シャープ、「8K」普及は誰のためか

2017年11月15日(水)

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 世界最大のEMS(電子機器の受託製造サービス)である台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)傘下入りから1年3カ月、シャープの業績回復が鮮明になってきた。10月27日に発表した2017年4~9月期の連結最終損益は347億円の黒字(前年同期は454億円の赤字)となり、リーマンショック以前の水準に回復。18年3月期の最終損益見通しも690億円の黒字(前期は248億円の赤字)と、従来予想から100億円引き上げた。

 けん引役は、液晶パネルやテレビから成る「アドバンスディスプレイシステム」部門だ。液晶パネルはスマートフォン用やタブレット用が好調に推移し、テレビは中国で大幅に販売が拡大した。液晶やテレビはかつて経営危機に陥った主要因の事業だったが、ホンハイ傘下入りしたことで販路が拡大したほか、部品調達などのコストダウンが進んでいる。

 そんなシャープが現在急ピッチで取り組んでいるのが高精細な「8K」事業へのシフトだ。8Kは、現行のフルハイビジョンの16倍、普及しつつある「4K」の4倍の解像度を持つ。今年5月、ホンハイ傘下後初の中期経営計画で「AIoT」(AIとIoTを組み合わせたシャープの造語)と共に成長の柱として打ち出して以降、商品化を急いでいる。その中心となる8Kテレビは10月に中国で発売し、国内でも12月に投入を予定している。

 11月7日には戦略的に重要な意味を持つ商品が発表された。業務用の8Kカメラだ。

シャープが手掛ける業務用8Kカメラと家庭用8Kテレビ

低価格の業務用8Kカメラに参入

 業務用カメラは、「大昔には手掛けていたようだがほぼ新規参入といえる商品」(シャープで電子デバイス事業本部長を務める森谷和弘常務)。新商品は1台で8K映像の撮影から収録、再生などができ、高精細な8K映像を約40分連続で収録可能という。映像機器メーカーのアストロデザイン(東京都大田区)と共同開発した。

 シャープが新商品の「売り」に掲げるのが880万円(税別)という価格だ。8K事業を推進する西山博取締役は「従来製品とは一桁違う、導入しやすい価格を実現した」と胸を張る。20年度末までに業務用カメラ市場の約1割を占める3万台の販売を目指す。

 「決して赤字ではない」(シャープの森谷常務)と言うものの、戦略的に低価格を打ち出したのには理由がある。8Kテレビ普及のカギを握るコンテンツ不足を補うためだ。

 国内では18年末に4Kと8Kの衛星放送が開始されるが、8Kに対応するのはNHKのみ。民放大手や動画配信大手は4K対応にとどまる。つまり、8Kを推進するには圧倒的にコンテンツがないわけだ。シャープは自ら業務用カメラを手掛けることで8Kを推進する「仲間作り」を急ぐ考えだ。

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「シャープ、「8K」普及は誰のためか」の著者

佐伯 真也

佐伯 真也(さえき・しんや)

日経ビジネス記者

家電メーカーで約4年間勤務後、2007年6月に日経BP社に入社。日経エレクトロニクス、日経ビジネス編集部を経て、15年4月から日本経済新聞社証券部へ出向。17年4月に日経ビジネス編集部に復帰。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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