「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT EUROPE」が現地時間10月23日、どんより曇ったベルリンで開幕した。
会場では、Facebookへの不満や、来たるべき一般データ保護規則(GDPR)施行への不安、プラットフォームにおける動画マネタイズの不透明感など、憂鬱な気分がはっきりと感じられた。
肯定的な面も挙げておこう。Googleは、パブリッシャーの成功に向けて投資したらしい。また、GDPRによって、広告サプライチェーンの浄化が促進されるかもしれない。
以下の記事では、サミットの全体会議と作業グループにおけるパブリッシャーの議論から、印象的な発言をいくつか紹介しよう。
Facebook問題
「Facebookに対しては極めて懐疑的だ。うちのサイトのうちのオーディエンスが、本当の意味で我々が所有しているものだと私は評価している。Facebookのオーディエンスは、海のものとも山のものともつかない」。
「我々は100%をインスタント記事にした。密接に協力し、すべてについてマネタイズを試した。そして意味がないと判断した。0%にした。全体のトラフィックは減らなかった」。
「Facebookは、実験としても価値がないとは言わない。しかし、この数年間に我々が見てきた依存状態は恐ろしいものだ」。
「質の高いトラフィックの発生源としては、いまでもGoogleの方が、Facebookよりもはるかに信頼できる」。
「1年前はFacebookに70%依存していた。それが先週、GoogleがFacebookを上回った。我々の場合、Facebookはこの1年間、大惨事だった。GoogleはAMPを非常に優先させているようだ。これがずっと続くというわけでもないだろうが、今週はGoogleに満足している」。
「Googleの投資が大きく増えたようだ。GoogleはFacebookよりも、我々のためのインフラの構築に関心がある」。
差し迫るGDPR
※ GDPR = 「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)」。すべての企業に対して、EU諸国において個人データを収集する際に、顧客やユーザーの同意を得ることが義務づけられた新しい法律。
「パブリッシャーにとって、最大の問題は責任分担だ。同意なくデータを使う(アドテク)パートナーが上流にいると、パブリッシャーは責任を、ひいては罰金を分担することになる」。
「消費者が(同意に対し)『いいえ』のボタンを押す割合は、広告ブロックよりはるかに高いだろう」。
「GDPRには、実はパブリッシャーにとって肯定的な面が隠れている。アドテク仲介業者によって消費者との関係を中抜きされていたパブリッシャーがついに、サプライチェーンを叩くムチを手にすることになるのだ」。
「同意しない消費者に対しては、アドブロックと同様のアプローチを取るべきなのかもしれない。つまり、同意を拒むなら、提供する体験を縮小するのだ」。
「私の場合、サプライチェーンは最大の問題ではない。問題は、ユーザーとのインターフェイスだ。どうやって末端消費者に価値交換についてわかってもらうかだ」。
「GDPRを乗り切るには、サプライチェーンの複雑さを軽減する必要がある」。
「大事なのは、契約関係をこちらに取り戻すことだ」。
「一緒に仕事をしているメディアオーナーの一部は、これ(GDPR)を受けて、一部のアドテクベンダーとの仕事を弁護士に止められている」。
「GDPRとeプライバシーの混同が、まだあまりに多い。eプライバシーは、もうひとつの非常に厄介な怪物だ」。
「eプライバシー規則がいま(の説明)のまま導入されれば、すべてのクッキーに明示的なオプトインが必要になるのだから、プログラマティックビジネスは20~50%が終わる」。
動画の不透明感
「購入側の動きが遅いという問題がある。多くのエージェンシーのチームは、いまだにテレビのクリエイティブをデジタルに転用しており、それで社内が苦労している。
うちの編集チームは、30秒間のプレロールを30秒間の動画コンテンツには掲載したくない。課題は、もっと短い広告フォーマットを見つけること。うちでテストをして、うまくはいっているが、足りていない。もっと啓発が必要だ」。
「自社サイトで自動再生動画を使うのをやめたところ、動画視聴は減少したが、これは体験のコントロールを取り戻しつつあるということだ。これからは、クリックして再生してもらうのが課題だ」。
「Facebookはずっと、効果的なマネタイズに懸命に取り組んできた。これはパブリッシャーにとって本質的な問題なのだが、Facebookは友人だが敵でもある。
プラットフォームは必要だが、それでは、BクラスのコンテンツをFacebookに出し、Aクラスのコンテンツは直営プラットフォームに取っておくことにするのか? それだと、手持ちコンテンツの価値を弱めることになる」。
「動画視聴は過半数がブラットフォーム外なので、動画をブランデッドコンテンツやスポンサードシリーズを通じてマネタイズする必要がある。しかし、どうやって測定するのだろうか。FacebookとYouTubeにはそれぞれクセがあり、それぞれフォーマットを作る必要がある」。
「パブリッシャーは板挟みになっているが、転換点は、ユーザー体験と売上の狭間にある。すべての利害関係者の要求に応えながら、ロードが重すぎずユーザーに嫌がられない適切なクリエイティブと、画期的なフォーマットが必要だ」。
Digiday Editors (原文 / 訳:ガリレオ)
(2017年11月11日DIGIDAY「「Facebookに対しては極めて懐疑的だ」:欧州パブリッシャーたちの率直な声」より転載)
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