SNSの“拡散力”で、作品の面白さが口コミで波及
石倉『Fate』シリーズは「Fate/stay night」を原作として広がっていて作品数も多いのですが、物語のコアとなるのは「聖杯戦争」です。簡単に説明すると、七人の魔術師がマスターとなって“英霊”(サーヴァント)を使役し、最後の1人になるまで戦います。そして、最後に残った者は“聖杯”を手にし、自らの願いを叶えることができるのです。
金沢今回、10月に公開された映画『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』は、原作「Fate/stay night」の第三のルートを描く物語となっていまして、こちらも聖杯を巡る戦いを描いています。
石倉『FGO』は、今までの『Fate』シリーズのサーヴァントたちに加え、新しいサーヴァントが登場するスマートフォン向けゲームです。
金沢発表から3年越しで公開に至った経緯があり、それをファンの皆さんが待ち望んでいてくれたこと、そして作品のクオリティの高さに尽きると思います。加えて『Fate』の世界観を元にしたスマートフォン向けゲーム『FGO』と映画という垣根を越えた形でのキャンペーンを実施した点も助力になったかと思います。映画館に行くと映画の中に登場するキャラクターのアイテムがゲームの中で手に入るなど、実際に映画館に足を運んでもらう“動機付け”をプラスしたことで、映画の盛り上げに繋がったと思います。
――『Fate』の魅力である重厚なストーリーと、それを忠実に再現する映像美。それによって何度も映画へ足を運ぶコアユーザーも多いと聞いています。さらに、その評判が口コミで広まっています。
石倉『FGO』の公式Twitterのフォロワーは100万人以上います。そうしたファンの方たちの拡散力によって、口コミで広がったことも一助になっていると思います。
NS上でツッコミ「マーリンって誰だよ」 Twitterトレンド1位に君臨した理由とは?
石倉「マーリン」は『FGO』に登場する人気サーヴァントの名前です。『FGO』の1000万ダウンロードを記念し、事前告知なしで9月20日にピックアップ召喚に登場させたところ、たまたまそれが安室さんの引退日に重なってしまいました。
――この『FGO』の拡散力の理由は?
石倉『FGO』は、まずシナリオに対する面白さがあり、その中で新しく登場するサーヴァントにそれぞれ魅力があります。『Fate』シリーズは世界観が広いので、過去作品や『FGO』のストーリーの中で登場していた魅力的なサーヴァントが登場したりするとファンの皆さんが盛り上がる。マーリンも同様で「おー、やっとマーリンが来た!」ということで、これほどの拡散になったのだと思います。
――マーリンの件以外で、『FGO』の拡散力を示すエピソードは?
石倉京都国際マンガ・アニメフェア 2017(通称:京まふ 2017)で、1000人位の規模のステージで、1000万ダウンロード突破キャンペーンとして“好きな☆4サーヴァントが貰える”という情報を発表しました。10万リツイートが目標だったところ、最終的に32万リツイートまで伸びました。
金沢映画や関連作品におけるメディアミックス展開もですが、ユーザーの方にSNS上でのコミュニケーションを含めて楽しんでもらえるような企画も考えています。『FGOのある日常』というものを目指していて、11月1日からは全国にお店があるコンビニのローソンさんで『FGO』のキャンペーンを開始したりと、より日々の生活と密着した展開に取り組んでいます。
――“日々の生活と密着”とのことですが、日本人にとってスマートフォンで遊ぶゲームはいまや欠かせない娯楽の1つです。多種多様な会社が新作を出して競いあっているわけですが、8月に『FGO』が全カテゴリーのアプリの月間売り上げランキングで世界1位&日本1位を獲得しました。これは凄いことです。
石倉これについては、どうやらそういう発表があったらしいぞと聞いています。ただ、『FGO』が全世界で展開している訳ではなく、日本のほかに北米と中国語圏だけで展開しているだけですので、それで世界1位だったとすると、日本をはじめとしたファンの皆さまに深くご支持いただいているのだとあらためて認識しました。
時代に逆行!? “100万字”を超える骨太ストーリーが人気の秘訣
石倉実は20代が一番多いんです。『Fate』シリーズ自体は2004年から人気を博しているため、FGOの展開当初、世代的に言えば30代後半から40代がメインのお客様なのかなと思っていたのですが、実際に調べてみると、20代と30代前半がコア層でした。
――今の若い子の間ではライトノベも人気です。
金沢『Fate』シリーズのライトノベル人気も高いです。そうしたファンが『FGO』を親しんでくれていることもあると思います。
石倉“今の若い子達は本を読まない”という声も聴きますが、僕はそうは思いません。ここ最近はずっとライトノベルの人気が高いですし、『FGO』というストーリーを楽しむため、文字を読むことがメインのスマートフォン向けゲームが人気という時点で、日本の若者たちが文字を読むことから離れてしまっていると決めつけるのは、現実に即していないと思います。
――石倉さんが言う通り、私も『FGO』をプレイして感じたのが、とにかく活字量が多い! いわゆる“ソシャゲ”が流行ったのは、シンプルで気軽にプレイできる点にあったと思います。でも、『FGO』は芯となるストーリーに厚みがあるため、他のスマートフォンのゲームとは一線を画しています。
金沢『FGO』は配信当初からストーリーが100万字以上ということを告知していましたが、そこから2年以上経つので、本編シナリオで第1.5部、さらにイベントシナリオと更に増えています。
――それは凄いボリュームです。でも、プレイされてる方はそれを一生懸命読んでいるわけで、そう考えると、若者の活字離れなんて気軽に言えませんね。
石倉:紙媒体が売れなくなったから、現代の若者は文章を読まないと決めつけるのは早計だと感じます。ライトノベル人気や、ネットへの接続時間の長さを考えると、若者が文字と接する時間はむしろ増えているんじゃないでしょうか。やっぱり、日本人はものを読むのも書くのも好きなんですよね。 “活字文化”は今も根強く若者達の中にあるなというのが実感です。そうでなければ、『FGO』はもとより『Fate』シリーズ全体として、これだけのシナリオ量がある作品群が支持されていないと思うんですよね。
金沢『Fate』シリーズは作品数も多く、世界観が広いのが特徴です。また、ゲームだけでなく映像や書籍などでも展開されているので、どなたでも好きな『Fate』ストーリーに出会えると思います。シリーズの各作品どこから入っても楽しめる内容になっていますので、ぜひお好きな作品から「Fate」ワールドに触れてみていただけると嬉しいです。
石倉『Fate』ワールドの全てが集結したものが『FGO』だと思います。今後もゲームの中で新しいストーリーが追加されていきますので、ぜひご期待いただければと思います。