被害者たちの「死にたい」という深刻なつぶやきが、信頼できる相談者につながっていればと、今更ながら悔やまれてならない。
神奈川県座間市のアパートの一室から9人の遺体が見つかった事件で、犠牲となった全員の身元が判明した。
事件に巻き込まれたのは15歳から26歳までの若い男女。そのうち3人は女子高生、1人は女子大生だった。
無事に帰ってきてほしいという家族や友人らの祈りは届かなかった。
死体遺棄容疑で逮捕された27歳の男は、会員制交流サイト(SNS)のツイッターで「死にたい」と投稿した女性たちに、「一緒に死のう」と返信し、連絡を取るようになったという。
「弱い心につけ込めば出会いやすい」との趣旨の供述をしているというから、自殺願望をほのめかす心の隙をついて、言葉巧みに自宅に誘い込んだのだろう。
8月下旬から1週間に1人のペースで手にかけた凶行である。犯罪史上まれにみる猟奇的な連続殺人事件だ。
遺体の損壊などあまりの残酷さに、伝えられるニュースから目を背けたくなるが、「実際に死にたいと思っている人はいなかった」とも供述しているという。
今回の事件では、顔や名前を知らなくても簡単に交流できるSNSの危うさが改めて浮き彫りになった。
殺害に至る動機や経緯、被害者とのやりとりなど、事件の全容解明を急いでもらいたい。
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ツイッターに限らずSNSには一緒に自殺する人を募ったり、自殺の方法を尋ねる書き込みがあふれている。
2005年に起こった自殺サイト連続殺人事件では、「一緒に練炭自殺を」と誘い出された中学生ら3人が犠牲になった。その後、ネット上の自殺サイトは、警察や事業者によって削除などの対策が取られたが、代わってSNSの利用が増えだした。
他人には決して話せない「死」について語り合うことで信頼感ができたと錯覚するのだろうか。だが「死にたい」と投稿する心のうちには、「生きたい」「助けてほしい」という気持ちも含まれていると専門家は分析する。
座間の男はツイッターで連絡を取った後、個別に接触できる無料通信アプリLINE(ライン)などでやりとりを重ねていたようだ。一対一の会話になると外部から気付きにくく、介入はさらに難しくなる。
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事件を受けツイッター社は、自殺助長の禁止を明文化する対策を取った。
政府も自殺関連の書き込み削除や、自殺願望を発信する若者の心のケアなどの改善策をまとめることを決めた。
ネットを活用した相談支援として、東京のNPO法人が「死にたい」などの言葉を検索した人を、無料の相談サイトに誘導する活動を続けている。
生きづらさを抱えた若い世代はネットに居場所を求める傾向がある。
若者のニーズに合わせた相談支援体制の強化が必要だ。