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有名ミニシアター、JASRAC値上げ案に疑問も 「ヨーロッパとは事情が違う」

シアター・イメージフォーラムのディレクターに聞いた

映画音楽の上映使用料を引き上げ、従来支払ってきた配給会社などに代わって、劇場から徴収する方針を決めた日本音楽著作権協会(JASRAC)。発表を受け、映画界には波紋が広がっている。現場の負担はどうなるのか。BuzzFeed Newsは、東京・渋谷の映画館「シアター・イメージフォーラム」に話を聞いた。

興行収入の1〜2%を目指す

JASRACは外国映画の音楽について、従来は映画1本あたり定額18万円(一部アート系作品など除く)だった上映使用料を段階的に興行収入の1〜2%まで引き上げ、劇場から徴収することを目指す。

将来的には日本映画にも同様の仕組みを導入したい考えで、使用料規定や契約を見直すべく、映画館の全国組織である「全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)」と協議を進めている。

全興連は「交渉中の話であり、コメントを控えたい」としており、傘下の大手シネマコンプレックスも取材に応じていない。

一方、JASRACの江見浩一複製部長は「単館の映画館が厳しいということは、我々もよく承知をしております」「『著作権料の負担で閉めなきゃいけなくなりました』ということは、我々も権利者もまったく望んでいない」と話している。

渋谷の個性派ミニシアター

そこでBuzzFeed Newsは、特色あるミニシアターとして映画ファンの支持を集める、イメージフォーラムに取材を申し込んだ。

イメージフォーラムの前身は、1971年に発足した「アンダーグラウンド・センター」。個人の映像作家による実験的な作品の上映・配給を手がける非営利組織として出発した。

1977年にはイメージフォーラムと改称。四谷を拠点に上映活動を展開していたが、2000年に渋谷へ移転、劇場をオープンした。

アート系の映画や作家性の強い作品を上映しており、個性的なラインナップで知られる。その多くは外国映画が占めるという。

インタビューに応えてくれたのは、ディレクターの山下宏洋さん。日ごろの上映作品の選定や映画祭「イメージフォーラム・フェスティバル」のプログラム編成などを担当している。

欧州では公的支援も

――JASRACの発表をどのように受け止めましたか。

音楽の作曲家の方々が問題がある認識されて声をあげているのであれば、劇場・映画館としても耳を傾けなければいけませんし、話し合う必要があると思います。

ただ、ヨーロッパ各国が1〜2%だから、日本もそうすべきだ、というのは違うのではないでしょうか。

ヨーロッパと日本では映画をめぐる文化・経済の環境が異なります。欧州は映画を「文化財」ととらえ、保護しようとする意識が強い。

文化の多様性を重視する土壌が根付いており、映画配給や上映に対する公的支援もあります。

一方、日本では映画製作への支援はあっても、劇場への助成というのは聞いたことがありません。

背景事情が異なるところに、一律1〜2%という数字を当てはめるのが妥当かどうか、考える必要があります。

ギリギリで運営、負担重く

――JASRACは段階的に上映使用料を引き上げていくことを主張していますが、仮に1〜2%となった場合、どんな影響が予想されますか。

日本のアート映画はメジャー系の映画に比べて、配給・上映にかかるコストが非常に高い。商業的には難しくても価値ある映画を、ギリギリのところで上映しています。

1〜2%とはいえ、カツカツでやっているなかでは大きな経費になってくるでしょうね。シネコンはポップコーンやコーラ、ビールなどの収入もありますが、ウチは食べ物禁止なので、そこで稼ぐこともできません。

それでも東京都内は、ありがたいことにミニシアターに来てくださるお客さまが一定数います。地方は特に大変でしょうし、場所によっては耐えられないところも出てくるかもしれません。

また、一部ではチケット代が上がるんじゃないか、という声も出ています。

映画文化の多様性を

――決して映画音楽のクリエイターを軽視しているわけではなくて。

映画と音楽は不可分です。サイレント映画の時代にも、劇場のオーケストラピットで音楽が演奏されていました。

ちょうどいま、イメージフォーラムで上映している映画「すばらしき映画音楽たち」(11月17日まで)にも出てくる話なのですが、「ジョーズ」の「デーデン♪」という音楽を無くしたら、途端に緊張感がなくなってしまう。

ジョン・ウィリアムズが作曲した「スター・ウォーズ」のテーマも、バッハやベートーベンと同じぐらい、誰もが知ってますよね。

素晴らしい音楽があるからこそ、いい映画になるという面はあると思います。

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映画『すばらしき映画音楽たち』予告編

――JASRACの発表を受け、今後ミニシアターとしてどう動いていきますか。

ほかの映画館とも情報交換しながら、ミニシアター系、アート系映画館の立場や存在意義を訴えていけたら。

つくる側、配給・上映する側、見る側がいて映画がある。劇場だけでどうこうできる話ではありません。

同じ映画ばかりしか見られないというのは、文化的にすごく貧困。多様な作品を上映できる環境を守ることが、映画文化や社会全体にとっての価値につながるのではないでしょうか。


Ryosuke Kambaに連絡する メールアドレス:ryosuke.kamba@buzzfeed.com.

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