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2009.12.08

うつ病を入院で治す 
専門病棟で2~3カ月 
通院の難治患者らに 

 うつ病になった人らに2~3カ月入院してもらい、専門病棟で休養、さまざまな療法を受けてもらう―。精神科の総合外来を持つ不知火病院 (福岡県大牟田市)は、通院や自宅療養が主流となっているうつ病の治療に入院を積極的に取り入れている。通常の治療では改善しない患者の、もうひとつの選択肢となっている。
 ▽自然から刺激
 福岡市の中心部から電車で約1時間。有明海に注ぐ川の河口付近に、同病院の「ストレスケアセンター・海の病棟」がある。
 1989年に開設され病床数は48、外出や面会が自由な全開放型の病棟だ。窓を多くして風や光を取り込みやすくし、雨音もよく響くように設計。自然からの刺激を受けやすくしてある。病室は2階にあり、ナースセンターを中心に4人部屋や2人部屋、個室が並ぶ。4人部屋に出入り口を三つ設けるなど、緊張感の軽減に配慮した。20091208honki1.jpg
 スタッフは医師、看護師、臨床心理士のほか、社会復帰などを支援する精神保健福祉士、非常勤のアロマセラピストや音楽療法士など計40人弱で構成する。
 ▽自責感、気兼ね
 入院の対象は、自殺しようとしたことがある人や、判断力が落ち、交通事故やガスの消し忘れなどの危険がある人。薬や精神療法を受けて1~2カ月以上たっても十分な効果が出なかったり、夫婦や家族関係に問題があったりするケースも入院が望ましいという。
 徳永雄一郎院長は「通院や自宅療養では、休職している姿を家族に見せたくないとの思いが生じ、自責感の拡大にもつながる。隣近所への気兼ねもあるし、共働きの場合は日中、孤独で不安が増すなど、治療環境の面で問題が懸念される」と話す。20091208honki2.jpg
 実家に帰省したとしても、長期になれば親に申し訳ないと自分を責め、親は対応に戸惑うことになりかねないという。
 入院治療は大きく3段階に分かれる。2週間~1カ月は、症状の回復に重点を置き、薬物療法や十分な休養に充てる。
 次にカウンセリングや、個人、集団で行う精神療法、家族を対象にした療法を始め、患者ごとにうつ病の原因と対策、職場での問題点を明らかにしていく。条件が整えば3カ月目ごろから復職支援のプログラムを開始。仕事を模擬的にやり、上司や同僚への対応を練習する。
 ▽半数「適応可能」
 開設以来、九州を中心に関東や関西からも計3千人以上の患者が平均で72日間入院した。
 男性は90%以上が勤労者、女性は勤労者が約40%、主婦が約30%で、職種は公務員や教諭、情報技術(IT)関連が目立つ。
 数値が7以下で「治った」と判定されるうつ病の国際的な評価尺度で治療結果を見ると、患者の入院時の平均は24・5だったが、退院時は6・4に低下。社会への適応を調べる尺度でも、退院時に約半数が「適応可能」に回復したという。20091208honki kao.jpg
 再入院は全体の20%強、入院中に自殺した人は6人。「入院した人の47%が死にたいとの思いを持ち、15%は自殺しようとした経験があることを考えると、著しく少ない」と、徳永院長。
 一方、休職者に復職支援プログラムを実施した割合は、2007年で32%。徳永院長は「うつ病の回復が必ずしも復職に直結せず、復職は難しいのが現状。症状回復と復職という2段階の治療が重要だ」と指摘している。(共同通信 谷本敏之)(2009/12/08)