第19代高校生平和大使スイス訪問 成果と課題

 2016年8月、22名の第19代高校生平和大使は125,314筆の署名を携え、スイス・ジュネーブの国連欧州本部を訪問しました。今回の訪問では、これまであきらめずに続けてきたからこそ生まれた訪問先との信頼関係を改めて確認することができました。一方、訪問と同時期に大詰めを迎えていた核軍縮作業部会では、核兵器禁止条約制定について活発な論議がなされている情勢でした。

8月15日

UNIグローバルユニオン訪問  世界規模の労働組合の国際組織であるUNIとは、2010年長崎市での世界大会開催をきっかけに、交流を続けて12年目となります。16カ国30人の職員が出迎えてくださいました。

世界YWCA訪問 女性の権利とエンパワーメントについて活動する国際組織で、交流は17年目となります。13カ国17名の皆さんが迎えてくださいました。

 核兵器廃絶を目指すいずれの訪問先も、毎年高校生平和大使の訪問を楽しみにしてくださっています。平和大使のスピーチを熱心に聞いていただき、交流することで、回を重ねるごとに互いの理解は深まっていると感じます。

軍縮会議日本政府代表部訪問

佐野利男軍縮大使には、オバマ大統領の広島訪問で、日本の市民は軍縮会議に大きな期待を寄せていること、佐野大使には国連作業部会や軍縮会議において唯一の戦争被爆国として、核兵器廃絶に向けてリーダーシップをとっていただきたいとお伝えしました。これに対し、佐野大使は、安全保障と軍縮は両立できるとしながらも戦争被爆国として核兵器廃絶を行うが、国際情勢に関しては冷静に判断し、現実的かつ実践的な政策をすすめることが大切という見解を示されました。核兵器の存在は何があっても許されないという私たちの考えを、いっそう進めていく必要性を感じました。

8月16日 国連欧州本部訪問

軍縮会議傍聴 高校生平和大使は、2014年より日本政府ユース非核特使の委嘱を受け、軍縮会議本会議において、日本政府のステートメント(声明)として代表がスピーチしています。今回は、長崎の永石菜々子さんがスピーチを行いました。 軍縮会議が始まる前、事務局のはからいで、傍聴席からではなく本会議場に入っての見学が許されました。欧州本部訪問17年目にして初めてのことです。 軍縮会議では、議会冒頭、議長が高校生平和大使の訪問を紹介し歓迎の意を表してくださいました。続けて、日本政府の佐野大使がユース非核特使として永石さんを紹介したのち、永石さんが日本政府代表の席でスピーチし、各国の大使に呼びかけました。 「被爆から71年が経過し、被爆者から直接体験を聞く機会が減り、世界の人々の核兵器の脅威についての関心が下がっているように感じる。今立ち上がらなければ、人々は被爆者の声に無関心でありつづけるだろう」  このスピーチに対し、中国、ロシア、アメリカ、カナダの大使が言及しました。おおむね好意的な反応でしたが、中国の大使からは若者の平和活動について歓迎の意を示しながらも、「加害の事実を忘れてはいけない、戦争を始めたのはどこの国なのか」という発言がありました。確かに、加害の事実は忘れてはならないことです。しかし、だからと言って原爆が落とされてもよいということにはなりません。私たちは、核兵器は決して存在、ましてや使用が認められるものではないと考えます。中国大使の発言を受け止めながら、歴史認識の違いによる対立を、対話を通して乗り越えていきたいと考えます。

軍縮局訪問 午後から、軍縮局を訪問。軍縮局ジュネーブ支局長代行マリー ソリマン氏と昨年応対していただいたカルブッシュ政務官が出迎えてくださいました。私たちは22名全員で約25分のスピーチを行いました。日本は、広島長崎、第五福竜丸、福島第一原発事故と3度にわたる核の被害を受けていること、核兵器の非人道性、被爆三世としての使命、震災により実感した命の尊さ、フクシマにより味わった放射能の恐怖、初めて被爆証言を聞いた時の衝撃、核廃絶のためには過去の悲劇を風化させてはいけない・・・全員が自分の言葉で精一杯うったえました。 ソリマン氏は「高校生の思いの深さ真剣さにより、核兵器の問題をより強く認識した。若者の力は世界のDNAだ。現実的に、核兵器廃絶は一夜ではできない。しかし。高校生が決意を持って行動することが世界を動かす。変化をもたらすためには、人々の意識を喚起することが必要だ。」と励ましてくださいました。最後に、1年間で集めた125,314筆の署名と千羽鶴を全員で手渡しました。

8月17日

街頭署名活動 スイスの首都であるベルンに移動し、高校生一万人署名活動を行いました。ドイツ語圏のベルンで、英語で核兵器廃絶を求める署名を呼びかけました。約1時間の活動で155筆の署名が集まりました。

トローゲン州立学校訪問 今回初めて、スイス北東部アッペンチェル地方にあるトローゲン州立学校の学生たちとの交流が実現しました。この学校では新学期から「はだしのゲン」を使って平和学習を行うことになっているなど、授業の中で積極的に平和や核の問題を取り上げているということです。被爆者である川副団長の被爆体験の後、英語科の学生たちと、まずは折り鶴を作りながら交流をすすめました。

8月18日

ハイデン アンリ・デュナン博物館訪問  トローゲン近郊のハイデンは、国際赤十字創立者のアンリ・デュナンが晩年を過ごした町です。20098月、長崎の鐘のレプリカが長崎大学医学部有志より寄贈され、博物館の庭に設置されて大切に守られています。2010年以来、今回2度目の訪問です。長崎の鐘設置に尽力された皆さんと交流し、核兵器廃絶を誓って長崎の鐘を鳴らしました。

8月19日 帰国(全員長崎市へ)

8月20日 長崎市で帰国報告会

成果と課題

私たちは、核兵器廃絶に向けて平和を願う広島・長崎をはじめとする日本の市民の声を世界に届けるという目標について、国連軍縮会議で発言するなど一定の成果を得ました。また、核兵器廃絶に向けての国際協力・連帯の基盤づくりとして、交流先との信頼関係を確認することができました。 日本政府は、唯一の戦争被爆国として、核兵器の即時廃絶に積極的に取り組むべきです。そのために、私たちには何ができるのか、どのように活動を拡げていくべきか、大きな課題です。高校生平和大使は、核兵器廃絶と平和な世界の実現という大きな目標について、直接的な力を持つわけではありません。しかし、今回の様々な交流で世界各国の人たちが高校生平和大使を迎え入れ、活動に賛同してくださったように、国境を超えたつながりが大きな力になると信じます。そして、次の代へと活動が継続していくように、各地で地道な活動を積み上げていくことが大切です。 「ビリョクだけどムリョクじゃない」と改めて確認することができた今回のスイス訪問でした。来年は、20周年となる高校生平和大使。核兵器廃絶と平和な世界の実現に向かって、決してあきらめずに活動を続けていきます。

フォトライブラリーに第19代高校生平和大使の活動を紹介しています。

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