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同じ小3なのに、身体の成熟年齢5歳と11歳の子がいる? 「うちの子小さくて」の前に知っておきたい生物学年齢とは

2017年11月13日

キーワード:ゴールデンエイジ小学生生物学年齢身長

うちの子は体が小さくて、サッカーをしてもすぐに当たり負けしてしまう。走っても追いつかれてしまうし...。友達の○○くんは背が大きくて、同じ年とは思えない...。そのようなことを思ったことのある人も多いのではないでしょうか。

なぜ、同じ年齢でも運動能力や体力、体格の違いが現れるのでしょうか? 30年以上に及ぶスポーツトレーニングと強化育成システムの指導、教育、研究実績を持ち、子どもたちの育成に多くの知見を持つ小俣よしのぶ氏に伺いました。(取材・文:鈴木智之)

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(身体成熟度は欧米人よりアジア人の方が、男子より女子の方が早いそうだ)

■同じ学年なのに1年生と6年生ほどの開きがある

児童幼児期の成長スピードは「早熟」「晩熟」という言葉もあるとおり、人それぞれです。加えて「生物学年齢」での差がつきやすい時期でもあります。小俣さんによると「生物学年齢と暦年齢は違うため、上下約2~3歳、最大で約6歳の開きがある」そうです。

生物学年齢とは、暦年齢(生まれてから経た年数、プロフィールなどに記載する「年齢」のこと)に対して身体の成熟度がどのくらいかを診断し、割り出された年齢のことです。

つまり、小学3年生(8歳)の学年に、生物学年齢で見ると5歳と11歳の子が同居していることになります。

小俣さんは「生物学年齢の差が、子どもの運動やスポーツ活動の場面での運動能力や身体形態、体力の差になり、いろいろな問題が起きています」と言います。

「たとえば、背が高くて体力も強く運動能力に優れ、強いシュートを蹴れる子がいたとします。その子は生物学年齢が同学年の子よりも上なので、成長が早く進んだ結果、強いシュートが打てるんです。小学3年生のチームに6年生が入っているのと同じようなことです。そのため、まず親や指導者は『生物学年齢と暦年齢は異なることがある』という認識を持って、子どもたちに接することが大切だと私は考えています」

■オランダやドイツではすでに指導現場に普及

小俣さんが調べたところによると、オランダのアカデミーでは、子どもたちの試合映像が流れる時に、暦年齢とともに生物学年齢も表示され、指導者はそれも参考に加えて選手を評価するそうです。

もともと、これらの理論は旧東ドイツの研究にもとづいており、ドイツサッカー協会の指導マニュアルの基礎理論にもなっているTrainingslehre(一般トレーニング学)に「生物学年齢は最大で約6歳の差があるので、それに留意することが必要だと書いてある」(小俣さん)と言います。

子どもの成長スピードには個人差があり、発育発達学はもとよりスポーツ科学からもそれが明らかになっています。小俣さんは「小学4年生頃から、周りについていけなくてサッカーやスポーツを辞めてしまう子もいますが、そこを乗り越え中学や高校で伸びる子もいます」と説明します。

「小学4年生の頃から、『サッカーを辞めて受験勉強に専念します』という保護者の方がいるのですが、その裏には、自分の子どもがあまり上手にプレーできず、試合にも出られない、身体も小さく体力も低いので『向いていないのかも』と思って辞めていくケースがあります。ただ、先程も申し上げたとおり、生物学年齢と暦年齢にはズレが生じます。最大6歳の差が生じる可能性があり、そのアドバンテージやハンデが運動やスポーツ活動に影響しやすいので、10歳のときにその子がスポーツに向いている、向いていないとジャッジするのは時期尚早ですし、実際不可能です」


■保護者が生物学年齢と暦年齢の違いを理解することが大切

では保護者の立場から見た時、このような状況に陥った子どもに対して、どのように接すればいいのでしょうか?

「まずは保護者が生物学年齢と暦年齢の違いや差を理解することが大切です。十代後半に差し掛かるころには身長や体重、体力の差も縮まってくるので、サッカーをしている子であれば、その頃には周りに追いつき、楽しめるようになります」

保護者の立場としては、長期的な視点を持って、サッカーに向きあうように導いてあげるのも、ひとつの方法かもしれません。また、10歳前後は「ゴールデンエイジ」と呼ばれる年代であり、「少しでも早くサッカーを始めたほうがいいのでしょうか?」という質問が、小俣さんの元へ届くそうです。

「ゴールデンエイジ」という言葉が一般化したのは、「ゴールデンエイジ理論」という考え方に端を発します。「ゴールデンエイジ理論」とは運動学習最適期を説明する理論で、9歳~12歳の間に神経系器官の量が成人レベルに達するという「スキャモンの発育曲線」を元に提唱されたものです。暦年齢の9歳~12歳が運動やスキル習得に適した年代(運動学習最適期)と述べています。

しかし、小俣さんはゴールデンエイジ理論の裏付けとなる、スキャモンの発育成長曲線に懐疑的な視線を向けます。

「前提として、スキャモン博士はスポーツ科学者ではなく解剖学者です。つまり、スポーツのために研究をしていた人ではないんですね。この研究は1930年に発表されたもので、当時はスポーツ科学という分野がありませんでした(ちなみにスポーツ科学が誕生するのは1950年代ごろです)。たしかに、12歳で脳の神経量が100%に達しますが、スキャモンの理論で言うと、全員が12歳の段階で運動やスポーツ活動をしたら一定の運動能力を獲得しなければおかしいですよね。でも、実際はそうではありません。運動が得意な子、そうでない子、見たものをすぐに再現できる子もいれば、習得に時間がかかる子中学生ぐらいから伸びる子、さらに性差もあります」

次ページ:ゴールデンエイジ理論は現代の子に当てはまらない!?

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文:鈴木智之

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