軍と警察の5000人がスラムで大規模取り締まり、ブラジル・リオ

大規模な取り締まりが行われたブラジル・リオデジャネイロ市内のスラム街で配置に就いた兵士(2017年8月5日撮影)。(c)AFP/Apu Gomes〔AFPBB News

(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年11月8日付)

 ブラジルは経済的、政治的、そして道徳的な危機に陥っている。これは筆者が考えたことではない。筆者と数十年来のつき合いがある元高級官僚の見立てである。

 この診断に異を唱えるのは難しい。経済は深刻な景気後退に苦しめられており、1人当たり実質所得は2013年から2016年にかけて9%減っている。

 経済成長の低迷は構造的で、財政は持続不可能な状況にあり、汚職スキャンダルが政治エリートとトップクラスの財界人を巻き込んだ。

 実際、最高裁判所は、現職の大統領や議会・主要政党の指導者層に加え、現職閣僚の3分の1、上院議員の3分の1、そして州知事の3分の1について捜査に入ることを許可している。当然ながら、政治家や政党は信用されなくなっている。

 ブラジルを先月訪れた際に知ったことだが、現地の専門家たちは、この状況が政治の極端な二極化に発展するのではないかと危惧している。しかし、危機が変化に結びつくこともあり得る。ブラジルはその好機をつかむべきだ。

 憂鬱な状況を誇張してはならない。ブラジルの平均寿命は1970年の60歳から2017年の74歳に伸びており、その一方で出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数の平均)は5.0からわずか1.7に低下している。

 「ラバ・ジャット(洗車の意)」と呼ばれる汚職捜査に司法当局がつぎ込んだエネルギーには目を見張るものがある。

 景気はここにきて後退から緩やかな回復に転じており、国際通貨基金(IMF)は今年の経済成長率を0.7%、2018年を1.5%と予想している。上昇する計算だが、後者の数字は悲観的すぎるかもしれない。

 1990年代に獲得した金融の安定性は健在で、消費者物価上昇率(前年同月比)は今年9月の時点で2.5%にまで低下している。