不足を補うためだ。
国内では18年末に4Kと8Kの衛星放送が開始されるが、8Kに対応するのはNHKのみ。民放大手や動画配信大手は4K対応にとどまる。つまり、8Kを推進するには圧倒的にコンテンツがないわけだ。シャープは自ら業務用カメラを手掛けることで8Kを推進する「仲間作り」を急ぐ考えだ。
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