懐かしい あの女子十二楽坊が9年ぶりに戻ってくる
伝統楽器を操る12人の中国美人楽団「女子十二楽坊」が、11月27日から東京、千葉の3カ所で公演する。
単独で日本の舞台に立つのは9年ぶり。2003年に出したCDを、日本だけで200万枚近くも売った美女軍団だ。懐かしい、という読者も多いのでは。
2003年に大人気
女子十二楽坊は、中国の古典楽器を演奏する女性演奏家集団だ。歌手ではない。2001年に中国で結成され、CDデビュー。
日本にはCD「女子十二楽坊~Beautiful Energy~」で03年に進出。これが売れた。実に売れた。集計会社オリコン(東京都港区)による03年の年間順位(アルバムCD)をひもとけば、6位(集計時点枚数116万枚)に入っている。
ちなみに、この年の一番はケミストリー「Second to None」(同200万枚)。次が浜崎あゆみさん「RAINBOW」(同185万枚)。そのほか女子十二楽坊の上にいたのは、B’z、桑田佳祐さん、BoAさん。平井堅さんや中島美嘉さんの作品は「女子十二楽坊」の後塵(こうじん)を拝した。最終的に166万枚を数えた(オリコン集計)。
珍事も起きた。女子十二楽坊が演奏しているのを見て、弦楽器の二胡(にこ)を土産で持ち帰る観光客が増加。が、輸出入規制があるニシキヘビの皮が使われている。必要な手続きをしていない二胡が、関西空港だけで50件も押収された。
音楽評論家の伊藤強さん(1935~2016年)は当時、産経新聞で「日本の芸能界は、日本だけで成立するのではなく、広くアジア全域で考え、展開していくべきだろう」と指摘した。女子十二楽坊は、大陸からの旋風だった。
楽屋を訪ねた女性
風は、しかし、去った。
「最初のアルバムは約200万枚売れましたが、確か…2作目は20万枚、3作目は2万枚…という感じで下がっていきました」
当時の関係者が振り返る。国内のCD売り上げ枚数自体が減り始めるのと軌を一にしているので、一概に枚数の推移で人気の盛衰は語れない。実際、2作目「輝煌 ~Shining Energy~」は、前作に続きオリコンチャートで首位を守った。
が、日本でCD制作などの窓口だった会社が07年に自己破産するなどして、08年の公演を最後に日本での活動は収束を余儀なくされた。
ただ、楽団は中国を本拠地に活動を続けた。カナダや北米にも足を延ばしていた。リーダーで琵琶を担当する石娟(シー・ジュエン)さん、同じく琵琶の仲宝(チョン・バオ)さん、竹笛の廖彬曲(リャオ・ビンチュイ)さんをのぞくメンバーは去ったが、若い演奏家が入ってきた。
楽団の創設者でプロデューサーの王暁京(ワン・シァオジン)さんが15年に亡くなると、リーダーの石さんが「演奏家として続けていくために」と16年1月、北京で会社を興してマネジメントも兼ねるようになった。
そんななか、実は16年9月に東京、大阪、名古屋で演奏を行っていた。民謡歌手、尺八奏者らとわけた舞台で、かつ企業による貸し切りという特殊な催しだった。
このときの東京公演の楽屋を1人の女性が訪ねた。鄭宇(てい・う)さん。日本に帰化した中国出身の揚琴(ようきん)奏者だ。揚琴は鍵盤楽器の原型のような楽器で、張った弦をばちでたたいて演奏する。
中国で揚琴奏者として活動していた鄭さんだったが、歌手、山口百恵さんのドラマに夢中になるなどの日本好きが高じて、1990年に語学留学のため、1年のつもりで来日した。
「ところが1年じゃ上達しなかった。もっとしゃべれるようになりたい」と滞在を延ばした。アパートの大家さんが教育者で、千葉大大学院を紹介してくれ、音楽教育を学ぶことになった。現在は、「中国文化から学ぶ中国語」などをテーマに放送大学で教鞭を執っている。揚琴奏者として演奏活動も行っている。
さて、楽屋に石さんを訪ねた鄭さんは、女子十二楽坊の日本でのマネジメントを担当したいと申し出た。
日中国交正常化45年
実は在日中国大使館が、鄭さんに打診していた。
「日中国交正常化45年をきっかけに再び彼女たちを日本で紹介したら、日本の昔のファンは喜ぶのではないか。あなたの会社が女子十二楽坊の日本の窓口にならないか」
鄭さんは、教育者で揚琴奏者でかつ日中の音楽会や文化交流イベント等の企画会社を運営していた。
03年の人気ぶりを目の当たりにしていた鄭さんだが、生演奏は聴いたことがなかった。この貸し切り公演をのぞいて、「同じ音楽家として、とてもすばらしい演奏だった」。終演後、鄭さんは楽屋に駆け込んだ。石さんに時間がないというので、スマートフォンのアプリケーションの連絡先を交換して別れたが、年が明けてことし1月に連絡がきた。
「03、04年の日本での成功はたいへんよい思い出です。自分が楽団の責任者になり、もう一度日本のファンの前で演奏したいという思いを強くもっていました」
石さんは、日本の窓口を鄭さんに託した。2月に正式契約を交わし、9年ぶりの単独公演に向けて動き始めた。
「03年のNHK紅白歌合戦出場はとても光栄でした。日本のファンに恩を返したい。日本に戻りたかった」と石さんは鄭さんに話した。
鄭さんは「今回をきっかけに彼女たちに日本に戻ってきてもらい、2020年東京オリンピック・パラリンピックの際には演奏を通じた国際文化交流をするのが私の目標であり、願いです」と話している。(文化部 石井健)
女子十二楽坊 グループ名の「十二」は「紅楼夢(こうろうむ)」という中国の古典小説に出てくる金陵十二釵(12人の美女)にあやかった。構成人員のことではないが、今回も12人で来日する。ほかに予備軍ともいうべき若手12人も在籍しており、楽団としては総勢24人。2003年にヒットした曲は「自由」「奇跡」。「自由」は紅白歌合戦でも演奏した。
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「日中国交正常化45周年 女子十二楽坊 日本公演2017」は、次の3公演。
・11月27日(月)午後6時半開演 東京・新宿文化センター大ホール
・11月28日(火)午後6時半開演 東京・ティアラこうとう大ホール
・12月2日(土)午後5時半開演 千葉県文化会館大ホール
チケットはいずれも全席指定7千8百円(税込み)。セブン-イレブン、ローソンの店舗で購入可。
なお、20人以上の団体客は特別価格に。代表者が主催の華宇創意株式会社にメールで申し込みを。メールアドレスはmk@kusi.co.jp。20日午後5時まで受け付け。