日銀は欧米と合わせて緩和縮小を、持続ならバブル-吉野ADBI所長
- 高齢化が進む日本では緩和効果薄い、石油価格下落でインフレも困難
- マクロ政策より高齢化対策を、年功序列賃金を改め雇用を促進
吉野直行アジア開発銀行研究所(ADBI)所長は、金融緩和の出口へ向かう米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)と足並みをそろえて日本銀行も緩和縮小を模索するべきだと提言した。10日のインタビューで語った。
吉野氏は、FRBが12月ごろに金利引き上げに動くと予想されていると述べ、「日銀も同じタイミングで引き上げるべきだ」と言明。日本は量的緩和の規模が「異常に大きい」とも指摘し、金融引き締めを目指すECBと歩調を合わせて量的緩和も徐々に縮小していく必要があると訴えた。縮小の程度を欧米に合わせれば、為替への影響も抑えることができると分析している。
リーマン・ショック後の世界金融危機に対応した金融緩和だが、各国は縮小に動いている。米国は12月に今年3度目の利上げを行う見通し。欧州中央銀行(ECB)は1月から量的緩和の資産購入額を減らす。一方、日銀は2%物価目標を掲げ、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みを維持する方針だ。
吉野氏は、物価上昇率だけを重視した金融政策のかじ取りは危険だと主張する。原油価格に伴って物価が停滞する一方で株価や地価は上昇を続けており「緩和を続けるとバブルと同じような状態になる」と指摘。実需が減る五輪後にはバブルがはじける可能性があると警鐘を鳴らした。日経平均株価は9日、一時26年ぶり高値となる2万3382円となった。
「日本の問題はマクロ経済政策ではなく、高齢化にある」と吉野氏は分析する。高齢化が進む日本では年金生活者が多く、金利を引き下げて経済の活性化を図る金融緩和の効果が薄くなるという。高齢者が働き続けるため年功序列賃金を改めて生産性に基づく賃金体系に転換し、企業が高齢者を雇いやすい制度設計が必要だと述べた。