カスタム検索
表示順:
Relevance
Relevance
Date
ウェブ
 
 
 

スポンサーリンク

2017年11月12日

【デザイン思考】『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』佐宗邦威


21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由
21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、今月の「Kindle月替わりセール」からの1冊。

過去何度かセール対象となっていたのですが、今回のセールでは「65%OFF」と激安設定ゆえ、たまらずアマゾンアタックしてしまいました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
経営環境が大きく変化する時代。いまこそ21世紀型のイノベーションを考えよう! !本書では、P&Gマーケター出身の著者が、自身のデザインスクールでの留学やソニー(株)にて全社の新規事業創出を手掛けた経験から、デザイナーではない普通のビジネスパーソンがデザイン思考を実践するためのヒントが詰まった一冊。

現時点では中古が900円近くするため、送料を考えるとKindle版が600円弱お買い得となります!





Back of the Napkin / Gustavo da Cunha Pimenta


【ポイント】

■1.自分が見ていた世界と違う幅の世界に触れる
 さらに重要なことは、普段自分が無意識に接している世界とまったく違う振れ幅の世界に触れることで、発想をひろげることです。
 たとえば、以下のような軸で幅をつくることができます。
・人間横断:自分とはまったく違う環境の人の生活や人生に触れる(共感)
・分野横断:共通項を持ちながらまったく違った分野での例に触れる
・地理横断:世界のまったく違った場所でおこっていることに触れる
・時間横断:歴史的な観点から時代を経ておこっている違いと共通点を知る


■2.デザイン思考を成り立たせる前提
●全ての情報を厳密に処理しようとしない
完全な分析が難しいビジュアル情報を大量に扱うため、誰もが納得できる情報処理の仕方はありません。そのため、全部の情報を厳密にまとめなければならないという真面目すぎる心がけを捨てることが必要になります。
●不明確な状態を恐れない
 右脳思考を実践すると、まったく論理がとおらないような飛躍が多々発生するものです。発散していくに従い、全体像が見えなくなります。スッキリしません。アウトプットも出ていないように思えます。しかし、常に全てを厳密に説明できるようにしなければと思えば思うほど、思考の飛躍は生まれなくなります。混沌とした不明確な状態をもよしとすることが必要になります。
●違いを生み出せる人はデザイン思考を無意識にやっている
 左脳型の人がデザイン思考を学ぶことの特に大きな意義の1つは、人とは違う切り口を出すことができる強力な武器として、左脳右脳ハイブリッド思考を実践できることだと私は考えています。


■3.デザイン思考のスキルは、世の中の問題解決のためにある
 IDに通う学生のデザイナーの中には、一流のデザインファーム出身の優秀なデザイナーが何人かいました。彼らに共通するポイントは、自分のアイデアをプレゼンするときに、必ずといっていいほど「私が解決したい課題は……(the problem I would like to solve is)」という言葉から話しはじめるということです。
 並みのデザイナーは、つくることを仕事にしているので「今回僕がつくったのは……(What I worked this time is)」といいたくなるものですが、優秀なデザイナーは必ず、「課題解決」をデザイナーの仕事として捉えているのです。
 デザインは、それだけで世界を良いものに変えることができるような大きな変化をいきなり生み出すことは難しくても、日常の課題を確実に解決することで、世界を�ちょっと良いものにしつづける�ことなら可能です。
 ですから、デザイナーにとっての課題解決とは、ユニークな視点で課題を発見し、具体的に解決策をつくりだすことです。つまり言い換えれば、デザイン思考のスキルはあくまで世の中の課題を解決するために使われ、そのために自分が小さな課題を確実に解決していくためのものです。


■4.振れ幅大きく行き来するべき2つのモード
 よく「デザイン思考のステップ通りにやっても良い結果につながらないんだけれど、どうしたらいいのですか?」という相談を受けるのですが、デザイン思考のプロセスは、ステップではなく、何度も行き来を繰り返して質を上げていくものなので、同じガイドでも地図というよりは羅針盤に近いものです。
 その際に重要なのは、以下の2つのモードを振れ幅大きく行き来することで、課題や解決策を次第に具現化していくことです。

1 具体と抽象の振れ幅
 Aさんの日々の生活の物語を集めたり、アイデアの具体的な利用シーンや細部のこだわりを考える「具体」と、チームとして見つけた潜在ニーズの中から本当に大事なインサイトを決めたり、チームとして解決していくユーザー課題を再設定するという「抽象化」とを行き来すること
2 現実と未来の振れ幅
 ユーザーが今どのような生活をしているかを代表とした「現実の世界を知る」ことと、自分たちの内面に向き合いながらつくりたい世界を構想して「未来を形にすること」とを行き来すること


■5.デザイン思考プロセスに存在する4つのモード
・旅人(リサーチ)
まず、旅人のように非日常の場に訪れ、体全体を使って現場を感じ、好奇心を持ちながら普段自分が知らない世界に徹底的に浸ります。その非日常で感じた興奮を残しておくために、必死でメモを取ったり、写真におさめたりします。
・ジャーナリスト(分析)
旅から帰ってきたら取材後のジャーナリストのようにその旅の内容をメモや写真から振り返り、正しく伝えられる事実と自分なりに感じた解釈を左脳を使って分析し、腹に落として消化します。
・編集者(統合)
自分が旅で得た様々な事実や新たな切り口を刺激にしながら、ユーザーが生活の中で困っていることや価値観を、雑誌編集者のように切れ味鋭いキャッチコピーと、印象的な写真を使って1枚の絵で表現します。
・クラフトマン(プロトタイピング)
最後は、イメージした世界観の中で実在したらいいなと思える商品やサービスなどのアイデアを、クラフトマンのように手を動かしてカタチにして実現するというものです。工作好きな理系の人のイメージですが、DIY好きなお父さんや、創意工夫のある主婦のようなイメージでもあります。


【感想】

◆買ってから色々気が付くと言いますか、買う前にトンだ勘違いをしていたことが2点ほど。

まず、本書のタイトルは『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』ですし、アマゾンのリンクもそうなっているものの、装丁に大きく書かれた「世界のトップ・デザインスクールの創造的問題解決」が、本書のイメージとして非常に強くて。

実際、本書を自分のブログ内検索をするときにも、てっきりこちらがタイトルだと思って打ち込んでいたというw

同じく著者も、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄さんかとばかり思っていて、今般、この記事を書く際に初めて佐宗邦威さんの名前を知りました。

……よく大前先生が翻訳本を出す際、著者名より大きくお名前が載っていることがありますけど、日本人同士なのに「ガチ」で勘違いするとは(恥)。


◆そこで改めて、著者の佐宗さんの経歴について確認すると、東京大学法学部卒業後、P&Gに入社し、その後(株)ヒューマンバリューを経て、ソニー(株)デザインセンターにて全社の新規事業創出プログラムの立ち上げなどに携わった後、独立、とのこと。

そして、ソニーに入られる前に、イリノイ工科大学デザインスクール(ID)に進まれ、そこでデザイン思考について学ばれたそうです。

ちなみにそれ以前については、デザインについての素養はまったくなく、むしろ「デザイン的かつ創造的な思考が苦手」だったのだとか。

そんな「初心者」である佐宗さんが、ゼロから学んだデザインスクールの授業内容が紹介されているのが、本書ということになります。

実はこれって結構珍しいパターンで、今まで出ていた類書は、たいてい「授業で教える」側か、「実務でバリバリ問題解決している」側が書いたものでした。

そういう意味で本書は、デザインスクールへの「疑似入学」が味わえる作品だと言えるのではないか、と。


◆そこで、そうしたデザイン思考の「インフラ」とも呼べるものが、本書ではいくつか紹介されています。

まずは大量の情報を処理するためのテクニックの1つが「ビジュアルシンキング」。

美大出身でないデザイナー向けの「ビジュアルシンキング」の教本としては、この本が「大変な人気」なのだそうです。

描いて売り込め! 超ビジュアルシンキング
描いて売り込め! 超ビジュアルシンキング

参考記事:【オススメ】「超ビジュアルシンキング」ダン・ローム(2009年05月25日)

なんでも、「アメリカのデザインの業界では必読書になっている」そうですから、気になる方は上記記事をご確認を。

また、細かくなるので書きませんが、実際にデザインスクールで活用されている文房具等々も写真入りで紹介されているのも、リアルで良かったです。


◆一方で、類書であれば数多く収録されている、「デザイン思考で解決した実例」が少なめなのが、読む人によってはネックとなるかもしれません。

たとえばこの本は、定番の1冊ですが、事例はかなり豊富でした。

クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法
クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法

参考記事:【デザイン思考】『クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』デイヴィッド・ケリー,トム・ケリー(2017年01月25日)

また、こちらは邦書ですが、レビューをご覧いただくと分かるように、事例はワンサカ載っているという。

問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法
問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法

参考記事:【デザイン思考】『問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法』村田智明(2017年07月29日)

結局これらの本にあるように、「こういう問題に対して、デザイン思考はこのように解決できる」というお話を読みたい方だと、本書は物足りなく感じるのかも……。


◆ただそれは、書籍に「何を求めるか」の違いでもあるワケで。

たとえば本書の第3章では、『101デザインメソッド』で知られるIDの人気教授であるヴィジェイ・クーマー氏のクラスを再現。

101デザインメソッド ― 革新的な製品・サービスを生む「アイデアの道具箱」
101デザインメソッド ― 革新的な製品・サービスを生む「アイデアの道具箱」

初期リサーチから、分析、統合・課題の再定義等々を経て、プロトタイピングまでの一連の流れを詳しく解説しています。

……図や写真をご紹介できないのが残念ですが、ここは見どころの1つかと。

なるほど、彼らはこうやってスキルを身に着けていくのだな、と納得できること必至の1冊。


デザイン思考の「学び方」を知りたい方に!

21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由
21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由
chapter0 21世紀型教育の先進国アメリカ
chapter1 デザイナーから学ぶハイブリッド知的生産術
chapter2 作り手魂の学校
chapter3 創造的問題解決の羅針盤
chapter4 創造モードへのスイッチ
chapter5 デザインというビジネス・キャリア
chapter6 デザイン思考は幸せに生きるためのライフスキル


【関連記事】

【デザイン思考?】『超図解「デザイン思考」でゼロから1をつくり出す』中野明(2017年08月21日)

【デザイン思考】『問題解決に効く 「行為のデザイン」思考法』村田智明(2017年07月29日)

【デザイン思考】『クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法』デイヴィッド・ケリー,トム・ケリー(2017年01月25日)

【問題解決】「デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方」ティム・ブラウン(2010年04月29日)

【オススメ】「超ビジュアルシンキング」ダン・ローム(2009年05月25日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」は、まさに今日の作品にも関係するテーマ!?

デザインの次に来るもの
デザインの次に来るもの

デザイン思考の長所や弱点を押さえつつ、別のアプローチから商品やサービスを革新することができるのが、この本で解説する「意味のイノベーション」なのだそう。

中古がまだ普通に高く、送料を加味するとKindle版が1000円以上お得ですから、とりあえず買うだけ買っておくのも手かもしれません!?


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

この記事のカテゴリー:「デザイン・写真」へ

この記事のカテゴリー:「ビジネススキル」へ

「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
Posted by smoothfoxxx at 10:00
デザイン・写真このエントリーを含むはてなブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録│|BuzzurlにブックマークBuzzurlにブックマーク

スポンサーリンク