コンビニ業界「北の異端児」吠える

セコマ社長「既存ビジネスモデルは限界。我々は直営主体」

2017年11月14日(火)

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 セブン-イレブン・ジャパンにファミリーマート、ローソン……。市場シェア約9割を握る大手3チェーンの経営トップに話を聞いてきた日経ビジネスの10月30日号特集「コンビニ大試練」。だが大手以外にもコンビニチェーンを展開する企業はある。北海道を地盤に「セイコーマート」1000店強を経営するセコマはその一社だ。

 人口減少と高齢化という今後の日本の重要課題を先んじて経験する北海道にあって、セコマは早くから、大手3社とは異なるビジネスモデルの構築を進めてきた。言うなればコンビニ業界「北の異端児」。大手チェーンとは何が違うのか。改革の成果のほどは。丸谷智保社長に聞いた。

関連記事(1):コンビニ異端児セコマの「コンビニ限界論」
関連記事(2):製造業へ華麗に転身したセイコーマート

丸谷智保(まるたに・ともやす)氏
1979年北海道拓殖銀行に入行。シティバンクなどを経て2007年セイコーマート(現セコマ)入社、2009年に社長就任。63歳。

コンビニ業界では人手不足が深刻になっています。出店数の増加で客の奪い合いも激しくなり、加盟店オーナーが経営難に喘いでいると聞きます。

丸谷智保社長(以下、丸谷):その通りだと思います。コンビニ本部は加盟店オーナーとフランチャイズチェーン(FC)契約を結ぶことで、(自身では資産を抱えることなく)効率よく店舗網を増やしてきました。かつては長時間営業すれば売り上げも増え、本部と加盟店オーナーは儲かりました。ただ、成長期だからこそ機能していたビジネスモデルを、業界全体が巡航速度に落ち着いてしまった現在まで、そのまま続けていて良いものなのか。

 高密度に出店が進んだことで、店舗あたりの売上高は伸び悩んでいます。そんな中で人件費や光熱費が上昇すれば、現場が疲弊するのは当然と言えるでしょう。いま表面化しているコンビニ業界の様々な課題点は、すべて、古いビジネスモデルを変えることなく現在まで来てしまったことが原因だと思います。

セコマはどのようにビジネスモデルを変えてきたのですか。

丸谷:一つは直営化です。店舗を経営する加盟店オーナーからロイヤルティー(経営指導料)を受け取るのではなく、我々のグループ会社が直接店舗を経営するのです。私たちも従来はFC契約による出店が主でしたが、2009年に直営比率がFC比率を超えました。いまでは8割弱が直営店です。

直営なら過疎地でも出店可能

大手チェーンの店舗は95%超がFC加盟店です。そんななかであえての直営展開には、どんなメリットがあるのでしょうか。

丸谷:今年8月、紋別市の上渚滑(かみしょこつ)に新店を開きました。周辺住民は900人ほどしかいなくて、うち4割が65歳以上の高齢者です。お年寄りは一般的に食が細いですから、食べ物を売るコンビニは基本的には成立しません。

それなのにセコマは成立できている、ということですか。

丸谷:はい。この店が1日13時間半しか営業していないのがポイントです。朝6時半に開いて、夜は8時に閉めるのです。夜間の人件費や光熱費を抑えられます。

大手コンビニは「深夜営業は店員の作業時間としても欠かせない」と話しています。

丸谷:確かに朝一番に来店したお客にとっては、オープンして最初の数分間はまだ品出し作業が続いているわけですから、多少ご迷惑をおかけするかもしれない。ただ、それで営業に致命的な支障が出ているかというと、そういう話はありません。

営業時間の短縮なら、契約形態さえ変えればFC加盟店でもできるのでは。

丸谷:いえ、フランチャイズでは難しい事情があります。フランチャイズの加盟店オーナーさんが経営する場合には、自店だけで初期投資を回収しなくてはなりません。本部が土地・建物を用意する契約ではもちろんのこと、土地所有者がコンビニ事業を始める場合にも、店舗を作るには初期投資が必要ですから。多少の無理があっても、オーナーさんは長時間営業して「元を取る」インセンティブが働きます。

 ところが身を粉にして働いても、もともと商圏は極めて小さいわけです。オーナーが生活できるだけの売り上げを確保するのは難しいのです。

「コンビニ大試練」の目次

「コンビニ業界「北の異端児」吠える」の著者

藤村 広平

藤村 広平(ふじむら・こうへい)

日経ビジネス記者

早稲田大学国際教養学部卒業、日本経済新聞社に入社。整理部勤務、総合商社インド拠点でのインターン研修などを経て、企業報道部で自動車業界を担当。2016年春から日経ビジネス編集部。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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