【フィンテック入門】クラウドファンディングの魅力と投資リスク(2016.07.05)

■クラウドファンディングの課題
クラウドファンディングは、私たち個人と起業する側をダイレクトにつなぐ、とても魅力的な仕組みです。しかし若干のリスクもあります。
クラウドファンディングのリスクがあるとすれば、モノは届いたものの提供した資金や期待に見合う商品開発に至らなかった場合や、開発失敗どころか資金回収ができないケースが起こりうる、ということです。
人気のクラウドファンディングとなって、資金は十分に集めたものの、プレゼンしていた内容に実際届いたアイテムが追いついていないケースについては、しばしばネットの批判を受けます。期待が大きかった分、不満が大きいものとなったため炎上してしまうようなケースです。
資金が回収できないしモノも届かない、というケースもまれに起こります。最近ではクラウドファンディングの運営者側が一定の管理を行なうので、集金詐欺のような深刻な被害は少ないようです。
しかし、クラウドファンディングはそうしたトラブルも起こりうることをしっかり確認のうえ入金することが必要です。結果にこだわらず応援してあげたい、くらいの資金投入にしておくといいでしょう。
株式投資などでは有限責任、つまり提供資金以上の損失は生じないことが投資の前提となっていますが、クラウドファンディングについても、提供資金以上の追加負担を求められることは基本的にありません。リスクはありますが、むしろ応援する側にとっては安心できる仕組みと考えてみるといいでしょう。
■投資系の「クラウドファンディング」には要注意
ところで、クラウドファンディングには「ひとくち株主」のようなアプローチもあります。ネットでクラウドファンディングと検索すると、少額から参加できる投資案件を紹介するサイトの広告が上位に表示されます。多くはローンの出資者となって借りた人の利息を分配するモデルです。
匿名組合のしくみを用いたソーシャルレンディングの仕組みは従来からありましたが、これをポジティブイメージのある言葉として「投資型クラウドファンディング」と呼ぶことが増えているようです。
こちらについては純粋な投資案件となります。少額投資といっても10万円単位での運用を行うことになり、購入を伴うクラウドファンディングより高額になります。また、しばしば匿名組合の破たんが生じトラブルになっているのも事実です。
「応援の気持ち」で行なうクラウドファンディングとはまったく別ものですので注意してください。
■無理のない金額で応援してみよう
クラウドファンディングは、プレゼン次第というところもありますが、まさにネットの時代に新しいビジネスを形にする資金調達の手段といえます。大量生産、大量消費の時代に「自分らしい消費」を見つける手段にもなっています。
最近の例ではゲーム開発者の待望の新作についてのクラウドファンディングが話題を呼びましたが、開発時点で600万ドル以上の支援がありました。これは売り上げを最初から見込んで開発に専念できるようなものです。
新商品のアイデア提案だけではなく、アーチストの活動、NPOの活動にもクラウドファンディングはその範囲を広げています。興味があるものをみつけて、一度試してみてはどうでしょうか。
文/山崎俊輔
AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。近著は『お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣』
■連載/山崎俊輔のフィンテック入門