【11月12日 AFP】スペイン1部リーグ、レアル・マドリード(Real Madrid)のギャレス・ベイル(Gareth Bale)の負傷記事が掲載されるのは、残念ながら同国スポーツ紙でおなじみの光景になってしまった。マドリードのスポーツ日刊紙ASは「ベイルが再び故障」と報じ、1面で嘆いている。

 現在28歳のベイルは、約1年前にレアルと6年間の大型契約を結んで以降、わずか24試合にしか出場できていない。2016年11月に足首の手術をしたベイルは、そのけがが癒えると今度はふくらはぎを痛め、そして今回、太ももに問題が発生してまた1か月戦列を離れる見込みとなった。

 AS紙とライバル紙のマルカ(Marca)は、2013年に当時の最高額である1億70万ユーロ(約130億円)でイングランド・プレミアリーグのトッテナム・ホットスパー(Tottenham Hotspur)から加入して以来、ベイルがけがで73試合を欠場しているという数字を紹介。ベイルはレアルで通算159試合に出場しているが、高額の年俸を含めると、クラブは同選手の起用に毎試合106万ユーロ(約1億4000万円)を費やしている計算になるという。

 ベイルはレアルで成功を収められなかったわけではない。レアルでの通算4シーズンで、欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)制覇を3回経験し、計70得点を記録している。貴重な逆転ゴールを決めた2014年のチャンピオンズリーグ決勝のアトレティコ・マドリード(Atletico de Madrid)戦、重圧のかかるPKを成功させた2年後のアトレティコとの再戦、さらに鮮烈な印象を残した2014年のスペイン国王杯(13-14 Copa del Rey)決勝、FCバルセロナ(FC Barcelona)戦での独走からの決勝点など、ハイライトと言える場面もあった。

 それでも多くのレアルファンは、こうした散発的な活躍では支払った金額にまったく見合わないと考えている。昨季のチャンピオンズリーグ決勝ではコンディションが整わず、地元カーディフ(Cardiff)でわずか13分間のスポット出場にとどまった。

 1年以上にわたってベイルが離脱を繰り返す中で、チームではスペイン出身のイスコ(Isco Alarcon)やマルコ・アセンシオ(Marco Asensio)が結果を残してきた。それにもかかわらず、ベイルが復帰したときに二人が再び締め出されるようなことになれば、スタンドやベンチから大きな不満の声が上がりかねない。

 長らく聖域のような扱いだったベイル、カリム・ベンゼマ(Karim Benzema)、クリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)の通称「BBC」トリオも、今季はピッチで並び立つ姿を一度も見られていない。AS紙は「議論を挟む余地のないBBCの一員として、チームの階級構造に守られてきたベイルも重要な戦力ではなくなっている。イスコやアセンシオが好プレーを見せていることで、ベイルのチーム内での立場はますます危うくなった」と分析している。

 さらに代表チームでも、ベイルはウェールズ代表で2016年の欧州選手権(UEFA Euro 2016)を戦ったわずか15か月後、今度は1958年以来のW杯本大会出場を仲間たちが逃す瞬間を、スタンドから悔しい思いで見つめなければならなかった。

 レアルの忍耐が限界に近づく中で、ベイルには依然としてトッテナムで2回のPFA年間最優秀選手賞を受賞したプレミアリーグ復帰のうわさが根強く付きまとっている。マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)のジョゼ・モウリーニョ(Jose Mourinho)監督は今季開幕前、ベイルがレアルから放出された場合は「待っている」と公言した。

 しかし、スペインメディアがベイルを「現金化」しなかった場合のダメージを算出しているとはいえ、いかに資金力の豊富なユナイテッドでも、レアルが費やした1億ユーロを払ってまで、ここ1年ピッチへ出ることにさえ苦労してきた28歳の獲得を目指すかは疑問符が付く。(c)AFP/Kieran CANNING