>「もしかしたら大事な作品が買い叩かれてしまうかも……」
発想の根本からして違いますね。
買い叩かれてしまうかも――ではなくて、買い叩きに来ているんです。
かも? だとか、仮定形は必要ない。
オファーをいただいた多数のなかから一社を選ばせていただく、という行為は――。
隙あらば買い叩いて、作者側に損を押しつけ、出版社側が得をしよう、という相手のなかから、「買い叩くにしても、せめて、このくらいにしておこう」という「節度ある」買い叩きをしてくる信頼可能な相手を、ビジネスパートナーとして選ぶという行為なわけです。
デビューしたばかりの新人さんって、自分はシンデレラで、白馬に乗った王子様がエスコートしてくれる。――とか、思いこんでいるんですよね。なんでか。
そこが不幸のはじまりなので、「王子様なんていない」と思っておけば、現実相応になるわけです。
ぶっちゃけて言っちゃいますけど。
WEB小説が隆盛となってから出来たレーベルは、ほぼすべて確実に「濡れ手で粟で、うまいこと儲けて、ブームが終わるまえに勝ち抜けしよう」ぐらいの意図で設立された部門なわけです。
永続する商売として考えておらず、数年後に同じ商売をやってるつもりもないので、当然、短期的利益を最大限に上げるための最適解を取ります。
作家は、出版未経験のドシロウトで相場も知らんから、言いくるめて搾取しよう。
――ぐらいのことを考えていて、当然なわけです。
もちろん、作家を「育成」するつもりなんてないので、1シリーズだけの使い捨てが前提です。
うわぁ。新木。業界に喧嘩売ったー。(笑)
まあ、ちょっと露悪的に言ってみましたが。
要は即戦力の傭兵として起用されるわけです。故障したらポイ捨て。ドライな関係。
そんな中でも、たとえば印税率で搾取して○%とかにするのではなく、業界標準の○○%を出してくれる良心的なところがあります。
ちなみに○の中には、7とか8とかが入ります。○○には10が入ります。ぜんぜん伏せ字になってねえし。
まあ、ごくごく希に、作者と作品のことを第一に考えてくれる編集者と巡り会うこともあるかもしれませんが……。
そういう、いわば「頭のおかしい人」は、いないとは言いませんが、白いカラスぐらいの存在比なので……。
自分とは関わりのない現象だと思っておいたほうがいいっす。
あと、編集者個人と、レーベルとしての方針は別だということ。
編集者個人がいかに良くしてくれても、レーベルの方針が「実売印税かつ5%」だとか、搾取するのもたいがいにしとけよ、というところだったりすることも。
>「もしくはとても素晴らしい出版社さんの打診を逃してしまうかも……」
ここも発想の根本からして、認識の間違いが……。
だから、白馬に乗った王子様など、いない。
ここでいう「素晴らしい出版社さん」というのは、誰でも名前を知ってる大手のことだと思いますが。
上であげた話からすると、作家の現実として「素晴らしい相手」となるのは、「作家を食い物にする気が比較的少ないところ」となるわけです。ここ。あくまで「少ない」であって、「ゼロ」ではないことに注意ですね。
大手と組めば幸せになれるかというと、そうでもなくて――。
幸せになるためには、誠意があって信頼できるところと組まないとだめです。
まあ「素晴らしい」の定義が「大手」であっても、「誠意ある相手」であっても、どちらでも、選ぶ時の手法は変わりませんが。
オファーが来るのは、なろうの場合、日間、週間、月間、どこかのランキングの5位以内に入っているあいだです。
ぶっちゃけ、編集さん、そこしか見ていません。
日間の下の300位まで見るような暇がある人は、編集者をやれていません。
早いところは、日間に入った時点で、速攻オファーを投げてきます。
うちは大手だからオファー合戦で勝てるだろう、みたいな自信のあるところは、青田刈りは行わず、月間ぐらいから動きだします。
また大手すぎて、オファー出すにも会議の二つ三つを要してしまうところは、四半期や年間に入ってからオファー出してくる、なんていうこともありますが。
さすがにそんなケースでは、もう決まっちゃっています。
オファーを受けたとき「保留」にしておけばいいのですが……。
一度「受けて」しまうと、そのあとで、「ごめんやっぱなしで」とちゃぶ台返しして、ほかのところと組むことは、ビジネスの重大なルール違反となるので、普通、誰もやりません。
てゆうか。口約束でも契約ですので、立派な契約違反。民事法に抵触します。
WEB小説の販売で実績のある「大手」は、あとからオファーを出してくる傾向がありますので、月間のランキングから転がり落ちて、ポイントの上限が見えるまで待ってもらったほうが無難でしょう。
「大手」が本当に得かどうかについては、前にも書きましたが。「誠意ある相手」=「節度をもって食い物にしようとしてくる良心的な相手」を選ぶためにも、オファーの数は多い方がいいです。