神奈川県座間市のアパートで9人の遺体が見つかった事件で、警視庁が被害者全員の身元を発表して一夜明けた10日、親族らは悲しみに沈んだ。最年少の被害者、群馬県邑楽町(おうらまち)の高校1年石原紅葉(くれは)さん(15)宅には「悲しみに包まれています」と紙が張られ、家は静まりかえっていた。死体遺棄容疑で逮捕された無職白石隆浩容疑者(27)は「1人目からためらいはなかった」と供述しているという。

 石原さんの自宅の張り紙には、遺族の痛切な思いが記されていた。「この度、娘の身元が判明しました。家族一同深い悲しみに包まれており、気持ちの整理がつくまで当面は一切の取材はお受けできません」。そんな中でも、学校や友人、関係者などへの配慮をにじませ、取材陣に対して理解を求める内容がつづられていた。

 学校関係者らも、ショックを隠しきれない。石原さんが通っていた高校の校長は「こうした結果になってしまい、言葉が出ない。未来ある子の命を奪った犯人に、強い憤りを感じている」と語気を強めた。

 石原さんは、8月28日午後7時20分ごろ、神奈川県藤沢市にある小田急線片瀬江ノ島駅の改札を出たのを最後に、行方不明になっていた。その日は2学期の始業式だったが、午前8時30分ごろに石原さん本人から「体調不良なので、今日は欠席します」と学校に連絡があった。両親もそれを把握していたという。

 芸術科の美術コースで学んでいた石原さんは、美術部で活動していた。1学期の欠席はなし。夏休み期間中の登校日も休まず、部活もいつも通り参加していた。校長は「家でも両親に『高校が好きだ』と話していたらしい。変わった様子もなく、どうして突然いなくなったのか分からない」と困惑した表情を浮かべた。学校は、同級生などへの聞き取りも行ったが、自殺をほのめかすような言動は全くなかったという。

 石原さんは、中学2年時には、群馬県館林市の美術館で、2日間の職場体験をしていた。当時、石原さんらの指導を担当した職員は「『美術が好きだ』と言っていたのを覚えている。行方不明になったことは聞いていたが…。ショックです」と肩を落とした。

 職員からの印象は「しっかりあいさつをする誠実な生徒」。受け付け業務や来館者の案内などを、真面目にこなしていたという。石原さんが通っていた中学の教頭も「職員室に入る時、元気に『失礼します』と言っていたのが印象に残っている。ご両親の気持ちを考えると、心が痛む」と話した。【太田皐介】