プーチン氏「信じる」トランプ氏は「米国に危険」と非難
昨年の米大統領選にロシアが介入したという米政府情報機関の分析よりもロシア政府の言い分を優先しようとするドナルド・トランプ米大統領の姿勢について、複数の元米情報機関トップが、大統領の姿勢は米国を危険にさらすものだと非難している。
トランプ氏は11日、ベトナム・ダナンで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談。その際にプーチン氏が自分に、昨年の米大統領選には介入していないし、介入したと言われることを不快に思っていると話した、プーチン氏は本気だと自分は信じる――と発言した。
大統領は記者団に、「(プーチン氏に)会うたびに、自分はやっていないと言われるし、向こうがそう言う時は本気なんだと、自分も本当に信じる」と話した。選挙に介入したと言われると「とても侮辱された気分になっていると思う。それはこの国にとって良いことじゃない」とも付け加えた。
トランプ氏はさらに、今年1月にロシアによる介入があったと断定した複数の情報機関トップを、名前を挙げて非難。当時のジェイムズ・クラパー国家情報長官、中央情報局(CIA)のジョン・ブレナン長官、連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官を「政治屋」と中傷した。
大統領のこうした発言について、CIAやFBIなど自ら率いる政府諸機関の分析結果よりもプーチン氏の発言を優先するのかなどと、激しい批判の声が上がった。共和党重鎮のジョン・マケイン上院議員も大統領発言を強く非難し、CIAは「ロシアの選挙介入に関する情報分析結果は変わらない」とコメントした。
これを受けてトランプ氏は、米政府の情報機関を信じると態度を軟化させつつ、「ロシアと友好関係を持つのは良いことだ、悪いことじゃない」と「フェイクニュース・メディア」を罵倒するなどツイートを連投した。
前国家情報長官が反論
クラッパー前国家情報長官はトランプ氏発言について米CNNに対して、「プーチンはこの国の体制をなんとしても損なうつもりだ。この国の民主主義と、政治手続きのすべてを。それ以外の何物でもないし、それ以外のものとして見せようとするのは、とんでもないことだと思うし、実際この国にとって危険だ」と強い調子で述べた。
クラッパー氏と共に出演したブレナン前CIA長官は、ロシアの介入が「国家安全保障上の問題」であるにもかかわらず、なぜトランプ氏がもっとはっきりとロシア大統領を非難しないのか、「奇妙」だと思うと発言した。
トランプ氏が自分を批判したことについては、ブレナン氏は「批判の出所を思えば、その批判は名誉の勲章だと思う」と述べた。
2人の元長官は大統領がプーチン氏に「手玉に取られている」と批判。このインタビューから間もなく、スティーブン・ムニューシン財務長官は、そのようなことはないと反論し、大統領は北朝鮮やシリアなどの難問解決に集中していると弁護した。
なぜ重要なのか
大統領選でトランプ氏が有利になるようロシアが介入した、トランプ陣営関係者がこれに結託していたのではないかという疑惑は、発足当初からトランプ政権につきまとってきた。
複数の米情報機関は、ロシア政府が民主党本部などのメール・サーバーをハッキングし、民主党候補だったヒラリー・クリントン氏に不利な情報を暴露したり、トランプ氏に有利な情報をソーシャルメディアに大量に投下するなどして、選挙結果を左右しようとしたと結論している。
ロシア政府の指示を受けたハッカーたちが介入工作に関わったという見方が強いが、ロシア政府とのつながりを裏付ける決定的な証拠は明らかになっていない。
ロバート・ムラー特別検察官は現在、ロシア当局とトランプ陣営の結びつきについて捜査を進めている。ロシア政府もトランプ陣営も、結託・共謀の事実はなかったと否定している。
ムラー検察官の捜査を受けて司法省は10月末、トランプ陣営の外交顧問だったジョージ・パパドプロス被告を起訴。被告は2016年3月から同4月にかけて、ロシア政府とつながりのある複数人物と、クリントン候補に「泥を塗る」「数千通のメール」について会談したにも関わらず、会談の時期についてFBIに偽証した罪が問われている。
10月末には、パパドプロス被告とは別に、トランプ米大統領の元選対本部長だったポール・マナフォート被告も、大統領選とは直接関係のないウクライナとの関与をめぐる資金洗浄の共謀など罪状12件で起訴された。