ジェームズダイソン財団が次世代のエンジニア育成を目的に主催する国際的なエンジニアリングアワード「ジェームズ ダイソン アワード2017」(以下JDA)のグランプリにあたる国際最優秀賞が決定した。皮膚がんの一種であるメラノーマを低コストで検出できる携帯用診断機器「sKan」(スキャン)という作品だ。開発者は、カナダのマックマスター大学工学部の学生4人。
メラノーマは欧米人に多い皮膚がんの1つで、悪性黒色腫とも呼ばれている。治癒には早期発見が重要だが、その診断には「目視に頼るところが大きく精密さに欠ける」「精度の高い診断は時間やお金がかかり患者の負担が大きい」などの問題があった。
sKanは、がん細胞が正常な細胞よりも代謝率が高くより多くの熱を放出する特性を利用。氷嚢などで冷やすとがん細胞は正常な細胞よりも速く熱を回復するため、メラノーマの疑いがある部位に「サーミスタ」という温度センサーを当てて冷却後の温度変化を追跡することで、メラノーマを検出するという。追跡結果はヒートマップやグラフでパソコンに表示される。
熱を使ったメラノーマ検査には高解像度の熱探知カメラを用いたものもあるが、こちらが2万ポンド以上(日本円換算で約297万円)と高額であるのに対し、安価なサーミスタを用いたsKanは1000ドル(約11万円)未満。審査委員長のジェームズ・ダイソン氏は、sKanを「世界中の人々の命を救う可能性を秘めた、創意工夫に富んだ機器」と評している。開発チームはJDAの賞金3万ポンド(約450万円)を利用し、実用化に向けてsKanの改良を進めるという。
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