「パラダイス文書」に記されたすべての企業、人物名がまもなく世界中で公表へ ICIJ記者寄稿
|
シッラ・アレッチ/イタリア出身。「ラ・サピエンザ」ローマ大学卒、2009年にJ-School入学。ICIJと日本メディアとの初コラボとなったルポ「日本のアスベストの真実」を10年、週刊朝日に発表。11年ブルームバーグニュース東京支局での勤務を経て、米コロンビア大学へ入学。ハフィントンポストの調査報道部などで勤務したあと、フリーのジャーナリストとして活動。国際的な租税回避問題を暴いた「パナマ文書」では国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)で日本担当チームの一員となる。現在はICIJで記者とアジアのパートナー・コーディネーターを務めている。著書は「報じられなかった パナマ文書の内幕」(双葉社)。
世界を揺るがした「パナマ文書」から1年あまり経った11月5日、新たに発表された「パラダイス(天国)文書」と呼ばれる調査報道が全世界を震撼させている。
【写真はこちら】パラダイス文書にはあのロック・スターの名前も!
いわゆるタックスヘイブン(所得税は極めて低いか、0の租税回避地)とはスペイン、イタリア語などいくつかの言葉で「税の天国」とも呼ばれているので 、今回は「パラダイス文書」と名付けられた。
税金逃れを行なっていた著名人、企業を暴いたパラダイス文書に掲載された世界の首脳や閣僚、王室関係者らの名前は47カ国120人以上に上った。
アメリカのトランプ大統領が日本をツアーしていた時、世界中の読者や視聴者はウィルバー・ロス商務長官が複数の法人を介してロシアのプーチン大統領に近いガス会社に投資していたことを知った。
ロス氏以外にもバミューダ諸島に設立された資源会社の役員を務めていた鳩山由紀夫元首相、カナダ首相の腹心や英国のエリザベス女王らの名前が次々と報じられた。
エリザベス女王が投資しているオフショア・ファンド(タックスヘイブンに登記上の本拠地を置き、各国の有利な株式市場で資産を運用する投資信託)は、仲介社を通じて問題のある会社に投資したこともわかっている。
芸能人では歌手マドンナ、シャキーラ、ロックバンド「U2」のボノの名前もあった。
ボノはマルタ島の会社の一人の株主だった。その会社はリトアニアの小さい町でショッピングセンターを持っているそうで、同国の税務当局が税金逃れの疑いで同社を捜査しているそうだ。ただし、ボノの広報はリトアニアのメディアの取材に対し、「すべて適法に税務処理されている」とコメントしている。
日本では「ドラゴンボール」で知られる漫画家の鳥山明氏もあった。
これらは1年間密かに働いた96社の報道機関、382人記者の成果だ。欧州連合のある委員が「電気ショック」のようだと感想を述べていた。
去年の「パナマ文書」はパナマの法律事務所から漏れた書類だったが、「パラダイス文書」の流出元は複数で、法律事務所2社と19カ国の登記所などだ。