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これがNCEP ATPIIIに続く新しいコレステロール診療ガイドライン?

   米国NIHが主導してきたNational cholesterol education program (NCEP)- Adult Treatment Panel III (ATP III)は米国のみならず世界のコレステロール診療の最も権威あるガイドラインと評価されてきた。その最新版(ATP IV)が発表されることを世界中が期待してきた。今年の米国心臓病学会(AHA)の会期と符合してATP IIIの後継ガイドラインが発表されたが、一体これは何なのかと思うような内容で、また理解しにくいガイドラインとなっている。米国でも一般紙も含めて論議が巻き起こっている。より明解なサマリーが早く出版されない限り、全く利用価値はなさそうである。
   従来のNCEP ATP I, II, IIIはNIHが中心となりガイドラインの編纂が行われてきたが、今回はその後継としてAHAとACCが委員会を開催し、以下の4分冊からなるガイドラインをCirculationとJACCに同時に発表した。
1. 2013 ACC/AHA Guideline on the Assessment of Cardiovascular Risk
Circulation. 2013: published online before print November 12, 2013.
2. 2013 ACC/AHA Guideline on the Treatment of Blood Cholesterol to Reduce Atherosclerotic Cardiovascular Risk in Adults. Circulation. 2013: published online before print November 12, 2013.
3. 2013 AHA/ACC Guideline on Lifestyle Management to Reduce Cardiovascular Risk.  Circulation. 2013: published online before print November 12, 2013.
4. 2013 AHA/ACC/TOS Guideline for the Management of Overweight and Obesity in Adults. Circulation. 2013: published online before print November 12, 2013.
全編の紹介はボリュームがあり難解なため不可能であるが、一般紙を含めて論点となっている部分を中心に、上記の2のコレステロール低下に関する事項を採り上げたい。
 
これはStatin Guidelineだ !?
米国コレステロール教育プログラム(NCEP)-ATPIIIの後継ガイドラインとは言えない
 
米国のコレステロール診療ガイドライン(NCEP ATP III)は2002年に発表され、米国のみならず世界的に影響力を持つガイドラインとして利用されてきたが、すでに11年経過し、何時ATP IVが発表されるかと固唾をのんで見守ってきたが、先日ようやく発表され概略を理解した。
   米国の心臓学会(AHA)が11月16~20日まで米国のダラスで開催されたのに時期を合わせて発表されたことになる。従来はNIH主導でガイドラインが進められてきたが、今回からは米国AHAおよびACCに権限が移り、ATP IVの名称はなくなり、新たに以下の4編のガイドラインに分冊され、CirculationとJACCに同時発表された。すべてを通読してコメントを述べることはできないが、次のコレステロール治療に関するガイドラインをレビューしたい。
Stone NJ, et al. 2013 ACC/AHA Guideline on the Treatment of Blood Cholesterol to Reduce Atherosclerotic Cardiovascular Risk in Adults: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol. 2013 Nov 7.
本ガイドラインは一貫して無作為抽出比較試験(RCT)の成績に基づいて作成されており、確実に評価されている成績のみを扱うことから、ほとんどすべてのデータはスタチンによるものに限定されることとなった。あたかも「スタチン・ガイドライン」と言えそうな内容である。いくつかの問題点の設定は以下のようになる。
A) 4大スタチン有効グループ
  1. 動脈硬化性心血管系疾患Atherosclerotic cardiovascular disease (ASCVD)リスク軽減を目指したスタチン有効4グループ
  • ASCVD臨床例(二次予防)
  • 原発性高LDL-コレステロール血症 (LDL-C≧190mg/dl)(FH?)
  • 40~75歳の糖尿病患者でLDL-C 70-189mg/dl
  • ASCVD臨床症状や糖尿病がない40~75歳の患者でLDL-C 70-189mg/dl、かつ推定10年ASCVDリスク7.5%以上
スタチン時代において、非スタチン・コレステロール低下剤の有効性を実証するデータはない。従って、非スタチンはガイドラインでは採用しない。事実、わが国の医療において、脂質低下剤としては90%以上はスタチンが処方されている。
その他、コレステロール治療で配慮すべき点は
  • Treat to target:従来は目標値を設定して治療してきたが以下の3点が問題となる。�現在の臨床試験は目標値を目指したものはない。�目標値を複数設定した臨床試験成績はない。�いくつかの目標値設定した時の副作用についての成績はない。
  • Lowest is best: このような設定で副作用を検討した成績はない。将来の課題となる。
  • ASCVDリスク治療:
  • Lifetime risk: このリスクに基づいた成績はない。
  スタチン有効4グループの例として
  1. 二次予防:最強度スタチン適応群についても、LDL-Cターゲットにはしない。目標とするLDL-Cを達成できない場合でも、非スタチン剤併用による臨床成績は得られていないので併用を勧めない。LDL-C治療目標値を設定して、達成できない時にでも挫折感を与えてはいけない。
  2. LDL-C>190mg/dlのFH患者:FH患者が治療目標値LDL-C<100mg/dlを達成できることは少ない。しかし治療失敗ではないので、LDL-Cが50%以上低下すれば良しとすべきであろう。
  3. 2型糖尿病:糖尿病の合併の有無にかかわらず、スタチンは有効である。
  4. 10年のASCVDのリスクを評価し、≧7.5%でLDL-C 70-189ならばスタチンによりリスクは軽減できる。
B) スタチン治療の強度 (Intensity) (表1)
C) 二次予防患者のスタチン治療開始手順 (図1)
D) 一次予防患者のスタチン治療開始手順 (図2)
E) スタチンの治療効果のモニタリング (図3)
 
   本ガイドラインはACC/AHAコレステロール・ガイドラインとでも言うべきかも知れないが、NCEP ATPシリーズ程著明な研究者が委員とはなっていない感がある。脂質異常症を網羅する高度のガイドラインではなく、一般内科医や患者を対象とし、エビデンスに基づいた簡便なガイドラインを目指したものと思われる。
   従来、絶対リスクに基づいた治療目標値の設定こそ、ガイドラインの真髄と考えられてきたが、今回はLDL-C治療目標値は設定せず、疾患背景からどのスタチンをどれだけ投与するかを決定している。全体を通じて、スタチン投与ガイドラインとでも言うべき内容となっている。非スタチン単独は勿論、スタチンとの併用も対象とはなっていない。フィブレート、ニコチン酸剤、陰イオン交換樹脂、エゼチミブなどはどうなるのであろうか?今後の論調に注目していきたい。
   今回のガイドラインの議長を務めたNeil J Stone博士は有名であるが、その他のメンバーでは2−3人しか名前を知らないので、なおさらこのガイドラインの権威を疑ってしまう。1999年、私の恩師で米国シアトルのNorthwest Lipid Research Clinic, University of Washington School of Medicineの教授Robert H Knopp博士がDrug treatment of lipid disordersと題するreviewをNew Engl J Med誌 (New Engl J Med 341:498,1999)に発表しました。これほどインパクトファクターの高いNew Engl J MedからどうしてBob(Knoppの愛称)に原稿依頼があったのか意外に感じたものである。しかも、原稿を私のところに送って、読んで批評してくれと依頼があった。光栄であるとともに恐縮してしまった。私は特別なコメントを述べることはできず、ただ、図をもっときれいに書くことと、他剤を差し置いてスタチンをトップに扱うように助言した。約15年後に正しくスタチンが圧倒的に重要なコレステロール低下剤となってガイドラインに登場している。しかも、Bobは論文の末尾にI am indebted to Drs. Hiroshi Mabuchi and Neil Stone for reviewing the manuscript.と書いている。それ以来、Neil Stoneとはどのような研究者か気になっていたが、今回のガイドラインでよく理解できた。次の機会にStone博士にお会いしたいものである。Bobもスタチン中心の時代に間に合う総説となり草葉の陰で安堵していると思う。本ブログの2010.6.7、2011.1.31にBobの追悼文を書きました。
   本ガイドラインはどのように評価されるか、国際動脈硬化学会、ヨーロッパ動脈硬化学会、日本動脈硬化学会、米国内諸学会などの反響を見ながら動向を確認したい。

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